横道世之介(2014年 映画)

2019-07-03 00:00:45 | 映画・演劇・Video
吉田修一の小説「横道世之介」の映画化である。小説は2008年から2009年まで1年間毎日新聞に連載され、いくつかの賞を受賞している。長崎から上京して法政大学に入学した横道世之介(高良健吾演)が、自分の周りを取り巻く様々な人との関りを持っていくことで成長する一方で、彼と付き合った人たちの中に温かい気持ちを起こしていくわけだ。


ということで、一見して平和なストーリーなのだが、映画の中の時間は1987年から1988年になっている。そして2時間40分の上映時間の1時間40分経過時点で、背景に流れるテレビ音声が主人公の横道が駅の人身事故で、35歳で亡くなったことを小さな音で観客に伝えるわけだ。DVDの場合、聞き直すことができる。

そのシーンのあと再び時間は1988年、つまり彼が学生だった時点に戻るのだが、残る1時間、不安な気持ちで見続けることになる。なんとなく、映画の構造は理解できるのだが、最後に人身事故のシーンを見るのは嫌だなと思いながらも、時間は進んでいく。

そして、様々なエピソードの末、彼はその後の人生をカメラマンとして生きることになるのだが・・・



このストーリーだが、2001年1月に起きた新大久保駅乗客転落事故につながっていくわけだ。泥酔した男性を救助するため線路に下りた日本人カメラマンと韓国人留学生が巻き添えになる。日本人カメラマンのための小説(映画)が横道世之介で韓国人留学生のための映画が『あなたを忘れない』だ。

ということで、いいとか悪いとかを超越した作品としかいえない。