世の中には「見える」人がいる。「見える」というのは、つまりアレのこと。だからそういう人は見えそうな場所には決して近づかない。言葉にできない恐怖を感じるからだそうだ。
残念ながらワシは「見えない」人である。しかしアレがいることはわかる。その存在を感じるが実際に「見える」わけじゃないので別に怖いとも思わない。「ああ、いるな」という程度。
考えてみれば、アレだってもとは我々と同じ肉体を所有していたはず。ただそれが今はないだけのこと。よほど質の悪い奴でなければ怖がる理由はない。むしろもっと怖いのは現在肉体をもっている奴のほうだな。それもイッちゃってる奴。
若い頃、深夜のコンビニにトラックで配送するバイトをしていたことがある。あれは山梨県のとある店だった。その店は24時間営業ではなかったので、店に到着する頃には閉店しており、あたりは真っ暗。いわゆる無人店舗になっているところへ店から預かったカギを使って店内に入り、商品を納入するのだ。そんなのはこの店だけじゃなかったので別に何の恐怖も感じなかった。
その日、いつものようにその店に到着すると広めの駐車場に1台の乗用車が停車していた。駐車車両があることも別に珍しいことじゃない。だから気にせず店舗の入り口近くにトラックをバックで寄せた。
そしてトラックを降りて荷物室から納入する商品を下ろしていると、何やら話し声が聞こえてきた。なんだなんだ? 妙にハイテンションなのである。ヘラヘラ笑ってるし。
ふと見れば、さっきから停車していたクルマには20歳前後と思われるガキが4人乗車していることに気づく。「なんだ、地元の小僧か。しょうもねえな」
気にせず仕事を続けていると、そのうちのひとりがワシに声をかけてきた。
「お兄さん、夜中のお仕事大変だねえー。エヘ、エヘ、エヘヘヘ」
そいつの顔を見て驚いた。笑っているのに歯がないのだ! そう、コイツらはシンナーの常習者なのである。いや、トルエンかもしれん。いずれにしてもヤリすぎて歯が溶けてしまったに違いない。たぶん脳みそも溶けているんだろうな。
深夜にいきなり歯茎だけで笑う顔を見せられて驚かない奴はいない。しかしここでコイツらの相手をしている時間はない。何せこの配送コースは死に物狂いでまわらないと終わらなかったから。あの頃、深夜の甲府盆地を時速100kmで爆走していたのは何を隠そうワシです(苦笑)
ともあれ、冷静を装いながら、
「おうおう、ありがとよ。でもオマエラ、もう家に帰ったほうがいいんじゃねえのか?」
「うん、もうそろそろ帰るよー。エヘエヘエヘ…」
闇の中で突然現われた歯茎しかない笑顔。これほど震撼させられたものはなかった。それに比べたら、隅のほうでひっそりと佇んでいるアレなんて全く可愛いもんだぜ。
残念ながらワシは「見えない」人である。しかしアレがいることはわかる。その存在を感じるが実際に「見える」わけじゃないので別に怖いとも思わない。「ああ、いるな」という程度。
考えてみれば、アレだってもとは我々と同じ肉体を所有していたはず。ただそれが今はないだけのこと。よほど質の悪い奴でなければ怖がる理由はない。むしろもっと怖いのは現在肉体をもっている奴のほうだな。それもイッちゃってる奴。
若い頃、深夜のコンビニにトラックで配送するバイトをしていたことがある。あれは山梨県のとある店だった。その店は24時間営業ではなかったので、店に到着する頃には閉店しており、あたりは真っ暗。いわゆる無人店舗になっているところへ店から預かったカギを使って店内に入り、商品を納入するのだ。そんなのはこの店だけじゃなかったので別に何の恐怖も感じなかった。
その日、いつものようにその店に到着すると広めの駐車場に1台の乗用車が停車していた。駐車車両があることも別に珍しいことじゃない。だから気にせず店舗の入り口近くにトラックをバックで寄せた。
そしてトラックを降りて荷物室から納入する商品を下ろしていると、何やら話し声が聞こえてきた。なんだなんだ? 妙にハイテンションなのである。ヘラヘラ笑ってるし。
ふと見れば、さっきから停車していたクルマには20歳前後と思われるガキが4人乗車していることに気づく。「なんだ、地元の小僧か。しょうもねえな」
気にせず仕事を続けていると、そのうちのひとりがワシに声をかけてきた。
「お兄さん、夜中のお仕事大変だねえー。エヘ、エヘ、エヘヘヘ」
そいつの顔を見て驚いた。笑っているのに歯がないのだ! そう、コイツらはシンナーの常習者なのである。いや、トルエンかもしれん。いずれにしてもヤリすぎて歯が溶けてしまったに違いない。たぶん脳みそも溶けているんだろうな。
深夜にいきなり歯茎だけで笑う顔を見せられて驚かない奴はいない。しかしここでコイツらの相手をしている時間はない。何せこの配送コースは死に物狂いでまわらないと終わらなかったから。あの頃、深夜の甲府盆地を時速100kmで爆走していたのは何を隠そうワシです(苦笑)
ともあれ、冷静を装いながら、
「おうおう、ありがとよ。でもオマエラ、もう家に帰ったほうがいいんじゃねえのか?」
「うん、もうそろそろ帰るよー。エヘエヘエヘ…」
闇の中で突然現われた歯茎しかない笑顔。これほど震撼させられたものはなかった。それに比べたら、隅のほうでひっそりと佇んでいるアレなんて全く可愛いもんだぜ。
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