太閤と百姓

2014-12-15 00:00:24 | 書評
taiko太閤とは豊臣秀吉のこと。本書は基本的には「秀吉批判」の書である。題名の「太閤と百姓」というのは、政権は豊臣であっても、実際の社会は百姓が支えていて、その基礎的な生産力の上に武士の頭領争いがあって、そのトーナメントの勝者がたまたま秀吉だったという主旨の内容を意味するのだが、百姓問題は刀狩り検地という政策で抑え込んだのがその後の徳川の圧政の起源ということだそうだ。

そして、そこから先は、老年の秀吉の暴挙、特に朝鮮出兵という大失敗を、なぜ、秀吉は明国まで攻めて日本の首都を大陸に動かそうとしたのか、という考察に入る。こちらの方が面白い。

まず、天下統一の過程で、殊勲のあった武士に対して、領地を分けなければならないのだが、もうほとんどリザーブしていた地面がなくなったことがあるそうだ。なにしろ、国替の対象に朝鮮半島まで加えて考えていたらしい。

さらに、長男が亡くなるという大不幸で正気を失っていたという説もある。陰謀的には家康は豊臣家の弱体化を望んでいて、あえて不毛の戦いを黙認していたということも考えられる。

といっても、秀吉自ら病体の身で朝鮮半島に渡ろうとしたのを、思いとどまらせたのは家康だったらしい。天下統一の基盤を作ってから永眠してほしかったのだろう。秀吉が朝鮮半島で客死してしまったら、歴史の教科書を書き直して戦国第二ラウンドを始めなければならない。黒田×伊達ということになったのだろうか。日本はキリスト教国家になっただろう。

ということで、著者はかなりの秀吉嫌いなのだろう。

ところで、検地以降江戸時代の農民だが、容赦なく年貢を絞り取られる立場で、政権とは敵対関係にあったようだが、現代では年貢(税金)は、ほとんど低率で、逆に補助金をもらう構造になり、政権と親密関係にあるようだ。