樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

トチノキは慌てん坊

2006年10月12日 | 木と言葉
関東では慌て者のことを「トチメンボウ」と言い、江戸落語では時々「このトチメンボウめ!」などと使われます。
また、一般的に失敗することを「トチる」とか、早飲み込みすることを「早トチリ」と言います。これはひょっとして、私の好きなトチノキに関係があるのかなと思っていましたが、案の定でした。
栃の実を原料にした栃麺を作るとき、手早く麺棒で広げないと固まってしまうので、動きがせわしなくなる。その様子に例えて、慌て者のことを「栃麺棒」と言うらしいのです。

      
      (トチノキの葉と実と殻。10月8日栃の森で撮影。)

その「栃麺棒」から「トチめく(あわてふためく)」という言葉が生まれ、やがて「トチる」になったようです。また、演劇の世界では、台本のきっかけよりも早く舞台に出てしまうことを「早トチリ」と言うようになりました。
トチノキにとっては迷惑な話ですが、樹木と言葉に関心のある私には面白い話です。ただ、栃麺は見たこともなく、調べても出てきません。昔はそういう麺があったのでしょうか。
ちなみに、トチノキとは全く関係ありませんが、演劇の世界ではいい席のことを「とちり」と言うそうです。席順の「いろはにほへとちりぬる・・・」のうち、7~9 番目の席が一番見やすいからだそうです。
先日、3ヵ月ぶりに「栃の森」に行ってきました。今年は「実らない秋」のようで、ブナの実も少なく、サワフタギの青い実やナナカマドの赤い実はまったく見られませんでした。クマ出没のニュースが増えそうです。一方、クリやトチの実は例年どおりのようでした。
コメント (4)
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