樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

お印

2006年09月19日 | 木と文化
先週、天皇家に誕生した新宮の「お印」が高野槙(コウヤマキ)に決まったとマスコミで報道されました。
みなさんもそうでしょうが、「お印」というしきたりがあったことも、それが樹木や草花で決められていたことも、全く知りませんでした。

      
      (悠仁宮のお印、コウヤマキ。)

樹木マニアとしては世間の注目が木に集まることは嬉しいのですが、「?」と思うこともありました。ネット上には早くも、誕生祝いにかこつけて「コウヤマキ」の苗木を販売する商魂逞しい業者が出没しています。
また、天皇陛下のお印が「榮(えい)」で、「これはキリの別名」という情報がありましたが、私は初耳です。別のメディアは「榮は草花が生い茂る様子」と書いています。どちらが本当なんでしょう。
あるメディアは、「ビオラを演奏する皇太子さまのお印は梓(あずさ)で、演奏仲間と結成した楽団には梓管弦楽団と命名」と記していました。以前にもご紹介しましたが、梓は日本では「ミズメ」、中国では「キササゲ」を意味します。この記述では、ビオラと梓に因果関係があるようですが、意味不明です。

         
      (日本での梓はミズメ。幹も葉もサクラによく似ています。)
         
      (中国での梓はキササゲ。帰省した際にミニ樹木園で撮影。)

私の推測ですが、古来「梓弓(あずさゆみ)」と言われたように、ミズメは弓に使われたので、ビオラを弾く弓に因んでお印に選ばれたのではないでしょうか。
しかし、ある新聞には宮内庁の資料から作成したというそれぞれの植物のイラストが掲載されていて、皇太子の梓はキササゲになっていました。なぜ、ビオラを演奏する皇太子のお印がキササゲなのか、よく分かりません。
宮内庁発表のニュースリリースをそのまま掲載したのか、いくつかのメディアは全く同じ記事でした。樹木マニアとしては、もっと正確で分かりやすい情報を流してほしいと思いました。
なお、悠仁(ひさひと)宮のお印のコウヤマキについては、誕生とは逆の話題ですが以前にご紹介しました。また、コウヤマキはお風呂の材料としてヒノキ以上に重宝されていて、有名な老舗旅館のお風呂はコウヤマキ製だそうです。
コメント (8)
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