樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

木枯らし紋次郎の楊枝

2006年07月13日 | 木と飲食
以前、「高級な楊枝はクロモジ」とご紹介しましたが、「楊枝」は楊(やなぎ)の枝と書きます。ヤナギの漢字には「柳」もありますが、柳はシダレヤナギの仲間、楊はハコヤナギの仲間を意味します。箱を作るのでこの名があります。

シダレヤナギは「銀座の柳」をはじめ街路樹によく使われているのでご存知でしょう。ハコヤナギは、ヨーロッパでは学名から「ポプラ」、日本では「ヤマナラシ」と呼ばれています。ヤマナラシはご存知なくても、ポプラ(セイヨウハコヤナギ)はどこかでご覧になっていると思います。

         
   (白い樹皮に小さな菱形の皮目があるのがヤマナラシの特徴)

ヤマナラシもポプラも、葉柄(葉と枝を繋ぐ軸)の断面が楕円形になっています。このため、かすかな風でも葉が左右にひらめき、ハラハラ、カラカラと音をたてます。だから「山鳴らし」。
ハコヤナギ類を英語でアスペンと言いますが、おしゃべりな女性のことを「アスペン・リーフ」と表現するそうです。日本でも欧米でも、うるさい樹と思われているんですね。

      
(他の樹の葉が揺れないような微風でも、ヤマナラシの葉だけはヒラヒラします。)

さて、楊枝を使う習慣は古代インドで始まり、その樹種もインドボダイジュでした。枝の先を噛み砕いてブラシのようにしてから、歯磨きとして使っていたようです。それが中国に伝わり、インドボダイジュの代わりにハコヤナギ類で作るようになったので「楊枝」という言葉が生れたのです。
枝という字からも分かるように昔の楊枝は今よりも大きく、9cmから30cmまでいろいろあったようです。そう言えば、「木枯らし紋次郎」も長い楊枝をくわえていました。あれも、ハコヤナギ(=ヤマナラシ)で作られていたんでしょうか。
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする