演説のできがよくないのでは

2009-01-22 00:00:26 | 市民A
オバマ大統領の就任演説。

1月9日に「大統領の説得術(岡部朗一著)」で、あらかじめ予習しておいたので、それを参考に考えてみると、歴代の大統領の多くとあまり差はない普通の演説だったように思う。

予習によれば、

1.アメリカの統一。つまり民主党の支持者も共和党の支持者も一緒だ!ということ。

2.超時間制。過去の偉大な、あるいは人気のある大統領の後継者であることを吹くこと。

3.「我々」ということばを連呼して、市民と政府の同一性を訴えること。

4.「変革」と「再生」ということばを多用する。「変革」と「再生」は本来、対立的なのだが。

5.「自由」と「民主主義」を強調する。(特に子ブッシュ)

6.「神」が登場して、「神様。なんとかしてくれ」と言う。


この基準を考えると、
1.いきなりブッシュの政策を一言だけ褒めて、終わり。

2.これは、有名大統領多数登場である。クリントンの名前は出てこない。リンカーンを強調していたが、リンカーンが解放したのは、「黒人」ではなく「黒人奴隷」だったのだが、オバマの父親はケニアから自由意思でやってきたわけだ。ちょっと違う。

3.「我々(We)」は多用されるが、本当にWeって誰のことかと、考え込んでしまう。文脈から言うとアメリカ国民全員なのだが、そうであれば、we,Americanとかわかるように話してほしい。そうは書きにくい理由もあるのだろう。

4.あれだけ、選挙戦で訴えていた、変革(Change)は、どこに消えたのだろうか。現状の困難との闘いという方向に変わったようだ。

5.自由と民主主義。民主主義を世界に広めるための聖戦をしていた前任者との差なのだろうか。出てこない。むしろ、一部自由の制限的なニュアンスに感じた。

6.神の祝福については、まったく異なっていて、演説の最後の方で、「神に求められている」というようになっている。

そして、独自の主張というのは、「ひどい現実との闘い」とか「米国は再び蘇る」というような部分。

この闘いに全国民が参加しようというのだが、世界をひどい状態にしたのは、主に米国人のせいである。つまり、国内問題なのだから、全員が敵と戦うのでは、敵がいなくなってしまう。

米国が再び蘇る式であれば、迫りくる中国なんかは、「今のうちにひとつぶし」とか思われているのだろうか。とりあえず、世界の協調とか同盟国の連帯という部分は、まったくないように思う。