樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

伏見の蘇鉄

2006年10月27日 | 木と歌
車で15分くらいのところに、御香宮(ごこうぐう)という神社があります。日本酒で知られる伏見の産土神(うぶすまがみ)として、地域の人々の信仰を集めています。
このあたりは豊臣秀吉が築いた伏見城の城下町で、京都の中心地とは少し違った伝統や文化を誇っています。現在は京都市伏見区ですが、以前は伏見市として独立していた時期もあったくらい。
御香宮神社の表門は伏見城の大手門を移築したもので、重要文化財に指定されています。そう思って見ると、神社の門にしては派手な彫刻やカラフルな色彩が施してあります。

      

また、御香水(ごこうすい)という湧き水も有名で、毎日大勢の人々が水を汲みに来ています。伏見はもともと「伏水」と書き、昔はその湧き水で日本酒を造ったとか。現在は、環境省の「名水百選」に選ばれています。

      

ここに蘇鉄の巨木があるというので、見に行ってきました。
確かに大きいです。地際から私のウエストくらいの太さの幹が10本ほど出ています。案内板によると、「京都付近では冬期に覆いをする必要があるが、このソテツは覆いなしで越冬、開花結実しており、ソテツの生育域を考えるうえで貴重な資料になっている」とのこと。

      

樹齢は明らかではありませんが、本殿建築時(1605年)からそれほど下らない時期と推測されています。現在は京都市の天然記念物です。
古い話ですが、田端義夫の『島育ち』という歌に、「赤い蘇鉄の実の熟れる頃 加那も年頃 加那も年頃 大島育ち」という一節があります。赤い実が熟れるのは、ちょうど今ごろです。

           
       (ソテツの実はピンポン玉くらいの大きさです。)

ソテツは裸子植物なので、正確には実ではなく種子ですが、奄美大島ではこの実(種子)を何度も水にさらして毒を除去し、餅にしたり、味噌や醤油、焼酎の材料にするそうです。幹にもデンプンが含まれているので、飢饉の時には除毒して団子やお菓子にして食べたそうです。

コメント (4)
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