樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

トイレの匂い

2006年10月18日 | 木と香り
5、6年前、樹の香りに関して面白いシーンに出くわしました。
お母さんに手を引かれた小さな男の子がうちの前を通りかかったとき、「トイレの匂いがする」と言うのです。「え? うちは水洗だから匂いなんかしないはず」とびっくりしてあたりを見回すと、向かいの家のキンモクセイが満開でした。
トイレの消臭剤にキンモクセイの人工香料が使ってあるので、男の子はそれがトイレの匂いだと思っていたのです。それが分かって、お母さんも笑っていました。

      

今、ちょうどキンモクセイが満開で、散歩していてもあちこちからいい香りが漂ってきます。
5月25日の記事に書きましたが、中国では「桂」の字がキンモクセイを意味します。月にはキンモクセイの大木があり、今の時期は花が満開になるので月が輝くという伝説もあります。また、有名な観光地「桂林」はキンモクセイが多い場所です。

      

日本には中国から渡ってきたのですが、雄株だけが移入されたようで、花は咲いても結実しないので挿し木で増やしているそうです。ということは、日本中のすべてのキンモクセイは同じDNAだということになります。
江戸時代の学者・新井白石はこの樹が好きで、引越しするたびに移植して手元から離さなかったそうです(「木犀」としか書いてないのでギンモクセイかも知れません)。
現在も多くの家に植えられていますが、あの男の子にとってはキンモクセイは嫌な匂いなのでしょうね。
コメント (2)
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