樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

歴史的建造物の危機

2006年09月01日 | 木造建築
自宅からほど近い「桃山御陵」は、明治天皇と皇后のお墓として知られています。そのすぐ南側に、明治天皇の忠臣であった乃木希典(のぎまれすけ)を祀った乃木神社があります。
案内板によると、この門の扉板は、台湾総督であった乃木を記念して台湾にあった樹齢3,000年のヒノキを使ったもので、幅1.8mの1枚板だそうです。何かと話題の多い靖国神社でさえ、雑誌で見る限り門扉には4枚の板をつないでいますから、1枚板というのは珍しいのでしょう。

         

ヒノキは日本固有種で、台湾にあるのはタイワンヒノキ。近年、国内ではヒノキの大木が入手できないため、寺院や神社の修理・再建ではタイワンヒノキを使うケースが増えています。1976年に再建された奈良の薬師寺金堂の心柱をはじめ、平安神宮の本殿、明治神宮の鳥居、国立能楽堂などにもタイワンヒノキが使われているそうです。

タイワンヒノキが分布しているのは、台湾中部の玉山あたり。日本が占領していた頃は新高山と呼んでいた山で、標高は3,997m。戦時中は日本の最高峰は富士山ではなく、この玉山だったのです。

       

日本のすべての歴史的建造物は、いずれ再建する時期を迎えます。でも、昔と同じような国産のヒノキの大木を使うことはもう不可能です。海外に頼らざるをえないのですが、台湾でも大木が減ってきたので保護政策がとられており、伐採するには当局の許可がいるそうです。倒木さえ入札でしか手に入らないとか。
伝統的な建築技術の継承もそうですが、日本の歴史的な建造物にとって木材をどう確保するかが大きな課題になっています。乃木神社の扉も、1枚板での修理や再建はもう無理でしょう。
コメント (2)
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