樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

木の魚

2006年10月26日 | 木と楽器
お坊さんが読経するとき木魚を叩きます。
「木」と名がつくものは何でもひっかかる私は、以前から「なぜ木の魚と書くのだろう?」と気になっていました。調べてみると、なかなか面白いことが分かりました。
木魚は「魚鼓」「魚板」とも言い、もともとは魚の形をした鳴り物でした。なぜ魚かというと、魚は昼も夜も目覚めている(ように見える)ので、「不眠勉学を諭し、怠惰を戒めたから」だそうです。「魚みたいに夜も眠らずに修行しなさい」という厳しい教えなんですね。

      

上の木の魚は、以前にご紹介した万福寺にあります。寺の説明によると「木魚の原形」で、現在も時を知らせるのに使っているとか。けっこう有名で、宇治の観光ガイドにはこの木魚がよく出てきます。このタイプは、中がくり抜いてあるのを「魚鼓」、くり抜いてないのを「魚板」と言うそうです。
私たちが知っている木魚も、もともとは魚の形をしていたようですが、次第に鯱(シャチ)がモチーフになったり、「魚が化して龍となる」の故事に習い、凡から聖に至る意味から龍が彫られるようになりました。

      

上の写真も万福寺の本堂で見つけた木魚ですが、手前の玉を2頭の龍が左右からくわえているというモチーフです。お盆に帰省した際、実家で見た木魚も同じモチーフでした。
日本には1652年頃に禅の渡来とともに伝わり、禅、天台、浄土などの諸宗で使用されるようになりました。その頃は京都が主な産地でしたが、その後は尾張で盛んに作られるようになり、明治以降は尾張が一手に引き受けているようです。最近は、この世界でもmade in chinaが幅を利かせているとか。
材はほとんどがクスノキ。粘りがあって割れにくく、軟らかくて彫りやすいので仕上がりがいいらしいです。万福寺の木魚も実家の木魚も、匂いをかいだらクスモキの匂いがしました。
韓国の木の本には、「木魚にはアンズの木を使う」と書いてあります。所変れば品変る、ですね。
コメント (2)
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