樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

線路の下の力持ち

2006年07月10日 | 木の材
昨日訪れた「栃の森」では、クリの花が満開でした。

      

クリと言えば、ほとんどの方は栗の実を思い浮かべるでしょう。
私は、本で「クリは鉄道の枕木に使われた」という記事を読んで以来、実よりも木材の方が気になっていました。

          
 (クリの樹皮。葉がよく似るクヌギやアベマキに比べてひび割れの間隔が粗い。)

クリは腐りにくい木で、縄文時代の家屋にはクリの柱が使われていたそうです。当時は、石の基礎の上に柱を置くのではなく、地面に掘った穴に柱を立てる掘立式。だから、腐りにくい木材でなくてはならなかったのです。

青森県の三内円山古墳では、クリの柱だけでなく、燃え残った炭のクリ、ゴミ捨て場ではたくさんの栗の実が発見されています。つまり、建築材料や燃料、食料としてクリは不可欠でした。周辺にはクリの栽培林もあったようです。

腐朽に強い木ですから、西洋から鉄道が導入された際、枕木として真っ先に採用されたのでしょう。現在はほとんどがコンクリート製ですが、軽くしたい鉄橋や、音を抑えたいポイント切り換え部分、レールの継ぎ目では今でも木製の枕木が使われています。

         
(近くのJRの線路。手前の鉄橋部分の枕木は木製ですが、クリかどうかは不明。)

岐阜市には現在も木製の枕木メーカーがあり、約100社の日本の鉄道会社に納入しているとか。しかし、クリは入手困難で、今では出荷量の約1割。ブナやナラに防腐剤(クリには不要)を注入したものや、輸入材が活躍しているそうです。
ちなみに、日本の枕木のサイズは2100×200×140mm。明治時代にイギリスから鉄道技術を輸入して以来、このサイズで統一されています。

コメント (4)
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