樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

柿が落ちる

2006年09月20日 | 木と言葉
先週、大阪の天満宮に上方落語専用の寄席「繁昌亭」が竣工し、現在、杮(こけら)落とし公演が行われています。
多分みなさんもそうでしょうが、私は以前から「なぜ、竣工記念に柿(カキ)を落とすのだろう?」と疑問でした。最近、木の本を読んでいて、その「?」が氷解しました。

      
      (この柿の実はまだ落ちそうにありません。)

「こけら」とは木の屑のこと。建築業界では、工事が終って鋸や鉋の屑を掃除することを「こけら落とし」と言うところから、竣工を意味していました。それが、いつしか劇場などが完成して最初に行う興行を「こけら落とし」と表現するようになったそうです。
私の推測ですが、「木」は「木霊(こだま)」とか「木っ端微塵(こっぱみじん)」と言うように「こ」とも言います。また、「虫けら」のように、小さいものや取るに足りないものを「けら」と言います。つまり、「こけら」は「木の小さいもの」という意味の古語だと思います。

で、「なぜ柿なのか?」ですが、現在の漢字の「柿」は元々はカキではなく「こけら」のこと。カキはパソコンの漢字にはありませんが、「柿」によく似た別の字だったようです。
現在ではそれが混同されているので、「柿」でカキも「こけら」もまかなっています。興味のある方はこちらをどうぞ。
なお、「杮(こけら)葺きの屋根」も木片、つまり板で葺いた屋根という意味です。

柿が落ちると言えば、京都の嵐山に「落柿舎」という史跡があります。松尾芭蕉の弟子の去来が隠居した家として知られています。この名前は、ある年にこの家の柿がたくさん成ったので商人に売る約束をしたものの、強い風のために一夜のうちに全部落ちてしまったという話に由来します。
現在は茅葺きの小さい家屋と柿の老木が1本あるだけですが、本来の落柿舎は別の場所にあって敷地も広かったらしく、柿の木が40本もあったそうです。
コメント (4)
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