かえり道(2017年 映画)

2024-06-25 00:00:29 | 映画・演劇・Video
舞台は福島県浪江町の帰宅困難区域。福島第一原発の炉心融解事故により町を出ることになった一家の家庭内ドキュメンタリー映画。



実は、当事者によるこういった記録はなかった。記録を撮影し続けたのはまだ十代だった娘。事故から5年経って、住むことのできない元の住宅の状態、墓参り、そして、家族はそれぞれの新しいポジションの都合で別居中。

ラインでの連絡で家族は繋がり、それぞれの忙しい時間に追われて、震災の記憶を捨てようとしているのだが、5年や10年で記憶がなくなることなんかないわけだ。

父親は元々原発で仕事をしていて、仕事に戻っているし、母親は一時避難した郡山に留まり、娘は大学に進学。

一家は、もう住めないと思われる自宅を解体しようかと悩み始める。家を壊すことは故郷を捨てることを意味するわけだ。

映画が公開されてから7年が経ち、やはり浪江町の大部分は帰宅困難区域のままで、娘は映画監督になった。

宿屋の仇討ち(演:桂伸治)

2024-06-24 00:00:00 | 落語
NHKの日本の話芸。NHKホールでの収録。

元々は上方落語だったそうで、話を江戸に置き換えている。場所は東海道の神奈川宿。現在の東神奈川駅のあたり。落語並みにおかしな話だが、そのあたりの現在の地名は、神奈川県神奈川区神奈川。確か、兵庫県兵庫区兵庫という地名もあると聞いたことがある。

さて、武蔵屋という宿に泊まっているのが、一人の武士。隣の部屋には威勢のいい町人衆が三人。これがうるさくてしょうがない。最初は芸者を入れて飲めや歌えや。武士は手代に文句をつけ、注意をすると、「侍を怒らせたら怖い」と静かになるが、次は相撲の話になって盛り上がり、部屋で相撲を始め、武士は手代を呼び二回目の文句を付ける。手代は再び三人衆に注意をし、再び静かになるが、今度はおとなしく色事の話を始める。そして権兵衛という男は極め付きの話を始める。

三年前に川越に行っていた時に、武家の奥方と懇ろになって通っているところを武家の弟に見つかり切られそうになったが、逆に殺してしまった。逃げようとすると奥方が、私も逃げると言い出し、秘蔵の三百両を持っていこうとしたため、それを奪った上、逃走の足手まといになると奥方も切り殺してしまい、三年経っても追っ手はこないと、自慢話を始めた。

一方、武士は手代を呼び、私は川越藩の武士で、妻と弟を三年前に殺され、賊を探す旅に出ていたが、本日、ついに仇を発見した。隣室の男と二人の友人を斬ることことにしたが、ここで決行しては宿に迷惑がかかるので、明朝、町のはずれで切ることにするので、今夜は絶対に逃がさないようにしてほしい。一人でも逃がしたら宿屋の使用人を皆殺しにすると、宣言。

慌てた手代は、店の中で血柱が立っては困るので、三人衆に事情を話したうえ縛り上げてしまった。どうも、飲屋で聞いた話に脚色して喋っただけらしいが、武士は聞く耳を持たず、朝まで高枕で爆睡。

そして運命の朝。手代が武士の部屋にいき、隣室との襖を開け、縛り上げられて泣いている三人と対面することになるが、

これらは何で縛られているのだ。ということになる。手代が昨夜の仇討ちの話をすると、あれは嘘だ。おかげで良くよく眠れた。ということになる。


落語の中で嘘をつくはなしはたまにあるが、実は難しい芸だろう。嘘には思えないように話す場合と、嘘をついて相手を騙しながら、観客には嘘をついていることがわかるような場合もある。


本演目では、武家の方は観客をも騙すような嘘をつくわけで、なんとなく、オチの後、気持ちが落ち着かない。

薄情(絲山秋子著)

2024-06-23 00:00:34 | 市民A
著者の小説、数年前から読み始めているが、5冊以上10冊以内かな。2000年代の浮遊感のある作品群が読み易いと思っていたが、順に読むのも文学部の卒論を書くわけじゃないのでそうこだわるわけでもなく、2015年の上梓で谷崎潤一郎賞受賞作の『薄情』を読んだ。



主人公は宇田川といって青年時代の終わりの頃のもやッとした感じの男。群馬(高崎)の実家で神主を引き継ぐ予定だが、代替わりまではまだ時間があって、いわゆるモラトリウム時代。そして、彼の周りには様々な女性が登場するのだが、一言で言えば、「勝手な女」というのが多い。そして、彼をもてあそんで、各自の都合により去っていく。

もちろん薄情の逆は熱情だろうが、熱情家というのは小説にはいささかなりにくい。『冷静と情熱の間』という小説(&映画)もあったが、そういいとも思わなかった。

さらに薄情といっても、単に感情の薄いロボットのようなタイプと、いつ何時も心の平静を保ちたいというタイプもいれば、単に犯罪者の様に冷徹というタイプもある。

本書の宇田川はその中の平静を装うタイプ。

そう、村上春樹の『ノルウェーの森』のワタナベ君という感じだ。

そして、最後に燃え尽きる「恋のライバルの画家の」絵画工房。これは川端康成『雪国』のラストシーンではないか。

ところで、主要登場人物の来し方行く末が定まった後、宇田川は当てもなく車を走らせ、途中ヒッチハイクの少年と長距離ドライブに出る。少年を自宅に届けたあと、なぜか山伏修行で有名な山形県の出羽三山に向かう。このくだりは川端の『伊豆の踊子』的だ。

ところで、今年の後半に出羽三山方面に行こうかと思って、調べていると、三山の一つである月山だが、車では近づけず、ほとんどが登山そのものということのようだ。山形県は全市町村に温泉が出るそうで、出羽三山ではなく、出羽百湯の旅になるかもしれない。

失冠を(内心)悲しむ人、喜ぶ人

2024-06-22 00:00:02 | しょうぎ
藤井八冠が七冠となった。以前から、「仮に失冠するなら」という話があり、
  • 五番勝負
  • 持時間が短い
  • 幸運に恵まれる
の三条件と言われていた。1,2,3は少し関連していて、名人戦や竜王戦のような二日制で持ち時間も長いタイトル戦の中に、持ち時間の少ない対局が入ってきた時の、時間の使い方に変調をきたし、長めに考え込んで終盤で複雑な局面になった時に1分将棋になっているということ。最終局も終盤で形勢が混沌となったが、正解には到達できなかった。


ところで、(内心)一番ガッカリしたのは叡王戦スポンサーの不二家だろうか、七冠をCMに起用していて、まさか八つの内、これだけを失うかと大問題になっていると思われる。

スポンサーから降りてタイトル戦を辞めれば、戦わずして全冠制覇復活ということになる。

一方、(内心)喜んでいるのが、全国の将棋講師ではないだろうか。藤井七冠が鬼のように強くなると、教わる生徒が減っていたらしい。そもそも遥かに遠い存在となっていたので、いまさら将棋を指しても・・という気持ちになって将棋熱が冷めつつあったように感じていた。これで彼が人間であることが証明され、再び生徒が増えることが期待できるだろう。


さて6月8日出題作の解答。






今週の出題。



解ったと思われた方は、コメント欄に最終手と総手数とご意見をいただければ正誤判定します。

有罪か無罪か

2024-06-21 00:00:53 | 市民A
昨日に続いて、神奈川県警の話題。昨日は、警察車両に車上荒らしをして、別件で張り込み中の警官2人が易々と現行犯逮捕した話題。きょうは逆パターン。朝日新聞の記事で昨日の事件は新人記者が書いていたが、今回は違う記者。あまり足を使ってないというか、現場を取材してもしょうがないかな。

洗濯物を盗もうとしたとして、神奈川県警は6月19日、海老名署地域課の巡査長〇〇〇〇容疑者(38)を窃盗未遂容疑で現行犯逮捕し、発表した。「その場にはいたが、していません」と容疑を否認しているという。
逮捕容疑は19日午後4時半ごろ、同県秦野市のアパートで、1階に住む男性(29)の家族らの洗濯物を盗もうとしたというもの。室内にいた男性が、干されていた洗濯物に触っている宮村容疑者に「何やってんだ」と言うと、約100メートル逃走。男性が追いつき、通報を受けた秦野署員に引き渡したという。男性は〇〇容疑者と面識がないと話しているという。
県警によると、勤続約20年。交番勤務で、勤務態度に変わったところはなかったという。
神奈川県警の警察官の逮捕は今月3人目、今年5人目。昨年は5人だった。〇〇〇〇監察官室長は「短い期間の中で職員が複数逮捕され、遺憾」と述べた。(〇〇〇〇)

この事件だが、深堀りしたいポイントがいくつかある。

  • 洗濯物に触ったものの盗んではいない、と主張。→だから、窃盗未遂ということになる。他人の洗濯物に触るって、盗む以外ないかな。さらにおそらく不法侵入だろうと思う。記事から言うと軒下という感じだ。
  • 一般男性に捕まり、取り押さえられる。警察学校で格闘技の教育受けてないのだろうか。→おそらく格闘技が下手でも採用にならないということはないだろう。また格闘すると、犯人であると証明するようなものなので、無罪を訴えることにしたのだろう。
  • 県警警察官の逮捕が今月で3件、年初から2件。→6月は1週間に一人ということ。鹿児島県警のように言われないように積極的に逮捕公表しているのだろう。
  • 犯行時刻が午後4時半ということは、洗濯物の取り込みの時間帯。現場を見られる可能性が高いのに、なぜ?→見つかるスリルがやみつきになっている。あるいは単に、濡れたままでは嫌だったのか。
  • この手の犯罪では、家宅捜査をすると、自宅から大量の収穫物が見つかるものだが、そこまで調べるのだろうか。あるいは署で取り調べて一件落着とするのか。口を割りそうもないので、「罪状を認めないと、家宅捜査する!」と脅かすのだろうか。

一勝一敗か

2024-06-20 00:00:47 | 市民A
6月17日の未明、横須賀市の住宅地で一騒ぎが起きたようだ。ミニバンのドアを開けて車上あらしをしようとした中年の男が現行犯逮捕された。



車のドアを開けたところ、中に潜んでいた男がいた。警察署員が二人隠れていたわけだ。

ところが、この署員だが、そんな夜中に車上荒らしを待ち伏せしていたわけではない。付近では1週間ほど前から民家の花壇が荒らされる被害が続いていたようで、張り込んでいたわけだ。花壇あらしは、不法侵入罪と器物損壊罪にあたる。

つまり、窃盗罪で一人を逮捕したものの、花壇あらしの方はもう捕まらないだろう。1勝1敗。検挙率50%は平均以上かな。

気になる点がいくつか。

記事にある事件現場だが、二種類の犯罪が同時に起きている。少し怖い街だ。

ところで、本記事は朝日新聞の横浜支局のニュースで、入社一年目の女性記者が書いているのだが、この記事の少し前には1週間位前に横浜駅至近で起きた無差別殺人を追いかけていて、朝日新聞の有料版に記事を書いていた。

ともかく、大掛かりな事件の方は、書ける記事は少ないし、ありふれたニュースの方は大量の情報があり、記事を書くのが簡単なのだろう


移民の世界史(ロビン・コーエン著)

2024-06-19 00:00:16 | 歴史
著者は南アフリカの社会学者。人類の歴史を、人の移動という観点で捉えている。この本の現代は「Migration」となっている。この単語の前にeをつけたemigrationは国外への移住のことでimをつけたimmigrationは海外からの移住のこと。



いうまでもなく、東アフリカで誕生したホモサピエンスはアラビア半島を経て、北回りや南回りで世界中に拡がっていった。途中でネアンデルタール人とデニソワ人という近縁の人類と交配して今に至っている。

つまり、ずっと東アフリカに住み続けるほんの少しの人たちを除けば、世界中が移民ということもいえる。

まず第一部が近世に近づく前の人類の移動について、
出アフリカ、探検家たち、宗教、遊動民、ロマ、太平洋諸島、奴隷貿易、インドの年期奉公、帝国主義、巡礼

そして第二部は
 アイルランドの飢饉、南アフリカの金鉱山、オーストラリアの囚人、アメリカへ、ユダヤ人、追われたパレスティナ、英連邦内での移動、トルコからドイツへ、ベトナムのボートピープル、ソ連解体、カリブ海内での移動、華僑

第三部は現代人の移動
 中国の国内移動の禁止、インドとパキスタンがそれぞれ独立。労働力の輸出国、セックスワーカー、政治的難民、労働力不足

第四部は未来へ向けての予測として、
 留学生、結婚、リタイア後、ツーリズム、こども、国境、拘留や送還、そして気候変動。

ところで、本の表紙の地図には日本が含まれていない。最新の研究では日本人のルーツは複数のルートで日本にやってきた人たちが混じり合ったものということはわかっているようだが、本書の中に様々な移民の形態のカテゴリーが書かれているが、なぜ、日本列島にやってきたのか。ほぼわかっていない。というのも大陸と日本をつなぐリンクにあたる種族が消滅しているからだ。つまり滅亡したわけだ。日本に来るのが正解だったわけだ。

19歳(2018年 映画)

2024-06-18 00:00:49 | 映画・演劇・Video
道本咲希監督(&脚本&主演)が21歳の学生の時に制作した映画。PFFで審査員特別賞を受賞している。20日で死ぬだろうと思っていた少女が就活もしないで(もちろん終活もしないで)カメラを趣味にして、毎日を、なんとなく過ごしているうちに、他者との関係の中で、少しずつ社会の重みを感じていく姿が見えてくる。

みかけによらず重い荷物を背負っている人が多いのが見えてくるのだろう。

しかし、監督、脚本、主演を全部というのは、勉強になるだろうが、どんな感じなのだろう。映画のことならなんでもできるというのは大したものだ。

その後、ドラマやCMの仕事をしていたようだが、ついに今秋、長編映画『ほなまた明日』が公開されるそうだ。怖い映画だといやだな・・

化物つかい(演:橘屋圓太郎)

2024-06-17 00:00:40 | 落語
NHK日本の話芸で収録された『化物つかい』を鑑賞。

口入屋から奉公人を雇っても、三日も経たないうちに辞めていく、いわばブラック職場があった。使用人は武家の独り者の隠居。家督を譲ったのだろうか。給金は他所の倍としたが、一日中働かなければならず、時々、食事が抜きになったりする。

とはいえ、たまたま東北地方から出稼ぎに来ている権助という男がみつかり、過酷な職場に三年務めたのだが、主人が家の買い換えをするといって、割安な事故物件を買ってしまう。

幽霊出没という屋敷で、とうとう権助は、命が惜しいと言って暇を取る(つまり退職)。困り果てた主人は家の中が片付かず、幽霊でもいいから誰か来ないかなと思案していたところに現れたのが一つ目小僧。人間を脅かすつもりだったのが、逆に使われてしまう。そして三日が経ち、ついに元の狸の姿になって、逃げだしてしまうわけだ。

演じる点で難しいのは、ズーズー弁で話さなければならない部分があるので練習が必要だ。繰り返して練習しているうちに言語の常として、覚えた言葉をつい普段使ってしまうということがあるかもしれない。

それと、この噺、サゲているようだが、この隠居さん、これからどうなるのだろう。人使いが荒い上に、幽霊屋敷に住んでいるというのでは、採用困難だ。幽霊退治済を証明でもするのかな。

幽霊の正体見たり狸汁

家の前に皮でも吊るしておけばいいかもしれない。

六歌仙図(渡辺始興)

2024-06-16 00:00:26 | 美術館・博物館・工芸品
アーティゾン美術館でブランクーシ展を観たのち、収蔵品展を回っていると、掛け軸になっている『六歌仙図(渡辺始興)』を見つけた。江戸時代18世紀の作。



苦労して、図と六歌仙の固有名詞と突き合わしたところ。上から僧正遍照、小野小町、在原業平、大伴黒主、文屋康秀、喜撰法師となる。

六歌仙とは905年に上梓された古今和歌集の中にある序文の中に特に作者を指定して評価を受けている6名の歌人のこと。主席編者は紀貫之なので、彼の主観的選抜なのだろうが、不自然なことがある。

古今集の序文は六人を褒めていないわけだ。内容的には、和歌は、柿本人麻呂と山部赤人という二大歌人の時に発達とし、次に前述の六人を評し、その他大勢という構造だが、ほめているともいえるのは僧正遍照と小野小町(といってもシニカルな褒め方)であとの4人は、心が入っていないとか、心はあるが言葉が少ない(つまり下手?)とか、商人のような服を着ているとか、薪をかつぐ山人のようとか、どうみても六歌仙の仙の字にはふさわしくない。

さらに、その六人の他は名前を上げるほどではない、とつれない。

ところで、在原業平はプレーボーイで有名だし、僧正遍照は小野小町のボーイフレンドで文屋康秀は小町に近付こうとして失敗している。

つまり、古今集もわからないことだらけだ。