谷崎潤一郎の初期作品集。『刺青』『少年』『幇間』『秘密』『異端者の悲しみ』『二人の稚児』『母を恋うる記』の短編7作。明治43年から大正8年まで、発表順に読んでいくことになる。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/41/73/00bf4b11cec65cc313a0557ddd8f7625.jpg)
まず、耽美的、性的倒錯、被虐的、王朝的・・そういった要素が次々に書き込まれていく。中でも『刺青』は老いた彫師が、街で見つけた美女に麻酔薬をかがせて意識が亡くなった状態で、背中に蜘蛛の図を入れてしまうという背徳的犯罪小説。『少年』は友人の住む洋館にいった少年が、いつの間に友人の姉の背徳的なSM趣味の餌食にされてしまう。『秘密』は主人公の男が、未亡人との秘密の密会に励むのだが、いつも車の中で目隠しをされて密会場所に運ばれるわけで、まさに江戸川乱歩の世界。
『異端者の悲しみ』は谷崎の若いころの自伝的作品と言われ、品性のない最低男が登場する。没落した休暇に育ち、親戚に学費を出してもらって大学にいくが、やる気もなく友人から金を借りまくって返さない。借りた相手が病死すると、ほっと胸をなでおろすという悪辣ぶりで、肺病で余命僅かな妹に罵声を浴びせたり、親とけんかをしたり。最後はさらに借金を重ね女郎屋通いを続け、数年後に小説家として大当たりする。
もっとも品性のない大学生を主人公としたのは谷崎だけではなく川端康成も同類だが、同じようなテーマでも川端康成が書くとノーベル賞とは・・
内容はともかく、谷崎潤一郎は小説がうまい。芥川龍之介のような知性的な巧みさではなく、芳醇であり熟成と腐敗が交じり合った香りが漂うのだ。果たして、谷崎文学をついばんでいるうちに大著『細雪』にたどり着けるかどうか。自信なし。
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まず、耽美的、性的倒錯、被虐的、王朝的・・そういった要素が次々に書き込まれていく。中でも『刺青』は老いた彫師が、街で見つけた美女に麻酔薬をかがせて意識が亡くなった状態で、背中に蜘蛛の図を入れてしまうという背徳的犯罪小説。『少年』は友人の住む洋館にいった少年が、いつの間に友人の姉の背徳的なSM趣味の餌食にされてしまう。『秘密』は主人公の男が、未亡人との秘密の密会に励むのだが、いつも車の中で目隠しをされて密会場所に運ばれるわけで、まさに江戸川乱歩の世界。
『異端者の悲しみ』は谷崎の若いころの自伝的作品と言われ、品性のない最低男が登場する。没落した休暇に育ち、親戚に学費を出してもらって大学にいくが、やる気もなく友人から金を借りまくって返さない。借りた相手が病死すると、ほっと胸をなでおろすという悪辣ぶりで、肺病で余命僅かな妹に罵声を浴びせたり、親とけんかをしたり。最後はさらに借金を重ね女郎屋通いを続け、数年後に小説家として大当たりする。
もっとも品性のない大学生を主人公としたのは谷崎だけではなく川端康成も同類だが、同じようなテーマでも川端康成が書くとノーベル賞とは・・
内容はともかく、谷崎潤一郎は小説がうまい。芥川龍之介のような知性的な巧みさではなく、芳醇であり熟成と腐敗が交じり合った香りが漂うのだ。果たして、谷崎文学をついばんでいるうちに大著『細雪』にたどり着けるかどうか。自信なし。