樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

いやー、スゴかった!

2006年10月17日 | 木のミュージアム
家の近くに京都大学宇治キャンパスがあります。週末にその公開イベントがあったので行ってきました。
ここには、地震や台風などの際によくテレビに出てくる防災研究所をはじめ化学系や理工学系の研究所があります。その研究成果を一般に公開しようという催しで、地滑りや水害のシミュレーション、「レーザーで遊ぼう」など子供連れで楽しめる多彩な内容でした。私の目当ては「材鑑調査室」という木材の研究室と、松枯れ病に関する講演会。

      
 (樹木の標本室。隣には1万5千種の木材サンプルを集めた部屋がありました。)

行ってビックリ、予想以上にスゴい所でした。京都や奈良のお寺で使われていた古材の標本、屋久杉の標本、以前記事にした世界一重い木(リグナムバイタ)と軽い木(バルサー)のサンプルなどなど、いつも本で読んでいる木の実物が目の前にズラ~っと並んでいます。言わば、私の憧れの世界が広がっているのです。
私はヨン様を眼前にしたオバサマのようにボーっとなってしまって、初日はじっくり観察できなかったので、日曜日にもう一度行ってきました。いろいろ勉強になりましたが、その情報は後日の記事で少しずつ書くとして、別の場所にスギを使ったエコハウスの実験棟があったのでご紹介します。

      
      (全面にスギを使ったエコハウスの実験家屋)

スギの新しい用途を開発するために建てられた家屋で、壁も屋根も柱も階段も全部スギです。温度や湿度を測るセンサーがセットされていて、担当の若い研究員が「普通の家屋よりも冬暖かく、夏涼しく、湿度も自然に調節されます」と説明してくれました。
こういう地道な研究が実って、日本の林業が再生されると嬉しいですね。期待しましょう。
しかし、家のすぐ近くにこんな研究施設があり、それが毎年公開されているとは知りませんでした。入場無料で、駐車場もあって、アンケートやスタンプラリーに応じればお土産までもらえて、なかなか結構なイベントでした。京大宇治キャンパスの皆様、ありがとうございました。来年も行こうっと。
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親子の情を育む実

2006年10月16日 | 木と歌
最近、歌の中の樹や鳥の記事が多いですが、またまたNHKの歌番組で見つけました。歌のタイトルは『里の秋』。知ってる方は、歌ってみてください。さん、ハイ! 
♪~静かな静かな 里の秋 お背戸(せど)に木の実の 落ちる夜は ああ母さんとただ二人 栗の実 煮てます いろり端(ばた)・・・。
「お背戸」は裏口のこと。そこに落ちる木の実は、きっと栗や栃の実でしょう。その音を聞きながら、いろりで栗を煮る。
私の感覚では「煮る」は「茹でる」と違って味をつけて料理することなので、栗の料理を作っているのかなと思ったのですが、関東出身の妻は「煮る」=「茹でる」=煮沸することだと言います。普通に栗を茹でている情景のようです。

      
(栃の森に落ちていた栗。小動物が食べるので実の入っているものは少ない。)

先日訪れた栃の森でも栗や栃の実がたくさん落ちていました。天然のクリは柴栗とか山栗と呼ばれますが、スーパーで売っているクリと植物学的には同じ種類です。実が大きくなるように品種改良されていますが・・・。

この歌の2番には鳥が出てきます。「明るい明るい 星の空 鳴き鳴き夜鴨(よがも)の 渡る夜は ああ父さんのあの笑顔 栗の実食べては思い出す」。
そうなんです、カモは夜でも飛んで移動するのです。私も一度だけ、カルガモが夜に鳴きながら飛んで行くのを聞いたことがあります。カルガモマガモは「グェグェ」というカエルのような声で鳴くので、美しいとは言えませんが・・・。

      
      (近所の果樹園の栗。大きくておいしそう。)

そのカモの声を聞きながら栗の実を食べてお父さんを思い出す、というのが2番のシーン。これと逆の歌が万葉集にあります。
「瓜食(は)めば子ども思ほゆ 栗食めばまして偲ばゆ・・・」。瓜を食べても栗を食べても子どものことが思い出される・・・という山上憶良(やまのうえのおくら)の歌です。こちらは父親が栗を食べながら子どもを思い出しています。栗の実は親子の情を育むようですね。
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バード&ツリーウォッチングの原点

2006年10月13日 | 樹木
京都の市街地の北部に深泥池(みどろがいけ)という池があります。名前だけ聞くと汚そうですが、浮島があったり、珍しいトンボや水生植物が生息することから、国の天然記念物に指定されています。

      

日本野鳥の会京都支部では、数年前まで毎月ここで定例探鳥会を催していました。現在は環境が変化して鳥が少なくなったために随時開催になっています。
私もバードウォッチングの初心者だった頃、よく探鳥会に参加したり、単独で訪れました。京都のバードウォッチャーのメッカというか、原点みたいな場所です。
この池の奥にコナラ林があり、当時その林に入るとなぜか気持ちが吸い取られるようでした。漠然と「コナラ林っていいな~」と思ったものです。

      
  (久しぶりに訪れましたが、落葉樹林ならではの清々しさは変りません。)

振り返ってみれば、私が樹木に興味を持ち始めたきっかけの一つがこのコナラ林。現在の家に庭を作ったときも、コナラを2本植えました。
数年後にツリーウォッチングを始めた頃、コナラの兄貴分にミズナラという木があり、標高の高い所にしか分布しないこと、コナラには葉柄(枝と葉をつなぐ軸)があるがミズナラにはないことなどを覚えました。
コナラはイシナラと呼ばれるほど硬い木で、薪炭材としてはクヌギに継ぐ優良材だそうです。また、昔はビール樽にも使われたようで、ウィスキー樽に使われるミズナラとともに、兄弟で酒飲みの私たちを喜ばせてくれています。
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トチノキは慌てん坊

2006年10月12日 | 木と言葉
関東では慌て者のことを「トチメンボウ」と言い、江戸落語では時々「このトチメンボウめ!」などと使われます。
また、一般的に失敗することを「トチる」とか、早飲み込みすることを「早トチリ」と言います。これはひょっとして、私の好きなトチノキに関係があるのかなと思っていましたが、案の定でした。
栃の実を原料にした栃麺を作るとき、手早く麺棒で広げないと固まってしまうので、動きがせわしなくなる。その様子に例えて、慌て者のことを「栃麺棒」と言うらしいのです。

      
      (トチノキの葉と実と殻。10月8日栃の森で撮影。)

その「栃麺棒」から「トチめく(あわてふためく)」という言葉が生まれ、やがて「トチる」になったようです。また、演劇の世界では、台本のきっかけよりも早く舞台に出てしまうことを「早トチリ」と言うようになりました。
トチノキにとっては迷惑な話ですが、樹木と言葉に関心のある私には面白い話です。ただ、栃麺は見たこともなく、調べても出てきません。昔はそういう麺があったのでしょうか。
ちなみに、トチノキとは全く関係ありませんが、演劇の世界ではいい席のことを「とちり」と言うそうです。席順の「いろはにほへとちりぬる・・・」のうち、7~9 番目の席が一番見やすいからだそうです。
先日、3ヵ月ぶりに「栃の森」に行ってきました。今年は「実らない秋」のようで、ブナの実も少なく、サワフタギの青い実やナナカマドの赤い実はまったく見られませんでした。クマ出没のニュースが増えそうです。一方、クリやトチの実は例年どおりのようでした。
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柿もみじ

2006年10月11日 | 樹木
いよいよ、紅葉に目を奪われる季節です。
私は以前から、「樹木全体で見ればカエデの紅葉がきれいだけど、葉っぱ1枚で見れば柿がいちばん美しい」と思っていました。赤、黄色、茶色、緑などで染められた葉は、抽象絵画を見ているようです。

      

古代の日本人もそう思っていたようで、昔は「柿もみじ」という言葉がありました。和歌にもたくさん詠まれていて、寂蓮法師の次の一首は情景が目に浮かぶようです。
山里は 柿の紅葉に 鳩鳴きて 時雨も降りぬ 風も寒けし

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花と柳

2006年10月10日 | 木と文化
日本舞踊には「花柳(はなやぎ)流」という流派があります。また、色街のことを「花柳(かりゅう)界」と言いました。
「花柳」は赤い花と緑の柳を並べて美しいことの例えに使う言葉で、中国の詩にも美しい風景の描写に「花柳」がよく登場するそうです。花柳→美しい→美女→芸者・遊女と転化して、いつしか色街を意味するようになったのでしょう。
日本初の公認の遊廓は京都の島原にありました。現在は西本願寺の西にありますが、最初は二条柳馬場(京都市街のほぼ真ん中)に置かれて「柳町」と呼ばれました。その後、六条三筋町(東本願寺の北側)に移され、さらに現在の場所に移されたのです。
その移転が九州の島原の乱の直後だったので、その騒動になぞらえて「島原」と呼ぶようになったそうです。

         
          (島原の「出口の柳」)

以前から、「島原」という地名は京都の他の地名と匂いが違うなあと思っていましたが、そういう事情があったんですね。
島原遊廓の正門にあたる大門には、現在も「出口の柳」が植えてあります。これは、二条柳馬場にあった頃からの遺風で、何度か植え替えられながら現在も立っています。
江戸の吉原にも「見返り柳」があり、それは島原の「出口の柳」を模したものだそうです。また、大阪には柳小路という遊廓が、九州の博多にも柳町という色街があったそうですが、多分、京都の二条柳馬場の「柳町」がルーツになっているのでしょう。

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樹と鳥の歌

2006年10月06日 | 木と歌
先日、何となくテレビを観ていたら、木村カエラが「TREE CLIMBER」という歌を歌っていました。
樹とかTREEという言葉には敏感なので、耳をそばだてて聴いていましたが、歌詞の中には樹のことは出てきませんでした。子どもの頃の自分をモチーフにした歌らしいので、昔はよく木登りして遊んでいたのでしょう。
若い人向けの音楽はほとんど興味ないですが、木村カエラは言語感覚が新鮮で、仕事柄ちょっと気になる存在です。「リルラ リルハ」(Real Life Real Heartの略)とか「Magic Music」とか、タイトルの語感も面白いです。

しばらく後、今度はBIRDという名前の歌手が、しかも京都出身の歌手がいるとテレビで知って、これまたひっかかりました。1999年に発売した「BIRD」というアルバムが70万枚も売れて日本ゴールドディスク新人賞を獲得したらしいです。
彼女のオフィシャルサイトやブログのタイトルが「BIRD WATCH」。彼女自身がバードウォッチャーなのかどうかは分かりません。

そして、今度はNHKの『懐かしの歌謡曲』」を観ていたら、樹と鳥が同時に登場する歌を2曲キャッチしました。一つは「別れの一本杉」。亡くなった春日八郎に代わって、作曲家の船村徹がしみじみと歌っていました。

         
        (別れの一本杉って、こんな感じですかね)

「泣けた泣けた こらえきれずに泣けたっけ あの娘と別れた哀しさに 山のカケスも鳴いていた 一本杉の 石の地蔵さんのよ 村はずれ~」。杉とカケスが登場します。昭和30年の歌なので若い人はご存知ないでしょうが、私は小学生の頃にラジオでよく聴きました。
杉の巨木とお地蔵さんがある峠で若い男女が別れ、杉の木に止まっていたカケスが一声鳴いた、というシーンでしょう。でも、カケスは「ジャー」とか「ギャー」と鳴くので、こういうしんみりしたシーンには似合わないですね。

もう一つは「柿の木坂の家」。これは昭和32年に青木光一が歌った曲です。
「春には柿の花が咲き 秋には柿の実が熟れる~」、2番は「春には青いメジロ追い 秋には赤いトンボとり~」。メジロを追うということは、多分トリモチでメジロを捕まえることでしょう。のどかな田園風景を歌っていますが、現在では私も所属する日本野鳥の会がうるさいですから、トリモチの使用や野鳥の捕獲は禁止です。

小学生の頃はラジオから流れてくる歌謡曲を聴いていましたが、ハイティーンになるとこの手の音楽を否定して、やれビートルズだロックだといわゆる不良音楽に走りました。でも、今は素直に聴けます。年齢のせいでしょうか、懐かしさのせいでしょうか。

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松で血液サラサラ

2006年10月05日 | 木と医薬
ペットボトルのお茶が普及して、宇治市民としては嬉しいような、でも宇治茶じゃないので嬉しくないような・・・。
最近は、健康にいいお茶とかダイエットに効果的なお茶とか、いろんなタイプが発売されています。私もつい先日知ったことですが、サントリーの「フラバン茶」って松のエキスが入っているんですね。知ってました?
「フラバン」つまりフラバンジェノールとは、フランス南西部に生育する海岸松(かいがんしょう)というマツの樹皮から抽出されたポリフェノール成分です。このフランスのマツは、日本のマツと違って、ポリフェノール含有量が多いために樹皮の色が紫色だそうです。

         
     (「宇治茶まつり」が行われる興聖寺の茶筅塚のマツで撮影。)

フラバンジェノールの発見はネイティブアメリカンの知恵が発端で、16世紀にフランスのジャック・カルティエが北米を探検した際、マツ科の樹木が健康にいいと原住民に教えられたことが始まりだそうです。その後、ボルドー大学の博士がフランス海岸松の厚い樹皮に健康にいい成分が含まれていることを発見し、以来30年間フランスでは健康維持成分として利用されてきたそうです。
私は機能食品とか機能ドリンクはあまり摂らない方ですが、マツの樹皮の成分と聞いて買ってきました。サントリーを贔屓(ひいき)にしていることもあります。敬愛する作家、故・開高健がサントリーのコピーライター出身なので、ビールをはじめ飲み物は基本的にサントリーにしています。
話がそれましたが、フラバンジェノールには抗酸化作用があって血液をサラサラにするとか、コラーゲンの生成を促進して美肌効果があるとネットの記事には書いてあります。美肌はさておき、血液サラサラを期待して飲んでみました。けっこうおいしくて、しっかりお茶の味がします。
でも、やっぱりお茶は、宇治でも静岡でも八女でもいいですが、茶葉を急須に入れて、お湯を注いで、じっくり蒸らして、お気に入りのお湯飲みで飲むのが一番おいしいです。
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ノアの箱舟もキューピッドの弓も

2006年10月04日 | 木の材
以前、野球のバットを製造する際に出るアオダモの端材で作ったボールペンがある、とguitarbirdさんのブログで知って私も買いました。商品名は「ジャストミート」。私はシャーペンにしました。

      

現在、松井やイチローをはじめプロ野球選手が使っているバットは、主に北海道産のアオダモで作られています。昔は本州産のトネリコを使っていたそうですが、供給不足になってアオダモに切り替わったようです。トネリコもアオダモもモクセイ科トネリコ属、材質はほぼ同じだそうです。
トネリコ属の木は欧米ではash(アッシュ)と呼ばれ、バットのほかアイスホッケーのスティックやボートのオールなどに使われています。スポーツには欠かせない木材なのです。

そのほか、エレキギターのボディなどにもホワイトアッシュがよく使われているようです。さらに、ある樹木学者は「ノアの箱舟について、以前はイトスギで造ったという説があったが、現在ではイエローアッシュというトネリコ属の木で造ったという説が有力である」と書いています。
どんな根拠があるのか知りませんが、イトスギ説を否定する何かがあるのでしょう。ついでに、キューピッドが持っている弓もトネリコで作られているそうです。

トネリコという妙な名前には由来があります。この樹の枝にはカイガラムシがついて、白い蝋物質を出すそうですが、それを戸の溝に塗ると滑りがよくなるので「戸塗り木」。「木」は「木霊(こだま)」のように「こ」とも発音するので、「トヌリコ」から「トネリコ」になったという説です。
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車に強い車輪梅

2006年10月03日 | 街路樹・庭木
みなさんも高速道路を利用されることがあると思いますが、中央分離帯に植えてある樹を見たことがありますか?
私の知る限り、シャリンバイが多いです。理由は簡単、排気ガスに強いから。
シャリンバイやウバメガシなど、もともと海辺で育った樹木は塩分を排除する仕組みを持っていて、それが排気ガスも排除するようです。そのほかに、手入れが不要とか大きくならないといった特徴を持つ樹が中央分離帯に植栽されています。
高速道路の中央分離帯だけではなく、車の通行量の多い歩道脇などにも植えてあります。先日、大阪の街を歩いていたら、大きな交差点の角に植えてありました。

      
      (大都会の真ん中で、健気にも実をつけています。)

「車輪梅」の名は、葉が車輪のように広がってつくためと、花が梅に似ているから。昔から車には縁の深い樹だったのです。
運転中はだめですが、後部シートに乗ったときか渋滞に巻き込まれたとき、一度中央分離帯の樹を見てやってください。排気ガスにまみれながら、健気に私たちの目を楽しませてくれています。
奄美大島では、このシャリンバイを「テーチ木」と呼びます。皮と根を乾燥させて煎じた汁で染めたのが大島紬。シャリンバイにはタンニンが多いので、あの独特の深い色が出るそうです。伊豆七島では、シャリンバイの樹液を魚の網を染め、実は食用にするそうです。
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