一人称単数(村上春樹著)

2024-09-18 00:00:30 | 書評
少し前だが、早稲田大学内にある村上春樹ライブラリーに寄った機会があった。彼の著書、特に小説は多くは既読のつもりだったが、一覧的に見ると読んでない本が多くあるように感じた。

ということで、短編集『一人称単数』を読む。文庫本で250ページぐらいだが、活字が大きいような気がした。短編が全8作。いつもの春樹構文といったところで、デビューからノルウェーの森の間の時期の作に違いないと感じた。現実と空想感の入り混じった空間に少人数の男と女が登場する。男と喋る猿の場合もある。

喋る猿『品川猿の告白』、シューマンの『謝肉祭』をこよなく愛する男女の話、亡くなった元ガールフレンド、私の頭ではまったく理解できない『一人称単数』など。

なんとなく、一度読んだ本ではないかと、感じた。『風の歌を聴け』のすぐ後の短編群の一つかなと思って、調べると、驚いた。2020年発行。文藝春秋には2018年から連載されていたそうだが、どちらにしても現代に近い。この後、長編を一つ書き現代に至る。

微かにめまいが起きる。まさかゼロから文法をやり直して、また、売れる小説を書こうというのだろうか。品川在住のよく喋る猿を主人公にして『吾輩は猿である。名前は品川猿男だ』というようなことだろうか。

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