親の所得と学力の相関関係は?

2009-08-11 00:00:08 | 市民A
文科省の委託研究で、親の所得と学力とは相関関係があるとした推定には、もっと要因分析が必要と思う。

<学力>年収多い世帯の子供ほど高い傾向…文科省委託研究
8月4日19時32分配信 毎日新聞

年収200万円台の世帯と1200万円以上の世帯では、昨年の全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の平均正答率(小6国語B、算数B)に約20ポイントの差があることが、文部科学省の委託調査で分かった。一方、年収にかかわらず、親が「ニュースや新聞記事について子供と話す」「家に本がたくさんある」などと回答した世帯の子供ほど学力が高い傾向もみられた。

文科省の委託を受けた耳塚寛明・お茶の水女子大教授らの研究グループが、昨年12月~今年2月に全国の5政令市の小学校100校を対象に保護者約5800人にアンケートし、昨年4月のテスト結果との関係を調べた。

調査によると、基礎問題(A)と活用問題(B)のいずれも、年収が高い世帯の子供ほど正答率が高い傾向があった。最も差がついたのは算数Bで、200万円未満の世帯は42.6%、200万円台は45.7%に対し、1200万円以上1500万円未満は65.9%、1500万円以上も65.6%に達した。

塾や習い事など学校外教育への支出額と学力にも相関があり、全く支出のない世帯は、月5万円以上支出する世帯と比較して正答率が23~27ポイント低かった。

また、親自身の普段の行動を尋ねたところ、高学力層では「クラシック音楽のコンサートに行く」「お菓子を手作りする」などの回答割合が高く、低学力層では「パチンコ・競馬・競輪に行く」「カラオケに行く」などの回答割合が高かった。

耳塚教授は「家計だけが学力を決めるわけではないが、影響力は相当大きい」と分析する。


gakuryoku2まず、この耳塚教授だが、いわゆる「GOYO学者」のようだ。本件にとどまらず、いくつかの文科省の研究を請け負っている。


記事とは別途、グラフを入手したので、比べてみると、確かに、一見比例的に見える。が、一見比例的に見えても、原因と結果ということではなく、別のところに原因があって、その原因と比例的な相関関係があると、関係ない二つの事柄が相関しているように見えることがある。

gakuryoku1たとえば、グラフだけみても、例えば年収500万円前後と、900万円前後と1500万円前後には、穴があることがわかる。正答率が0%からのグラフでなく40%からのグラフなので、必要以上に差が大きく見えるが、大きくいって、年収500万円以下のグループ(X)と500万円から900万円のグループ(Y)と、年収900万円以上のグループ(Z)に分かれるように見える。

少し、角度を変えて考えると、小学校6年生の学力を考えるに、最大の差は、「受験」である。私立中学を受験する児童と公立高校に行く児童がいる。早い話が、大数の論理で考えるなら、所得格差の前に、私立中学か公立中学の進路差があるわけだ。当然ながら、一般論としては、私立中学を受験するためには、受験勉強をしなければならないのだから、学力は高くなるのが当然である。ただしあくまでも小学6年生の話だ。

論理的には、その後に私立中学に行くには所得が高くなければならないということになるのだろうが、それは直接的原因ではなく間接的原因である。所得が高くても公立にいって勉強もしない子もいるだろう。

さらに別角度で考えてみる。小6と言えば12歳である。親の年齢は40歳代前半だろうか。では、その年代で900万円以上(Y層)ということになると、大企業の下級管理職といったところだろう。1500万円以上(Z層)となると、特定の政策的保護業種ということになる。テレビ・大新聞・銀行・航空会社とかだ。

その人気企業に入るには、特定の優秀大学(大学院)を卒業しなければならないのだから、遺伝的要素も含まれるのかもしれない。

逆にいえば、500万円未満の層(X)は、こちらも遺伝的要因で、親の収入が少ない可能性がある。

上の層は遺伝的要因+中学受験のダブル効果があり、下の層はネガティブ要因が重なる。人数としては大多数であるY層は遺伝的要因はあまり関係なく、どこまで無理して私立中学に入れられるか、というところに、こどもの将来がかかっている、ということになる。


となると、抜本的な構造が変わらない場合は、Y層の親はどうすればいいかというと、どうやって学費を捻出するか、という腕前にかかってくるわけだ。こどもが生まれた時から中学に入学する日は決まっているのだから、その間にどのように学資を貯めたり、祖父から頂戴したり、有利な奨学金を手に入れるための研究をするとかだ。


一方、これを政策的な課題と考えるなら、ある一つの方法がある。

中学校を義務教育からはずすことである。ただし、中学校バウチャーみたいなものを配布して、ほぼ同額(あるいはなだらかな傾斜)で中学教育が受けられることにすること。

現在、義務教育でもないのに高校進学率は97%である。実質的には高校も義務教育なのである。だから中学校を義務教育からはずしたところで、ほとんど、何も起きないだろう。ただし、受験勉強を行わなければ、レベルの低い中学に行くわけだから、基本的には受験勉強は行われる。その場合、私立中学の学費そのものが安くなるのだから、収入と学力の関連性は、かなり弱まるのではないか、と思えるのである。

ところで総選挙。夏なのに大型サンタクロースが二人もいて、子供のために(こどもの親の二票が目当てだ)プレゼントのバラマキ政策が行われるのだろうが、せいぜい私立中学の授業料が値上げになるだけではないだろうか。