クロネコの「ご立腹」

2004-09-30 16:13:44 | MBAの意見
cbfa66e8.jpgヤマト運輸と郵政公社が法廷で争うことになった。宅配便ビジネスを巡って、独禁法の不当廉売(安売)行為(第19条)にあたるとしてクロネコがゆうパックを訴えたものだ(第24条差止請求)。郵政民営化内閣誕生の日に提訴するとは技巧的だ。

手続的なことを少しだけ解説すると、普通はヤマトが公正取引委員会(公取)に「郵政公社の行為は不当廉売だ!」と報告して、次に公取は調査を開始し、違法行為と認定すると郵政公社に勧告を出すことになる。というのが一般的である。公取も裁判所と同じように再審制度があり、不服ならさらに争う。しかし、ヤマトは公取ではなく裁判所に持ち込んだ上、独禁法違反の根拠事実を独自に調査して提出した。実は、この場合、裁判所から公取に対して事実関係の調査が命じられることになるはずだ(独禁法83条-2)。公取が調査する点は同じだ。最初に公取へ行かなかった理由はわからないが、推測すると、公取の場合、訴えた側(弱者)の保護のため、訴えた側は非公開になる。訴えたことを自ら発表すると、公取の心証を悪くするということが言われる(なにしろ、急激に役人を増やした組織なので、色々のタイプの人がいる)。もちろんヤマトは世間に隠す必要はまったくないので、より公開性の高い方法を選んだのだろう。さらに念入りに独自の調査をしているのだから。

もともとヤマトの拡大の歴史は小倉昌男氏による「権力との闘争」的なところがあり、大荷主、三越から解約された後、宅急便事業を興すため、かたや国鉄、日通といった事業者との競争、かたや全国ネット展開のため事業免許取得のため運輸省との交渉といった「競争大好き型企業」だからである。かつて小倉氏の講演を聴いた時には「運輸省からの天下りを断り続けて、だいぶ苦労した」と言われていた。

さて、次に訴えの内容であるが、これが問題である。
1.日本郵政公社というのは訴えられるべき資格があるのか。ということがある。
  そもそも「事業者」という分類に属するのか。まだ民営化されていないのであ
  る。逆説的だが、経済的合理性で活動しなくても構わないという可能性がある。
2.独占的な郵便事業での利益を宅配便ビジネスにつぎこんで廉売(安売)してい
  る。と主張しているが、もともと、どんぶり勘定の公社でコストを認定するの
  は難しい。また廉売(安売)行為は消費者にはプラスにはたらくため、なかな
  か違法行為とは認定されない。違反ラインはコスト割れラインと認定されるが、
  直接的コストなのか、本社費や管理コスト、建物の費用など間接費も含んだも
  のなのかは認定が難しい。
3.固定資産税のかからない土地をローソンに安く貸した見返りに宅配便と郵便集
  荷業務でローソンと提携したという点は、「郵政公社が事業をすること自体が
  違法だ」ということに近く、公取も裁判所も頭を痛めることになる。

以前たまたま六本木で、「独禁法破り専門の弁護士」とカウンターで並んで飲んだことがある。公取の人脈やら、調査に際しての注意事項やらしゃべりまくって、店中が盛り上がってしまった。これも流行のビジネスモデルだ。
郵政民営化については、大きく郵便部門(郵便事業と宅配便事業)と金融部門(銀行事業と保険事業)に分類されるのだろう。郵便部門は欧州各国でも民営化の後、カルロスゴーンのような業務改革の鬼があらわれて、再生している。職員の大部分はこの郵便事業に属しているので、少し痛い目にあうかもしれない。しかし、国家的に考えると最大の問題は金融部門だ。

金融部門は問題だ。郵便貯金残高は180兆円といわれ、三菱FGの3倍弱。大きさはともかく不良債権とかないのだろうか心配だ。民営化したら破綻したというのでは話にならない。もっとも公共事業やら国債やら第三セクターとかに融資しているのでいわゆる「不良債権」にはあたらないだろう。しかし、「土建」融資はだめと今さらいっても始まらないし、民間企業へ融資しなさいといっても、そのノウハウもないし、より危険だ。キチンとやるなら、解体細分化して、地銀やメガバンクに再分配すべきかもしれないが、簡単にはいかない。
つまり、「完成図が見えない」というのが郵政民営化の金融部門の問題であり、国民の不安なのである。

もともと道路公団のように、目に見える資産を対象とした民営化でもレトリックに逃げ、ただの公団分割をもって民営化と言い換えたくらいだから、より目に見えない銀行機能(さらに融資部門)の行方は注視しなければ、とんでもないことになる。まあ竹中氏は専門家なので、ぶざまな大破綻になることはないとは信じているが・・・

最後に、あまり報道されていないが、道路公団民営化の中心だった「道路関係四公団民営化推進委員会」と郵政民営化の中心である「内閣官房郵政民営化準備室」は、港区の同じビルの中にある。いささか暗示的。

コストカッターの作るクルマは?

2004-09-29 16:31:44 | MBAの意見
6829f564.jpg(冒頭注:本ブログには新製品に対する感想が書かれていますが、あくまでも私見であり、販売を促進したり阻害しようという意図はありません。「ブログによる風聞の流布の容疑者第1号」になるのは困るので、一応各種NET掲示版の評判をのぞくと、もっと過激な表現が横行しているのでこの程度では営業に影響はないと考えます。ただし、当面、個人的にクルマを購入することはないのでサメタ表現になっています。)

日産が6車種を発売した。このうち気になるのがMURANOだ。3500CCのSUVで300-400万円位。実は、1年半ほど前に、とある理由でこっそり実車を見ていた(マル秘扱)。すでに完成した右ハンドル車を見て、「日本ではやめたら・・」という感想であった。最後に値段を聞いてもっと驚いたのだ。米国での販売後1年位過ぎても日本では発売されないので、やはりと思っていたら、忘れた頃にやってきた。おおかたの予想は、ハリヤー(トヨタ)のシェアを少し奪うだけでそのうち・・・という声が大きい。どうも米国向けのように見える。

フロントは日産的であるが、少しプラスティックの臭いがする。また全体に窓の縦方向が短く感じ、特に後部座席の窓は後ろ側に釣り上がっていて、朝青龍関の目尻のようだ。私は、一見して「装甲車」をイメージしてしまった。銀座通りではなくイラクの砂漠の方が似合っているような感じを受けた。イタリアのムラーノ島にヴェネツィアグラスの買出しに行った人物が撮影してきた平和な島の写真とは共通性がない。

外観は、きわめて大きく感じるが、乗り込むと「空間性による快感」ではなく「密閉性による快感」を感じるようになっている。小さな窓にスモークガラス。シートに座るとなにやらネットカフェでの安らぎに共通した安堵感がある。3500CCでは燃費は今一だろうが2500CCも日本では売っている。ただし、2500CCを買う場合は試乗が必要だろう。この手のクルマは最初の1年で顧客数が尽きてしまうこともあるのだが、売れなければ作らなければいいだけだろう。米国では月5,000台位だそうなので日本では年間30,000台位が人気の分岐点だろう(それでも1,000億円。自動車産業は巨大だ。)。

やや批判げに書いているが、別に北米では普通のクルマである。ゴーン氏自体が北米向きなのには理由がある。1999年のルノーによる日産への出資の最大の狙いは、日本市場でなく世界市場だったからだ。2003年の販売台数を見ても、ルノーの販売台数240万台のうち210万台は欧州内で、特に米国は0だ。一方日産は300万台のうち、日本で77万台、北米で80万台、欧州で49万台・・・と世界中で数字を積上げている。日産の世界シェアは5.2%、ルノーは4.1%でも内容はまったく違う。そういう意味で、トヨタ・ホンダという強豪が抑えている日本市場より北米市場の方で攻撃的な戦略を選ぶのは必然なのかもしれない。

経営者の質という論があって、先日の産業再生機構の講演会でも紹介されていたが、A.企業の戦略的転換点で方向を変えるタイプ、B.事業成長期に順調に業容拡大をできるタイプ、C.成熟期に安定運航するタイプと経営者の素質を3タイプに分けて考えると、ゴーン氏はコストカッターであり、Aのタイプとしては世界屈指の腕前を披露したわけだ。が、これからBのタイプで魅力的なクルマで世界シェアを伸ばしていけるのかどうかは、未知数である。そして、多くの経営者は彼の腕前に強い関心を持っているのだ。
先月、所用があり自宅近くの日産店に寄ったのだが、展示してあったマーチ、キューブというコストカット車に座ってみた。かなり以前、初代マーチに乗っていたので、違いを感じて見たかったのだ。較べてみると、外観はずいぶん立派になったなあと思うのだが、内装はずいぶんシンプルになったと感じた。何しろセンターコンソールがない。シートの横幅は広くなったのだろう。クルマの種類は無数にあるのだからセンターコンソールにこだわる人は別の車に乗ればいいのだろう。

このディーラーは同一ショールーム内でルノーメガーヌを展示してあったので、こちらの話も聞いてみる。欧州ではメガーヌは非常に好まれているが、日本ではルノー好きでないと買わないのだろうと思う。クルマの色調は最高だが、仕上げのところで質感の感性がちょっと違う。日本は道路状況やガソリン価格などの外的要素は欧州的だが、マインドはアメリカ的な部分も多い(贅沢指向とでもいうのかな)。たぶん中国も日本的なのだろう。こうして、なかなかクルマつくりも世界同一基準にはいかないわけだ。欧州を知り、日本を知り、北米進出を狙うゴーン氏は2005年からはルノーに戻る。そこから先の日産-ルノー-ゴーン氏-北米市場の関係がどうなるかも興味がある。

案外、保守的?な野球ファン

2004-09-28 16:34:39 | スポーツ

7a64c145.jpgグラウンド外でのプロ野球については、しばらく行く末を熟考しようと考えていたのだが、有名ブロガー大西宏さまの「大西宏のマーケティング・エッセンス」で拙9月23日ブログを紹介していただいたこともあり、現時点での諸要素をランダムにまとめてみたい。だからきょうのブログには結論はない。

「ライブドア社」と「楽天社」の抗争
ライブドア社は12球団にこだわらず、3年後の黒字をめざすといっていた。おそらく「弱いチーム」というのを売りに考えていた。しかし楽天社は12球団にこだわり、大物監督(原、中畑、星野・・)を起用としている。いわばパリーグのジャイアンツ構想。13球団以上は収入減とみている。しかし、楽天にしても参入するまで猫をかぶっているのかもしれない。楽天は、本音では東京ドームで裏巨人になりたいのではないか。両者ともネット配信など考えているのかもしれない。(たぶん間違い。テレビやネットという媒体の種類が問題なのではなく、野球の質が問題なのである)

「既存11社」
仲間うちの論理に近い会社を選びたいが、本音では10球団にしたほうが1社あたりの収入が多いと思っている。(たぶん間違い)赤字経営だと言いながら、身売りしようとなると、法外な価格(200億円とか)を言い出す。

「選手会」
本質的には、「野球の未来」ではなく、「野球選手の現在」が中心課題だったが、12球団になるのがもっとも好ましいと思っている(現状維持型)

「番外」
都市対抗の常連チームは、プロ野球の椅子がないためガマンしてきたが、定数の弾力性はプロ参入の絶好のチャンスと思っているが、何しろ13球団以上になるのか12球団で終わりになるのか見極めがつけられない。

「ファン」
すっかり白けてしまった。わずかに野球ファンの方がサッカーファンより保守的のようである。

「大阪ドーム」
すでに、追加的赤字が決定的

「原・中畑氏」
原氏:特別功労者として読売グループ社員。楽天監督に出向?。中畑氏:有能と噂されていたが五輪監督に失敗。

「マスコミ」
世論に迎合し、しょっちゅう旗色を変えている。信用できない。昨年、小泉内閣が総裁選で再選があぶなそうな時期があったのだが、その際「抵抗勢力」と言う表現をやめて「批判勢力」と言い換えていた。もちろん今は「抵抗勢力」に戻している。

「追加的問題」
参入保証金25億円というが、既存参入者は払わないのだろうか、新規参入者のみでいいのだろうか。

「根本問題の一つが全く未解決」
ファンが離れたことの原因の主因として、日米のレベル差がある。MLBの中継の方が人気だ。特にイチローの残り試合はMLBが話題の中心。その次はMLBのプレーオフ。

実力とやる気の面でレベルアップをはかるには2つの方法が考えられる。1つはチーム数の大幅削減で選手の質を上げる。2つ目はサッカーJリーグのように2部リーグを作り、入れ替え方式にする。嫌でも必死になる。

*観光バスに乗るのは1番先に1番前に座れというのは、条件が2番手より上だからである。そしてもう一つ重要なのは、一番前の席は、一番先にバスから降りられることである。案外堀江社長の興味が薄れて、「リタイヤ宣言」するのかもしれない。

*なにしろ、場外野球のプレーヤーは多すぎるが、レフェリーはいない。一事が万事対立感が漂う。そして、状況も変われば、発言も変わる。くらげのように波まかせだ。

しかし大切な問題である野球の質の向上(最高の顧客サービス)について誰も議論しないのも変だ。イチローが安打記録を更新すると、案外「日米の野球の差」について考えはじめるのだろうか。
めどがつくのは1ヶ月後位なのだろう。

COOLMAXシャツを裏返すと・・・

2004-09-27 16:49:04 | マーケティング
b3636f96.jpg暑い夏もようやく終わり、蒸し暑い秋になったのかもしれない。さて、夏のスポーツと言えば給水が必須だ。もちろん普通の水をはじめとし、スポーツドリンクも細分化され、用途別に何種類もある。アミノ酸やクエン酸が最近は流行っている。効果があると思うものを使えばいいのだろう。スポーツの相当部分はメンタル要素だからだ。

屋外競技で、もう一つ必須なのは紫外線対策。フロン放出によりこわれたオゾン層が回復するまであと40年はかかる。皮膚がんだけでなく白内障のリスクも増している。

ところで、夏のゴルフは水分の補給が大量に必要だが、汗の問題がある。以前なら、ポロをびっしょりにして、ハーフターンの間に着替えたりしていたのだが、最近そういう人は減った。COOL MAXという新素材が行きわたったからである。コットンポロの背中で汗がしまになっているのは、見るからに暑苦しく、同伴競技者でも近づきたくないものだ。

COOL MAXは元々、1986年にデュポン社が開発した新繊維で、一本ずつの繊維に複数の縦溝をつけ綿の5倍の吸水蒸発性をもたせている。さらに汗の気化熱で温度を下げる効果を持つ。当初は高額商品に使われていたが、最近は、かなり広範囲に低価格で使用されている。NETで調べてみると、シャツの他、帽子やインナーにまで利用されている。開発にかかった費用がどれほどかわからないが、その特許の持つ効果は絶大で巨額の利益をもたらしていると思う。
なかなか追随者もあらわれないのだが、もしかしたら最近の低価格化は、デュポン社が「次世代製品」を発表する前の地ならしではないかと想像している。次の商品へ誘導するために、まずはドライ製品へ顧客を誘導しておくということではないだろうか。とすれば、そろそろ発表されるのだろうか。

COOL MAXは素材としてはポリエステルである。まったくの化学繊維。経済的には、ハリケーンなどの天候によって市況が不安定な天然繊維(綿)を使わないことが安定価格につながるのだろうが、こういった非常に強い製品が開発されると、石化原料供給側の装置などにも影響が出てくる。
もちろん綿生産にも影響が出る。

綿は綿花を集めて繊維を紡ぐことにはじまるが、近代産業革命が繊維業から始まったように長い産業化の歴史の結果、地力は低下し、既に地球上に繊維の長い(35mm以上)良質な綿花のできる場所はほとんどなくなってしまった。エジプトや西インド諸島の一部だけである。インドではハイブリッド綿の栽培が始まったそうだが、種子には発芽能力がないため、毎年種子を購入し続けることになる。

綿工業の裏側で、米国産の綿花はアフロアメリカンの奴隷制度に行き着く。南部の綿花畑の労働の中心はアフリカ西海岸から強制連行されたアフリカ人であった。買ったのはアメリカ人だが、売った奴隷商人は英仏のヨーロッパ人だ。
(当時、化学繊維が発明されていれば奴隷は不要だったわけだが、化学繊維は医薬品と同様、開発には巨額の資本の集中が必要で、それは当時では無理な話である)
その後、綿花栽培は機械化し、多くのアフロアメリカンは都市スラムに集まるようになっていく。

奴隷売買は過去の話のようだが、かなり類似の光景を見たことがある。1980年台の初めだが、中東の某国の国際空港で入国手続きをしていると、アフリカ方面からの専用機に僅かな家財道具一式をかかえた人たちが到着した。数人の英国人風の人間が胴元のように見えた。そして、あっという間に別の国内業者が小分けして連れ去ってしまった。あれから20年。何人が祖国に帰ることができたのだろうか。

歴史民俗博物館 at 佐倉

2004-09-26 16:52:55 | 美術館・博物館・工芸品
c9ee2041.jpg東京・上野の国立博物館は、かなり物足りない気分になる。ナショナルミュージアムという感じが乏しく展示物は少ない。歴史の短い国だってもっときちんとしている。歴史というのも学説によって史事の評価が異なり、それなりに表現は難しいのだが、その前に展示物が少なく、なげやりな感じがある。最大の理由は、千葉県佐倉市にある国立歴史民族博物館に集中して展示しているからと言われている。ただし、遠い。近くに行く機会を得、先週日曜日に足を運んだ。すぐにブログにまとめようと思ったのだが、しっくりしないことが多く、一週間熟成してしまった。まあ、別にすっきりしたわけではないが悩んでもしかたないのでボチボチと書いてみる。

まず、なぜ佐倉かということからよくわからない。関東人ならなんとか行けるが、その他の地方からはかなり遠い。成田を控えた日本の玄関というのは一つの仮説だがそれにしては英語の解説は皆無だ。都内の区の博物館の方が国際的だ。次にしっくりこないのは、大部分が複製品の展示ということだ。ならば、佐倉でなくともと思える。

次に展示だが、建物面積に対して展示が多い(あるいは建物が小さいというべきか)ので、老齢社会向きかもしれない。歩く距離は短い。わかりにくいのは、民俗史と政治史は若干時代にズレがあるので注意が必要だ。また古文書には現代語訳がついていないので、ほぼお手上げだ。意訳でも欲しい。展示の中でやや違和感があるのが「日本は海洋国家」でというところが強調されているが、実際にはフェニキアやノルウェーのような海洋立国ではなく、農業がGDPの根源だったのだろう。海にこだわりすぎるのは何か競艇団体あたりと関係があるのだろうか。

もっとも興味があったのは、平安時代の王朝文化である。かなりの豪華な生活だ。展示物に誇張がないとすると、相当なリッチである。現物を見るしかない。父娘の会話が思わず耳に入ってしまう。
父:えらい人は遊んで暮らしていたんだ。
娘:じゃあ、馬鹿な人はどうしてたの?
父:馬鹿な人は仕事をしていたんだ。
娘:じゃあ、今と逆ね。
父:・・・

まったく面白い。現代は、馬鹿な人が失業し、仕事の鬼のような人がえらいわけだ。まあ馬鹿とえらい人は反対語ではないのですけどね。

貴族と平民の格差が最大に開いていたのは平安時代なのだろう。王朝文化だけの博物館なんかあってもいいではないかと思うのだがどうだろう。今さら、当時の封建制度を政治的に批判する人もいないだろう。

逆に、政治的に表現がむずかしいのは近代・現代史である。教科書と同じように明治以降のことはほとんどうわべだけの展示で終わりだ。差別や朝鮮民族排斥史、アイヌや琉球のこともあっさりと網羅的に触れている。遠い過去や江戸時代の幕府の制度をとがめようにもどうしようもないのだが、少なくとも、明治から戦前までについての各種差別については、実態の詳細調査をし、戦後のケースについては責任の所在や補償を行うべきだろう。

一方、天皇家の出自は大胆に表現されている。前方後円墳は古代天皇の墓だが、朝鮮半島北部の方墳と南部の円墳のまじった形式という表現をされていて、暗に渡来説を匂わせている。

とはいえ、全体としては、しっくりいかないまま佐倉市を後にしたのだ。

初級シスアドの奮闘

2004-09-25 16:59:02 | 市民A
eb00d71d.jpg今年の春に、ワケあって初級システムアドミニストレーター(シスアド)を受験し、合格した。
理工系の大学生にとって、就職のため是非とも欲しい資格らしい。無関係な私が合格したせいで誰か一人が不合格になって就職に影響が出ては申し訳ないが、厳密な定員はなさそうだ。
実際には95,000人が約5,000円の受験料を払い、67,000人が受験し、25%の16,700人が合格。合格率は2001年の春の37%以来、ずっと低下している。平均年齢は受験者も合格者も29歳だが、高校生からシニアまで年齢は上下に分散しているように見える。

合格率が低下している理由だが、問題の難易度と範囲が拡大していることがありそうだ。何しろIT分野は日々進歩で、事前に過去問題をいくら解いても、予想外の範囲が出題される。そして、非常に重要な点だが、シスアドという資格は、システム供給側の資格ではなくシステムユーザー側の資格ということで、コンピューターやプログラムに関する問題が半分程度で、残る半分は普通の会社員として知っておくべき常識問題である。OAソフトやホームページの作り方、データ通信上の「鍵」の特性といったパソコン関連知識にとどまらず、会計業務としての損益計算書の読み方や、クリティカルパスの発見のようなスケジューラー作成、TQCはじめとする業務改善活動、などについて管理職レベルの知識が必要となる。もちろんいくつかの計算問題もあり、簡単な数学的知識が必要である。そういう意味では学生では解きにくい問題もあるし、会社員になっても、ある程度の知識が必要だろう。もっとも7割程度できれば合格するので、不向きな問題は捨てるのだろう。それに常に新しい問題が登場するのである。バランスシート、株価収益率、そしてブログなどもこれからは出題されるだろう。

友人からは、「次は中級で頑張って」、など言われるのだがまったく勘違いだ。初級というのは囲碁将棋の初段レベルなのである。中級はなくて、上級シスアドはあるのだが、ほとんどがプログラムに特化していて、ユーザーのふりをしたシステム供給側の人間が合格している。合格率は8%、約300人。そういう意味で、世間での誤解をなくすためには初級シスアドという呼称を変えた方がいいのだろう。

さて、合格したことをしゃべる気はなかったのだが、つい受験前に飲み屋で友人に漏らしたことから友人たちに広く知れわたり、同年代からの思わぬ相談が続々とやってくる。みんなが知りたいホームページの作り方とか、メモリー不足でしょっちゅうフリーズするパソコンの適応メモリーとかならいいのだが、まあ友人でないと聞けない超初歩的な質問もある(断っておくが、これらの問題はシスアドとは何の関係もないが、日本人は「資格」に弱いのである)。

たとえば、キーボードで「~」や「_」が打てないというのがある。わざわざ私に聞かなくても良さそうだが、若い人に恥ずかしくて聞けないのだろう。今までは、どこか他の用例からその部分をコピーして使っていたそうだ。またADSLと電話回線の関係を聞く人が多いのだが説明しても理解されないので、もう断定的に答える。近くの知人宅でWORDで文書が書けなくなったというので、行って見ると、キーボードがPC本体とコードレスになっているタイプで、赤外線発信用の電池が脱落していた。WORD以外はキーボードを使わない主義だったそうだ。もっとも字を書かない人は世の中大勢いてブログをやっているとよくわかる。このお宅でも年に一度の年賀状の時に困っていたそうだ。それと、色々話を聞いていていると、各家庭にあるPCの半分位はフリーズしたまま新しいPCと買い換えたか、すっかり再生をあきらめて父親の威厳を保つため、そのまま箱の中に戻ってPC生活はおしまいになっているようだ。
まあ、おカネに余裕のある人は内需喚起のためにどんどん新型を買ってもらう方がいいかもしれない。こういう人達は、パソコンが生活に入り込んできた当初に参加し切れずに、結局、社会がネット化した後で渋々使い始めた人たちだ。それと、なんだかわからないが、普通に故障していないソフトを使いこなせずに故障していると勘違いしている人もいる。で、次は高齢化社会とパソコンソフトの話だ。

私は1980年代の終わり頃からパソコンを使っていた。使いにくい表計算ソフトや、いざという時には、MS-DOSの呪文のような文字を書いていたわけだ。copy *.* とかである。その後、Macが登場し、1995年にはWindows95が発表され、一気に大衆化が進んだわけである。しかし考えてみるとWindowsとCPUの新製品は次々発売され、それに合わせてソフト類もグレードアップされていくのだが、使う方はどこまで理解できているのだろう。初期のWORDやEXCELなら機能の半分は理解できたかもしれないが、バージョンアップのたび、機能が倍加しているような気がする。それに対してユーザーの能力なんて1%アップ位しかないのではないか。機能のほとんどは使わずじまいどころか機能そのものを理解できない。

普通、科学技術の進歩は時系列で考えると右肩上がりで進歩する。かたや人間の個人としての能力は残念ながら加齢とともに右肩下がりで、二本の曲線はどこかで交点をつくり、その後一気に乖離していく。もちろんビジネスでもそうであり、交点の下になっても引退しない人間を老害という。パソコンの世界ではユーザーが使いこなせるようにマウスやグラフィック化が進んでいた。そのため、交点の位置そのものが下がっていて、高齢者もついていけるという状況だったかもしれない。しかし、最近の状況は、この交点が各種ソフトにより下がっていくという簡易化は行き止まっているように感じている。このあたりの技術の行き詰まりについては後日触れてみたいが、どうもこれから先のパソコンライフは、交点より上のやや難しい世界と交点の下の非常にやさしい高齢者用の世界に分かれていくのではないかと想像するのである。

ところで、初級シスアドに合格したことは勤務先には内緒である。どうせ資格の内容は誤解され、フリーズしたパソコンのリセットボタンをさがしたり、スパゲティ状に混線したケーブルをほこりまみれになってほぐしたり、コピー機の中から手をまっ黒にして詰った紙を引っ張り出すようなことをやらされるからに決まっているからである。「初級シスアド」の名前が「シニア・シスアド・トリプルスター」とかの権威あるネーミングに改正されることを期待したい。

自己責任(下)

2004-09-24 17:01:05 | 市民A
e833aab0.jpg9月16日のブログ「自己責任(上)」では外資系A銀行に対する証券取引等監視委員会からの改善勧告を紹介したのだが、数日後金融庁からシティバンク(米国人が発音すると、シリィバン)に対する複数の支店・営業所の認可取り消しが公表された。意外なのは、勧告の対象は「リスク商品の説明不十分」だったのだが、金融庁による指摘は「マネーロンダリングの幇助」、「支店長の18億円着服や顧客データ紛失等の管理不行届き」、「債権・証券等の銀行業務を逸脱した営業」が追加されていたことだ。支店長の事件は元横浜支店長が港北区の老女等から小切手を騙し取った事件、データ紛失はシンガポールで発生。さらに追加すれば、ネットカフェから顧客の暗証番号や口座番号が漏洩し、1700万円の預金を盗まれた顧客に対して当初門前払いをしていたこともある。

マネーロンダリングというのは、おそらくオフショア口座のことと思うが、ずいぶんとサービスしてくれるものだ。幇助罪に問われるといけないので詳しく書かないが、通常は国内の支店で推薦状を書いてもらい飛行機で5時間くらいの場所の支店に、なんらかの形で持ち出した現金または同等物を持ち込めば作ってくれることになっている。シティ以外の銀行でも可能なところはある。わざわざ日本国内で作ってあげたのだろう。

銀行業務逸脱の件は、邦銀各行も頭が痛いだろう。なにしろ富裕層を取り込むといっても、富裕層だけのサービスを設定しようとしても銀行業務での範囲でできることは極めて少ない。
また、米国からはケリー陣営支持のシティバンクたたきという噂はあるが、信憑性は低い。

さて、きょうのテーマ「自己責任」は、投資の話ではない。災害時の緊急避難の件。特に津波である。先日の紀伊半島沖地震のあと読んでいた本に津波災害のことが書かれていた。奥尻島を襲った19mの津波や三陸地方で九死に一生を得た人々の体験記だけでなく、三陸地方のことわざが紹介されていた。

わかりやすいのは「山側の戸には内鍵をかけるな」とか「欲をかくな。一度逃げたら戻るな」というものだ。しかし、津波被害の恐怖を感じさせるのは次のことわざだ。「てんでんこー」とか「津波てんでん」だ。

学者の研究では陸上にあがった津波の速度は秒速7m程度と言う。100mを15秒位だ。マラソンランナーより早い。また潮の引くストロークは30分位と長く、はるか沖まで連れて行かれ、まず助からない。そのため、家族そろって逃げるのはご法度(禁止)になっているということだ。てんでんばらばらに逃げなさい。そうすれば一家が全滅することはない。という恐ろしい意味なのだ。
たいていの言い伝えは、過去の遺物となっているのだが、こと津波といった大災害を前にした人類の無力さは悠久の昔からなんら変わっていないということが言える。

実は、小宅にも災害対策セットはある。以前の会社でリストラの風が吹き荒れていた頃、辞めた社員が会社に置き去りにしたヘルメットなどを払い受け、家族の人数分を自宅に保管しているのだが、食料や水も全部一緒にまとめてあるのだ。これからは一人一人分を別にして個人管理型に切り替えることにしよう。

さらにこの件、損保会社の方と話していたら、アラスカでは80mクラスの津波の記録があるらしい。自宅の海抜も調べておかねばならない。

最後に、別の自己責任なのだが、債務の連帯保証というのがある。親戚に頼まれうっかり連帯保証書に押印したために破産に追い込まれる人はいつまでたっても後を絶たない。社長の個人保証すら、廃止しようという時代である(もっとも経営にしがみついて退陣しない原因だからだが)。連帯保証など本来必要ではないのにまだ犠牲者が出ているのは残念である。借りるのも自己責任だし、仮に連帯保証人になるのも自己責任以外の何者でもない。軽い気持ちで名前を貸したりしたらいけないのである。

プロ野球新規参入に見るビジネス格言

2004-09-23 17:02:43 | スポーツ
dfe1fe36.jpgプロ野球に新規参入しようとしている企業が数社ある。先行順でいくと、ライブドア、楽天、そしてシダックス。実際もっとあるのかもしれない。もともと社会人野球というカテゴリーは、プロ野球が門戸を閉ざしていたためにプロだかアマだかわからない状態になっている。取引先にも社会人野球の常連会社はあるが、野球部出身者の処遇には苦労しているように見える。

しかし、もともとプロ野球のチーム定数っていくつが妥当なのかわからない。人口比で考えるとアメリカの1/2なので、30÷2=15チーム程度が上限のような気もするし、Jリーグのように自由参入にして下位チームを二部リーグと入れ替えるのもいい方法かもしれない。

しかし、そうは言っても、短期的には1チームの枠しかできないかもしれないのだが、そう考えるとライブドア社の堀江社長のやり方は、まさに「バスに乗るなら一番先に」という方法だ。いくら楽天やシダックスやその他の大きな会社が登場しても、席が空いている保証はない。以前、この格言を教えてくれた人物が言うには、観光バスがきたら最初に乗って、一番前の席に座れと教えるのである。だいたい「一番」は発言力が大きくなるというのだ。

紆余曲折があった末、2、3社が参入したとしてもその中のオピニオンリーダーは堀江氏になるだろう。発言だって、他社に先がけどんどん進んでいるわけだ。ジャーナリズムも新興チームの意見を聞くときはライブドアからだろう。実際に現12球団という旧世界人から見れば実業に近い順は、シダックス、楽天、ライブドアだろうが、申請順は重いのである。

もっとも格言を教えてもらった人物によれば、一番前の席にすわるメリットは、一番先に降りることができるということだそうだが、堀江氏もまだバスから降りる時のことまでは考えていないのだろう。

もう一つ、社会人の運動会必勝法の戦術がある。社内コンペ同様、ビジネス運動会をしている会社は激減しているのではないかと思うのだが、先日、千葉県佐倉市の川村記念美術館に行った際、駐車場が満車状態で驚いたのだが、実は併設企業のグラウンドを借り切って野球大会が行われていたのだ。看板を読むと、話題の中心の「読売新聞社関連会社野球大会」と書いてある。さっそく被写体にしてしまおうかとも思ったのだが、やめた。関連会社の選手たちは一市民として自由意志で参加しているわけでもないし、言論統制だけでなく、肉体労働まで拘束されているのではかわいそう過ぎる。

日本を代表する自動車会社も、所有する大スタジアムに観衆まで集めて関連会社対抗運動会をやっているそうだ。なにやらローマ帝国のコロシアムで行われていた剣闘のようである。

ネッスルを多国籍巨大食品企業にしたヘルムート・マウアーは自著の中で、1990年頃から徹底的に日本企業の「カイゼン」について研究し、導入した。ただし、宗教的な部分は捨ててだが。と書いている。外国人の眼には運動会は宗教的活動のように見えるのだろう(本物の宗教団体は横浜国際競技場を1日単位で借りて行事を行っているようだが、詳しくは知らない)。
50メートルとか100メートル徒競走の必勝法と言うのは、簡単だ。何組かレースが行われるのだろうが、ピストルの鳴る1秒前にスタートしろというのである。本来フライングである。しかし、そんなことにはならないのだ。競技はどんどん進むのである。スタートしたランナーを追いかけるようにピストルが鳴るはずである。すでに5メートル位先にいっているわけだ。そしてあわてて走り出した選手たちは、心の中では「しまった!汚い奴だ!」とか心が乱れてしまい、さらに遅れる。

実際、ビジネスにはそういうところがあって、スタートなんか守ってられないのである。相手を出し抜いて創業者メリットを得る。二番手が必死に追いついた時にはレースは終わっているのである。

ただし、実際にこの作戦を使って、新入社員が大目玉を食らったとしても私には責任がないことだけは確認しておきたい。

米国大統領選、登場人物評価は

2004-09-22 17:03:55 | 市民A
b1108842.jpg11月2日の米国大統領選挙に向け、世論調査の結果は現在ややブッシュ現職がリードしているようだ。しかし、まだ決定的に差を開いたという状態ではなく、開いては縮まりという状態のように思える。前回のブッシュ-ゴアの時の醜態の時もそうだが、州ごとに全選挙人を獲得するという制度もあり、まだ不明だ。

しかし、どうしても気になるのが、両陣営の選挙戦が、自身の主張を訴えるというよりも、相手方の政策や過去の経歴詐称とか、性格が暗いとか副大統領を批判したりと、後ろ向きの姿勢のところである。
いわゆるネガティブキャンペーンである。情報誌などのほぼ一致する分析では、もともと共和党と民主党は基礎票として45%程度持っていて浮動票は10%位だそうだ。そのため、選挙戦略としては、
A.相手陣営の政治的あら探しをして浮動票を引き込む。
B.相手陣営の支持者が選挙に行く気がなくなるような人格攻撃をする。
という傾向になるそうだ。

はたから見ると、情けなくなるような話だが、そんなものなのだろう。

さいわいなのは、日本に対する政策には多少の保護主義的政策的差はあっても、大きな相違がないことかもしれない。だいたい二人の公約にしても、実際に守れるかどうかあいまいなのは何れの陣営も同じ。ケリーのイラク撤兵方針やブッシュの減税方針も副作用は大きい。

ところで、政治家や経済人を分類するのに便利な四分割法というのがある。
素質について、頭脳の明晰さと決断力の大小(積極性)で四つのカテゴリーに分ける。
第一分類は、明晰かつ行動力のあるタイプである。一言で言うと「果敢」ということばが妥当。
第二分類は、明晰だが行動しないタイプである。「慎重」と言うべき。
第三分類は、知的レベルが愚鈍だが積極的タイプ。「無謀」ということばが妥当。
第四分類は、愚鈍でかつ消極的なタイプ。「臆病」が妥当。
そして、今回の大統領候補と副大統領候補を四分類に分けると、共和党のブッシュは第三分類「無謀」、チェイニ-は「慎重」。
一方民主党側は、ケリーが「臆病」、エドワーズが「果敢」というようにたすきがけで補完的になっていることが感じられる。もっともブッシュ以外の3人は単に評判とか見かけによる評価で、実際のところはよくわからない。

前大統領のクリントンはタイプとしては「果敢」、副大統領のゴアは「慎重」というカテゴリーだったわけだから、強かったのだろう。もっともクリントンが明晰だったのは、上半身だけだったのは後で判明したのだが。
話を政策面に戻した場合、ブッシュ、ケリーの差はどれ位あるのだろうか。ケリーは保守主義に走り、自動車産業保護とか米国だけの都合で内政を展開するのだろうか、短期的にはあるかもしれないがそんな政策はすぐに行詰るのは必至だ。米国といえども経済規模は世界の30%、孤立主義ではやっていけない。

経済的問題では中国問題があるが、民主党は日本より中国を重視していると言われるが、中国の独走や野心の前には、待ったをかけざるを得ないだろう。

問題はイラク政策であるが、米国の肩代わりに応じてくれる国があるはずもなく、またイラク国内の安定が程遠い中では、いずれが大統領になっても簡単な足抜けは困難だろう。

日本にとって今もっとも重要なのは、国連安全保障理事会の常任理事国になって、日本の周りに迫りくる覇権主義に対抗することであり、それまでは、米国がいずれの政権になっても親密な関係を保つのが最善だ。

日本版「メジャーリーグ」は社会派映画か?

2004-09-21 17:05:14 | 市民A
e9515706.jpg日本のプロ野球でストライキをしている間に、MLBで驚きの事件があった??小泉首相がヤンキース戦で始球式に登場だ。ホームまでダイレクト送球。左手のグローブは以前ブッシュ(Jr)からのプレゼントだ。

しかし、ここまでブッシュ寄りだと心配だ。もっともケリーが勝っても一流のレトリックでごまかしてくれるだろう。「ブッシュ(Jr)に頼まれて色々」とか。「左手は前大統領に、右手はケリー新大統領のために」とか言って握手してしまえばいい。とりあえずニューヨークでは愛想を振りまき、多少の国家的出費には目をつぶって国連の安全保障理事会の常任理事国入りをめざしてほしい。日本の周りには刻々と覇権主義が近づいている。

どうも首相にも愛想をつかされたプロ野球だが、あと数年は正常化できないと思うようになった。なにしろ「保守的を持って良しとする」考え方の既存オーナーの多数グループと「革新的を持って良しとする」考え方のグループ新規参入希望者。そして選手の考え方は中間的なのかもしれない。なかなか魅力ある方向は道遠しだ。3Aクラスのオーストラリアに負けるような構造もおかしい。監督不在を放置したままの結果、コーチ数が1名不足し、木村拓哉選手(広)はほとんど一塁コーチに専任になってしまい、結果代打不足にもなっていた。監督交代を口に出せる人がいないのだ。

政治や経済の世界で噴出していることと同じである。仮にライブドアや楽天が参入しても運営についてのあらゆる方面で対立するのは目に見えている。
まだまだ醜いことが多数起きそうであるが、無理やり5球団にしようとしても試合の編成はでたらめになる。相手がいない期間が起こる分だけダブルヘッダーで消化するしかない。計算上は可能でもピッチャーのローテーションは困難だ。まとめて休んだり、1日に二人の先発が必要だったり、1日に2回は登板しないような自主ルールが必要かもしれない。

それに選手にやる気がでるか疑問だ。FA宣言して日米の両方を選ぶチャンスがあれば、まちがいなくアメリカへ行くだろう。チャンスがあれば、業容拡大というのがビジネスの王道だが、チャンスがあればいつでも撤退しようと公言する社長の会社で社員が働くだろうか?

収益改善の手段は「不採算事業からの撤退とリストラ」だけと考えている5年ほど時代遅れの経営者は今年が20世紀の104番目の年と思っているのだろうが既に世界は向きを変えて進んでいる。また、20世紀型事業再構築の場合でも上記2点以外に経営者の交代が有効とされている。

10数年前に「メジャーリーグ」という映画があり大ヒットした。インディアンズという実在のチームが不成績で解散寸前となったのだが、チャーリーシーン演じるノーコンピッチャーの変身やらベテラン選手や変な日本人選手(石橋貴明)の活躍で優勝してしまうという話で、ただの映画だったのだがその後本当にインディアンズは強くなったのである(この数年はまたダメになった)。
新興チームのオーナーも実話的な映画をつくろうと思っているだろうが、簡単ではない。
それより、企業小説風の現在の球場外のバトルの方が映画向きだ。

心配なのは、こどもたちだ。野球少年が減るのは将来の野球ファンを減らすことになる。誰しも実戦経験のあるスポーツの方が見ていて楽しい。それよりも、いじきたない横車や理不尽な論理、職業差別発言などの子供以下の行動をどう思うかである。

知人にマスコミ人は多いので、具体的には書かないが、新聞記者も論説委員もすべてサラリーマンである(それも高額)。社の上層部の意見と異なる記事なんか書けない。しかし、私論だが、マスコミとその読者とは、案外意見は同じはずだ。誰しも自分と大きく意見の違う新聞を買ったりしない。メディアの方も読者の意見には敏感なはずだ。今回の読売の社説は、そういう意味では購読者数からいえばハイリスクでノーリターンという結果に落ち着くのだろう。もっとも新聞社が知っているのは発行部数であって、流通段階で新聞販売店が折込チラシ収入の部数確保のため、そのまま古紙業者に流している数ははっきり掴んではいないことになっているのだ。

川村記念美術館の至福

2004-09-20 17:06:43 | 美術館・博物館・工芸品
2d3f036b.jpg川村記念美術館は千葉県佐倉市の郊外にある大日本インキの総合研究所の敷地内に建つ。洋風庭園の美しい湖面に二階建てのシルエットを写す。川村を冠するのは大日本インキの創始者に因む。永年のコレクションを集め美術館として展示したというが、あたかも美術館になることを念頭に入れて収集したとも思えるほど、バランスのいい作者や年代の構成である。

個人コレクションとしては、以前(8月23日)に紹介した松下電工のルオーコレクションのように一人に絞った収集もあるが、川村コレクションのように美術館の常設展が開けるような集め方もある。松下同様大日本インキ社も会社が傾いたときに換金しようと考えていたわけでもあるまいが、仮に、その場合には他数の画家に分散した方が有利だ。

一階は常設展で、レンブラント、モネ、シャガール、ブラックなどの小品が多数。コレクションの密度は高い。できれば第一展示室は、もっと小部屋仕立てにして、気持ちを集中して鑑賞したいところだ。名画が多くて目が移る。行きつ戻りつしてしまう。

二階は企画展。ロバート・ライマン-至福の絵画- 美術は「生(なま)」に限るというのは、まさにライマンのためのことばかもしれない。ネット上の画像や紙面上の二次元情報では感じられない空間に芸術性を感じる。白をあやつる画家という表現は月並み過ぎるだろう。広い空間の壁面の作品群と、その絵の具の臭いまでもが、彼の作品感なのだろう。画家としての彼がそこにいても至極自然だろう。
アジアの若い芸術家たちに対しても同様だが、現代は「同時代作家」を評価していく時代なのだろう。人生と芸術を一体化させて行けば、当然そうなる。常に当代きっての画家でありながら、絶えず画風を変えていったピカソが代表だ。しかし、「同時代性」は一歩誤れば単に流行アーティストに陥る危険はあるが、間違いなく時間が淘汰してくれるだろう。

一方でゴッホを代表として、死して初めて大量の絵画が世間に広がっていくケースだってこれからもあるだろう。それも一つの普遍性がある。芸術は「商売」ではないから一枚が完成することで完結し、そこから先はおまけという考え方だ。

ただし、佐倉市は遠い。千葉県の住人でないとなかなか辿り着けない。私は茨城でのゴルフの帰りに近隣に一泊し、国立歴史民族博物館と一緒に訪れたのだが、気軽にいけないのが残念だ。

茨城県でゴルフ

2004-09-19 13:24:22 | スポーツ
e41cded0.jpg昨日は、ゴルフ。江戸崎カントリーという茨城県のコースである。会社の社内コンペだが、若い社員はあまり参加しない。無理に強要したりしないので平均年齢も古くなる。私もわざわざ2時間半も運転していくほどの熱意はないのだが、社歴がきわめて浅いので気合をいれずに参加する。仕事で出張にいくようにでも考えている。

社内コンペの常として、若手とベテランが一緒の組で回るためプレースタイルが異なり、しっくりいかない。若手は飛距離があるため、第二打をずっと待つことになる。次の一打を考える時間がたっぷりあるため、自然とスコアもよくなるが、社内コンペのため、適当にミスをして調整する。結局つまらなくなって次の大会には出ない。こんなところにも負のスパイラル現象がある。また、本来コンペは懇親会の目的もあるはずだが、いまどき会社も社内は足の引き合いの時代だから楽しいはずがない。自分の気に入る相手といくらでも安くプレーできる時代なのだから。ゴルフコンぺが完全消滅する日も近いだろう。ゴルフ場の顧客がまた減るのである。

個人的には、「いくじなしパット」ばかりだったが、上からのパットばかりでしかたがない。一応は最低目標としているバーディー1個だけが満足といわざるを得ない。20人もいてバーディーが2個だけ。目標不明の会になっている。
江戸崎カントリーは、40年の歴史を持ち、多数のプロトーナメントの実績を持つ。会員権はこの1年で185万円から275万円に上がっている。率にして50%アップだ。1995年の1285万円はいかにもバブルだが、だいぶ改善している。経営内容は不明だが、バブル崩壊後の1990年代にコースを36ホールまで増やし、南コースはセルフプレー用にしているようだ。今はインターから30分以上かかるが、数年後には5分のところにインターができる。近隣にめだった施設はないので当ゴルフ場専用インター(道路自体も同根)のようなものだ。

茨城や千葉のコースは歴史も人気も、静岡から神奈川にかけての富士山麓のゴルフ場に負けるのだが、最近の天変からいって富士山の爆発も否定できない状況である。ビートたけし氏も「生きているうちに富士山の爆発を見るのが夢だ」などと予言もしている。仮に爆発すれば、静岡、神奈川西部のゴルフ場には火山灰が降り積もることとなり、ゴルフは困難だろう。会員権はゼロ円だ。もちろん江戸崎は大丈夫だ。灰で淀んだ空に白球を高く打ち上げればいい。もちろん近くの筑波山が爆発したら終わりだが、さいわいなことに火山じゃない。

もっとも、富士山から溶岩がこぼれ出し、都内に灰が降り積もり、東名高速も新幹線も止まったときにのんびりゴルフを楽しむ心の余裕のある人がいればの話だが。

バブル学/ケビン・ハセット著を読んで

2004-09-18 14:04:50 | 書評
fc5767d3.jpg「バブル学/ケビン・ハセット 望月衛訳」はなかなかやっかいだ。結論があるようでないような。

この書は相場論として名著であるバートン・マルキールの「ウォール街のランダムウォーカー」の反証のような内容である。「ランダムウォーカー」の趣旨は、ざっくり言えば、「日々の株価変動は(大数の原理)のようなもので、罫線を見て翌日の株価を予想することは無意味であり、もっとファンダメンタルな要素に特化すべきである。インデックスファンドのような売買手数料がきわめて少ないものが正しい」というような内容だが、本書の筆者は過去のチューリップバブルや1987年のブラックマンデー、最近のドットコムバブルについて、バブルかバブルでないかを論証する。

そして、私が理解したところ、いずれも相場が上がっていったのはバブルとは言い切れず、現物株式(あるいは球根)の将来価値が増えていくことによる現在価値としての価格上昇が主因で、バブルとはいえないが、現物価値を超えた投機的要素も若干あり、その部分がバブルであるというような主張と思う。

やっかいな書き方である。
新規産業(例:ドットコム企業)は成長率が世間一般の期待利率より高く、株や資産の現在価値が高くなる。このため成長が続いている間は、どんどん資産価値があがっていく。そこまではバブルではないが、上がったものを時間のメリットを使って転売益を出すことを大勢が期待し始めることからバブルが発生するとの説である。

結局、日本の1980年代後半のバブルは、担保なく貸し込んだ融資とか、コースの下見もしないのに買い込んだゴルフ会員権とか、ハセットの言うバブル部分だけを増幅したのかもしれない。米国のドットコムバブルはまがりなりにも光ファイバー網のような遺産は残したが、日本のバブルで残ったものは、国債と何本かの高層ビルだけかもしれない。
私見では、バブル発生の別の原因として、非経済的な行政的ハザードも関係していると考える。

例えば、ゴルフ会員権を考えれば、会員になることで得られるプレー費用の減(A)とカントリークラブのもつ資産価値を会員数で割った数値(B)の合計(A+B)と大差ないのであればノンバブルで、単に根拠なく次の所有者への転売益を価値に織り込むようになるとバブルというのだろう。しかしこの例でも特にBの算定には一人一人の価値観の差もあるし、カントリークラブの資産といっても要素としてはバブル要因を含んだ地価の価値や、不安定な顧客来場数に基づく収益計画などが考えられ、簡単にはいかない。

しかし、ちょっと理解できないのは、訳者あとがきで、本書はバブル崩壊株を先回りして予想し、信用売で大儲けしようという目的で書かれたとなっているが、そんなことはどこにも書いてないように思えるのだが。

大阪ドームのゆくえは?

2004-09-17 14:06:10 | MBAの意見
8f7bbb6a.jpg以前のブログで、場外で行われているもう一つのプロ野球について、5回裏まで進んだと書いたのだが、どうも訂正だ。
3回裏位ではないかな。まず、登場人物がそれぞれの役回りを表明したというところだろう。当初はチーム数が12から11、10、8と言うようにマイナス方向の意識であったのだが、今のところマイナス1、プラス2か3である。最大14チームである。

しかし、本音は退出したい企業もありそうだ。きのうのブログで少し触れた企業向け仕組債でクビが回らなくなって、大陥没した飲料会社や、黄色の電車の会社だが、電車会社の方は球団を手放すようでは同じ名前の関連事業のほとんどにユーザー離れがおきそうだ。沿線の活気もなくなる。
これからは買い手側が動くのではなく、売り手側企業から動くかもしれないが高額商談は不調だろう。

ところで、15日のブログの中でライブドアが大阪ドームの使用権を引き継ぐものと書いてしまったが、はずれた。
仙台だそうである。やはりローコスト経営なのだろう。また、楽天は神戸と言っているので複雑だ。

話はここから経済問題になるのだが、大阪ドームは一時、債務超過になり大阪市が百数十億円をつぎこんでいる。第三セクターで、さらに追加融資が必要とのことである。しかしそれらの前提は近鉄球団が支払うはずだったドーム使用料の安定的確保だ。

報道によると、ドームと近鉄の契約では年間10億円なのに対して、オリックス=YahooBBスタジアム間の利用料は年間6000万円。まさに第三セクターの武士の商法である。差額だけで、1チーム分の給料が払えるくらいだ。楽天が神戸にこだわりたいのも当然だ。

8月18日のブログに書いたが、大阪市は三セクに対する追加融資を乱発している。すべてがオリンピック誘致が成功する前提だったのだからうまくいかない。一点張。川崎市など他の地域の三セクは解散、整理が始まっている。しかも大阪市は他の金融機関に対しては、「迷惑をかけない」なる念書まで渡しているそうだ。大阪市民は引越しが必要だ。

話は変わるが、「優秀経営者賞」なるものがあり、ゴーン氏も受賞している。反対に「ワースト経営者賞」も発表したらどうだろう。表彰会場にはあらわれないだろうし、個人賞だと受賞時にはすでに解任されているかもしれないので、会社単位で表彰すればいい。
そうすると、ダントツの1位は三菱自動車、2位争いは近鉄、UFJ、カネボウといったところかもしれない。