チューリヒ美術館展を観て考えたこと、2つ

2014-12-07 00:00:24 | 美術館・博物館・工芸品
国立新美術館で開催中のチューリヒ美術館展。思っていたよりもずっと素晴らしかった。この後、神戸で第二ラウンドがあるので、また行くかもしれない。

素晴らしい点といえば、なんでもかんでも名画をかき集めるという態度ではなく、コレクションに統一感がある。色調、構図など、スイス製の時計のように欧州を冷静な目で見続けている国民の趣味が貫かれているという感じだ。

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この画家がこんなスイス的な絵を描いたのか、と思うものがそろっている。原色が多いミロの水色をベースにして中間色を活かした作品、ゴッホのゴッホらしくない落ち着いた農家の構図、ルソーもスイスの風景が好きだったのだろうか。マルグリッド、シャガール、ムンクなどは逆に彼らが多目に描いた暗く神秘的で絶望感のある作品ではなく、どこかに救いのあるような作品が並ぶ。

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そして、スイスが誇る造形家のジャコメッティ。小さな頭、小さな体と反対的に長い脚と大きな足。何かから逃げているのか、あるいは歩き続ける人間を描いているのか。それは観たものが決めるべきなのだろう。


ところで、ふと思ったのだが、世界有数のケチで有名なスイスのこと、これだけの名品をどうやって、また、なぜ集めたのだろうか。よく聞く話だが、ロシア革命やナチス崩壊の時に流出したものだろうか(ロシア革命とは時代がずれているが)。そしてこの名品群は、なんのために美術館にあるのか。

ふと思った仮説(あくまでも仮説であり、真実と言っているわけではありません)なのだが、多くの富豪が、美術館に貸し出していて、何らかの収益を得ていて、その延長行為として、世界ツアーで集金しているのではないだろうかと思えてしまうのだ。まあ、それでも富豪たちの本望というのは口惜しいところだが、すでに亡くなってしまっている画家にとっては、それこそが最大の夢であったのだろうから、いいかなって思う。

さらに次の話だが、残念ながら美術とは無縁の仮想(あくまでも仮説であり、真実と言っているわけではありません)。今回のチューリヒ美術館展は、日本スイス国交樹立150周年記念ということになっている。詳しく言うと1864年に日本スイス通商条約が締結されている。江戸幕府崩壊の数年前だ。

順でいうと、日本は米、英、仏、露、蘭の五カ国と通商条約を締結した後、ポルトガル、プロシア、スイス、ベルギー、イタリア、デンマークの順に通商条約を結んでいる。

欧州の大国ならともかく、スイスと日本の間で、徳川幕府は何を期待して、何をしようとしていたのだろうか。日本は、尊皇攘夷から脱皮をはじめていて、薩摩や水戸では攘夷派の排除(虐殺)が始まっていた。その後、薩長同盟が徳川と対決していくところなのだ。

仮説だが、いくら北関東の山を掘っても見つからない「徳川幕府御用金」をスイスの金庫に預けたのではないだろうか。岩倉使節団もスイスに寄っているのだが、何かを疑って、探しに行ったのではないだろうか。文献調査を始めようかな。当時、スイスに大金庫があったかどうかを調べるのが先だろうか。