パラサイト 半地下の家族(2019年 映画)

2023-06-06 00:00:52 | 映画・演劇・Video
カンヌ映画祭が話題になっているが、4年前のパルムドールの韓国映画『パラサイト 半地下の家族』を意識的に見ていなかった。というのも受賞の後の日本の報道では「韓国ではまだ多くの人が半地下住宅に住んでいて、洪水のたびに大きな被害を受けている」という報道や、「韓国の引越がいかに大変か(家賃が高いのと前払い金が多いとか貧富の差が拡大)とか」。

つまり格差社会と貧困がテーマに違いなく、『万引き家族』の韓国版なんか今さら観たくないなと思ったわけ。

実際に見ると、ごく普通の大喜劇。ある意味で階級差だけを取り扱うならチャップリンの「街の灯」ということだが、格差を大拡大し、犯罪スレスレ(というか学歴職歴詐称という微罪はあるが)。貧乏家族一家がそれぞれ他人のフリをして、大富豪一家の邸宅に使用人として職を得る。

ところが、

さらに調子に乗って、富豪の留守宅で家族パーティをしているときに、緊急事態で富豪一家が帰ってくるし、邸宅の地下の核シェルターに潜んでいた先住人物も登場する。首相官邸で家族パーティ中にミサイルが飛んできたような話だ

そして最後は大規模殺戮事件が発生するも、犯人は逃走。捕まる見込みもない。

ひるがえって、カンヌ受賞後の日本の報道は何だったのだろう。

おそらく、映画を見ないで韓国の半地下住宅を取材したのだろう。あるいは、映画を見ない人が記事を書いていたのかもしれない。

あるいは、これを喜劇と感じた私の感覚がおかしいのかもしれない。あるいはカンヌの審査員がおかしいのかもしれない。

パンク侍、斬られて候(町田康著)

2023-06-05 00:00:14 | 書評
知人の紹介で読んだのだが、江戸時代の浪人にパンク野郎をあてはめて構成。主人公は掛十之進。諸国を渡り、仕官とか金儲けとか企んでいる。狙われたのは黒和藩。新興宗教の「腹ふり党」が当藩に侵入しそうだという架空の話を作って、藩の重臣に取り入ろうとする。藩内では無能な殿の下で二人の重臣が勢力争いをするという時代劇ではおなじみの構造になっている。

そして、掛の存在を利用して自派の有利のように重臣が動くのが、実際に他藩で起きた「腹ふり党騒動」は教祖が捕縛されて、すでに終結。これではまずいと、掛は教祖を他藩から奪還し偽腹ふり党を仕立て上げるのだが、これが大暴走になり城下が大騒ぎで城まで炎上してしまう。

それを鎮圧しようにも、江戸中期ではサムライの数が足りない。そこで登場するのが失脚していた重臣で閑職の猿回し奉行として猿の調教をしていたのだが、中に人間の言葉を使う天才猿がいて、日本中の一億匹の猿が、偽腹ふり党と戦うわけだ。


著者の町田康氏は、元はパンク歌手だったどうで、本書のタイトルが『パンク侍』になったようだが、主人公の掛十之進は、まったくパンクじゃない。単なる小心者のように見える。

小説だから、リアリティがあってもなくてもいいのだが、人間知能の猿とか人間を宙に浮かして爆死させるというような超人が唐突に登場するのは、どうなのかな。登場人物のほとんどの人間に共感できないかな。

シミュレーターが趣味レーター?

2023-06-04 00:00:47 | 美術館・博物館・工芸品
東急電鉄の博物館は、田園都市線の宮崎台駅に隣接している。最近、京浜急行や小田急が新しい博物館を作って、結構な入場料を設定しているが、東急の「電車とバスの博物館」は電車の料金と同じぐらいで良心的だ。



まず、パノラマの鉄道模型。背景が数年前の渋谷駅で、いまはなき東急デパートの東横店。つまり立体的な構造で都会人かどうかを試されていた駅が設置されている。以前は東急本店や日本橋店もあったが・・



そして、往年の緑とクリーム色の車体。ただ、渋谷==二子玉川園となっているが、この車体だったのだろうか。現在の二子玉川と中央林間の間の田園都市線との関係が、少し腑に落ちないが、まあそうだったのだろう。

もっとも、こういうキュートな車体だが、現在でも世田谷線とかこどもの国線は、大差ないような気がする。時間超越的。



古い時代の、木製の内装は、国鉄や京成でもこんな感じだった。昭和10年頃から30年頃までは、日本は文化的に停滞していた。歴史学者の誰も言わないが、戦争を挟んだ20年ぐらいも「失われた20年」だと思う。「失う」というよりも「投げ捨てた」という感じかな。



実は最高に驚いたのが、シミュレーター。自分で操作したのではなく、完全になり切っている男性がいた。近づくと怖いので、上階のバスの展示車の中から観察していると、きちんと手袋をして、運転操作のたびに大きな声で指差呼称確認をしている。まさに本物だ。

シミュレーターは小学生の専門かと思っていたが、運転士の入社試験のようだ(入社試験で電車運転の実技は絶対にないと思うが)。

最大の敵はスケジュール?

2023-06-03 00:00:08 | 市民A
名人戦が終了し、ふと藤井名人竜王の予定を見ると、次はベトナムで対戦。



東海テレビがスケジュールをまとめていたが、6月2日は名人戦の翌日なので移動日だろうが3日にはベトナムに向かうようだ。棋聖戦は一日制だが、スケジュール的には4日間。今回の名人戦も対局の前日と翌日の計4日が必要。就位式は東京だろうし、叡王戦の翌日が岩手から長野へ移動ということで、家に帰ったのは一瞬かな。あるいは岩手県に行く時からパスポートを持っているのかな。もちろん、あまり対戦相手の研究もしていないのだろう。

名人戦で負けた一戦とか叡王戦についても、若干の攻め急ぎを感じるのは、負けると対局数が増えるということが影響しているかもしれない。
最大の難敵はスケジュールだろうか。専属マネージャーが必要と思うが、案外、既にいるのかもしれない。


さて、5月20日出題作の解答。







1三銀は、いわゆる「毒まんじゅう」だが、飾り駒というわけではない。銀を3三に移動して、持ち駒なしにしてもいいが、食感が悪い(いわゆる「味が悪い」)と思う。


今週の問題。名人一期にちなんで。なぜか「踏み台」に。



解ったと思われた方はコメント欄に最終手と総手数とご意見をいただければ正誤判定します。

メデタイ?

2023-06-02 00:00:19 | あじ
最近、ある食事会に行った。めでたい方のための祝賀会。私はめでたくないのだが、焼き魚になった鯛に近付いて観察すると、鯛の方もめでたくない顔をしている。目は白目、口を開いて、非常に苦しそうだ。といっても、活きづくりにされるよりはましだろうか。



みんなで取り分けて頂くことになった。鯛の白身は、食べた人間の栄養になり、人間の体の一部になる。輪廻転生だ。

ところで、「おめでたい」という日本語があるから、鯛が生贄になるわけだ。もっとも「たい」の語源は「平たい」という説もある。それでは全然めでたくない。平社員のイメージだが、それはそれで終身雇用制度下では、めでたいとも言える。

日本橋de圓満会

2023-06-01 00:00:31 | 映画・演劇・Video
先週、「お江戸日本橋亭」へ行き「圓満会」を観る(というか落語の場合、どう表現するのがいいのかな)。



橘ノ圓満師匠が二席披露し、講談や三味線漫談など、賑やかだったが、どうも橘ノ圓満師匠の周りに集まる人たちは、みなさんアクの強い方ばかりのように感じた。師匠はそうでもないが、講談師神田鯉花殿、三味線漫談藤本芝裕殿、まあ大笑いだが、芸風がかなり濃い。

瀧川鯉朝師匠の新作落語「電気スタンド」は、単に自分のせいだが、オチのいみに気付くのが大幅に遅れ、帰路の地下鉄の中で、ハタとわかった。すぐに点灯しない壊れた電気スタンドを地でいってしまう。



ところで、寄席と言えば、上野、浅草、池袋、新宿。その他の高座はどんどん消えていき、小耳に挟んだのだが、コレド街に囲まれた「お江戸日本橋亭」も「今年限りの運命かな」らしい。確かに、50人程度が木戸銭2000円を払っても10万円。6人分の出演料を差し引くと小屋に落とすものがない。(あるいは、小屋代を納めると出演料は雀の涙となる)



もっとも落語家の荷物は(関東では)扇子と座布団だけなので、大ホールでも銭湯の二階でも開演できるそうだ。

それと、最近、講釈師の小説を読んでいるが、「語りの芸術」なのだと思う。ちょっと深入りして勉強してみたい。

中央構造線!

2023-05-31 00:00:04 | たび
富山・長野の観光バス旅は高遠城址、光前寺(駒ケ根市)をもって終了し、中央本線の茅野駅から特急あずさ号に乗り都心方面に向かうのだが、高遠市から駒ケ根市に向かう途中に天竜川沿いを南下する時間があった。



不思議な風景なので車窓から撮影し、後で調べると「中央構造線」の一部だった。

日本の代表的な構造線は、九州中部から四国北部、紀伊半島を横切り関東まで続く「中央構造線」と新潟県と静岡を結ぶフォッサマグナの二つがあると思っていた。

今回調べてみると、フォッサマグナを糸魚川・静岡線と思い込んでいたのは間違いで、その線は日本海と太平洋の間に、ある時期に存在した大きな溝(これがフォッサマグナ)の西端の線に過ぎないということらしい。東端はおおむね柏崎と千葉市と結んだ線で甲府を通る。

この横に走る中央構造線とフォッサマグナ西端が縦横に交わるのが諏訪湖だそうだ。

では、どういう順番だったかというと、日本列島の母体は、残念ながら大陸の一部だった。しかしその頃、中央構造線は大陸の沿海部の横ずれによって発生。

その後、大陸から日本列島が分離する段階で東北日本と西日本の方向がずれてきて、本州の原型が二つ(東北日本と西日本)に割れてしまう。それによってできたのがフォッサマグナ(大地溝帯)。

その後、堆積物が増加したことと、海底からマグマが噴き出したりで、再び東北日本と西日本が一体化し、海底だった溝の底から隆起したり噴火したりしてアルプスが出現し、あたかも東西日本が別の島だったことが見えなくなっているそうだ。

天竜川は東西に走る中央構造線が、例外的に諏訪湖に向かって北上する場所らしく、諏訪湖で糸魚川静岡線(おおむね富士川)と交差するようだ。

フォッサマグナの東端が柏崎というのも気になる。世界最大能力の発電所がある。

これにて、立山黒部アルペンルート+信州の旅紀行は「終わり」。

宝積山 光前寺

2023-05-30 00:00:34 | たび
高遠城公園を短時間で済ませ、観光バスは次の臨時目的地に進む。



宝積山(ほうしゃくさん)光前寺(こうぜんじ)。



枝垂桜(しだれざくら)の名所で駒ケ根市の山がちの立地がゆえ、ちょうど満開時期だった。

宝積寺(「宝」も「積」も旧字体)とは、宝を積むという豪勢な名前だ。桃太郎伝説の感じだが、内陸なので鬼が島はない。むしろ桃太郎ではなく『早太郎』という伝説があるようだ。

この寺に住み込むことになり「早太郎」と名付けられた、運動能力が抜群の聖犬で、鬼や妖怪と戦い続け、人々を守ったといわれている。JR某駅の焼鳥屋の串に釣られて毎日通い続けた忠犬よりも立派かもしれない。

そして、もう一つの注目点は、この寺には『ひかりごけ』が自生しているということ。



石垣の間に生えていて、うっすらと光ると言われていて、観光バスの同行者たちが石垣探索を続けるが、「あれがそうかな」とか「光ってない」とか「これにしとこう」とか、怪しい話になってしまう。とりあえず、撮影をしておいて、自宅で画像を拡大して確かめようと、「そこにあるはず」の石垣のすき間を撮影したのだが、さらにわからないわけだ。

そういえば『ひかりごけ(武田泰淳著)』という小説がある。早い話が極限時のカニバリズム(人肉食い)がテーマだが、数十年前に読もうとして文庫本を片手に雨の日に地下鉄のホームに向かっているときに駅構内で落としてしまい、数秒後に泥水を含んでしまって、そのまま放置ゴミにしてしまった。読むな!という天啓だったと思っている。

高遠城、スピードラン

2023-05-29 00:00:27 | The 城
松本城の後の行き先は、高遠城。桜の名所で、高遠小彼岸桜という赤色の強い特別な品種の桜が1500本一気に咲き開くという豪華な話だったのだが、3月末からの異常な高温によって、既にすっかり咲き終わっているということはわかっていた。



この桜というのは、明治の初めに高遠城が廃城令に従って取り壊された後、旧藩士たちが城を惜しんで桜を植えたということで樹齢が150歳ということだそうだ。



もっとも、楽しみはもう一つあって、江戸幕府の中の小事件である絵島生島事件の中心人物というべき絵島が高遠藩に送られて格子戸のある屋敷に押し込められたという事件があった。それを再建した絵島囲い屋敷があるということだった。

ところが、ツアー側が色々と気を利かして、枝垂れ桜の名所が近くにあるということを言い出し、高遠城は30分だけにして、新たに桜を見に行こうということになった。



屋島囲い屋敷は公園の奥の方なので往復する時間もないので、本丸跡と空堀の散策を大急ぎで済ませ、次に進む。

松本城再訪で気付いたこと

2023-05-28 00:00:33 | The 城
長野方面に旅行に行ったのが先月のこと、自分で行ったところで事件が起きるような気がすることが多いのだが、長野県で発生した連続殺人事件の現場である中野市だが、長野から小布施を経て、斑尾高原のホテルに向かう途中のバスで通過しているはずだ。もっともバスから降りなかったから。

さて、長野、アルペンルートの旅の3日目は、松本城へ。現存12城の一つ。実際は12城ではなく12天守閣。お城好きとしては、一応全制覇している。二回以上行ったのは、姫路、備中松山、松山、高知、一回は弘前、高岡、犬山、彦根、宇和島、松江、そして今回二度目になった松本城だった。

多くの城が解体されてなくなった理由としては
1. 徳川幕府が一国一城政策をとったため、二城目は取り壊しになった。(江戸初期)
2. 火事などで天守閣が焼失しても、本丸御殿だけあれば天守閣は要らない、と考えることが多くなる。(江戸中期)
3. 明治になり、そもそも城は不要になった。明治10年頃から、天守閣のたたき売りが始まり、多くの城は風呂屋の薪に使われたようだ。
4. そして空襲。上空からの都市攻撃の時に一緒に焼けた。天守閣を目視して爆撃機が飛来していた。

2023年


2005年



松本城に前に行ったのは2005年の春なので18年前だ。ところが、今回の再訪でまず感じたのは、前回と違う感じがあること。

2023年


その感じの違いは何のかは、よくわからなかったので、当時の画像と現在の画像を比べてみるとなんとなく感じたのは、前回より白い壁面が汚れているように見える。その結果、この城の売りである「美」を損ねているように思える。全体としては黒い天守なのだが、そこに白色が入ることで引き締まった感じだが、白が汚れてしまうとぼんやりしてしまうのだろうか。