樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

世界最高級の木材で建てた寺

2006年09月21日 | 木造建築
日本で最も優良な木材はヒノキでしょう。一方、世界で最も優良とされている木材はチークとマホガニー。チークは東南アジア産、マホガニーは中南米産ですが、どちらも最高級の家具やインテリア装飾材に使われます。
そのチークで建てられたお寺が宇治市にあります。黄檗山万福寺(おうばくさんまんぷくじ)。曹洞宗、臨済宗とともに日本三禅宗に数えられる黄檗宗の総本山です。開山は1661年(江戸時代)ですから、それほど古くはありません。

      

ここは中国風の寺院建築として、また煎茶発祥のお寺として知られています。写真のような卍くずしの勾欄(こうらん)などがあって、境内には異国情緒が漂っています。
チーク材が使われているのは本堂。パンフレットには「日本では唯一最大のチーク材を使った歴史的建造物です」と書いてあります。私にはチーク材を見分ける眼はありませんが、一般の寺院によく使われるヒノキと少し違って色も赤く、木目も細かいように見えました。

      
      (チーク材で建てられた本堂)

木の本には、ある貿易商がオランダ人から入手したものを寄進した材と、徳川幕府が下賜した材がある、と書いてあります。テレビで時々、象が材木を運んでいる東南アジアのシーンが映りますが、ああやって運ばれたチーク材を船に積んではるばる日本まで運んできたのでしょう。
チークは腐りにくく、シロアリやフナクイムシにも強いので、特に船の甲板には最適とされました。家具や内装材にしても、年月が経つにつれてロウ状の成分を出すため独特の色と艶になるそうです。

         
        (本堂の柱。ヒノキに比べると赤味が強い。)

私たちがチーク材を目にすることはほとんどありませんが、会議用の折り畳みテーブルにはチークのプリント合板が張ってありますから、模様だけはみなさんもご存知のはずです。
こうした貴重な天然材の共通の運命ですが、蓄積量が激減したため、現在はタイでは丸太の輸出が禁止され、ミャンマーでもわずかしか伐採できないので、チーク材はますます高価になっているようです。
コメント (4)
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