SHM-CDのこと

2009-01-11 00:00:16 | 音楽(クラシック音楽他)
最近、クラシックのCDが安くなっていた。輸入盤の全集物12枚で1万円以下だったり、廉価版といっても、歴史的に有名な録音が1000円ぐらいだったり。

一方、ロンドンフィルや新日本フィルのように、演奏会をNET配信するオケも現れる。海賊版を作り放題のような気もするが、いずれにしてもCDでは利益にならないので、むしろクラシックへの気軽な入門コースといった風情らしい。



なぜ、クラシックCDが安くなってきたかについては、さまざまな要因があるのだが、根本的なところに「曲不足」という問題がある。つまり、21世紀の我々が聴いているいる楽曲は、ほとんどが、約200年前から約100年前までの間の100年間に書かれたものである、ということ。一方、演奏家は、指揮者にしてもソリストにしても楽団にしても、ほぼ無数にいるわけだ。しかも、1950年頃以降の録音は、ほぼ原音を損ねることなくマスターテープが存在している。したがって、同じ楽曲を様々な人たちが演奏することになり、結局、過当競争になっていく。元々、白人専門だったこの閉鎖世界は、いまや黄色人種が多数参加している。そのうち、インドやアフリカの人たちも参入すると、もっと演奏家が増えてしまう。

そして、ネット中継とは異なる別の角度の商品が生まれる。「SHM-CD」(Super High Material CD)。

ある意味、かなり正統的な考え方かもしれないのだが、従来のCDを物理的に改良したものだそうだ。CDの表面に液晶テレビのパネル用ポリカーボネート樹脂を使用することによって、素材の透明度をアップして、マスター・クオリティに近づけたそうだ。ビクターの特許らしい。

実は、よくわからない。説明を読む限り、従来のCDは透明度の落ちる樹脂を使っているので、原音に忠実になってなく、SHM-CDの方が透明で解像度が高い、ということだそうだが、ということは従来のCDは、アナログ方式みたいに聞こえる。

で、そういうよくわからない話だ、と、疑り深い人のために、テスト用のCDが売られている。1000円。クラシックの名曲の一部をオムニバスにして全10曲を収録。念のいったことに、同じ楽曲を『通常CD』と『SHM-CD』の両方で録音していて、二枚つづけて聴くと、「その差歴然」ということだ。「利き酒」ならぬ「利き音」。使用前と使用後の体重測定みたいな感じ。わざと、二枚の差をつけることなんか簡単ではないだろうか。とか疑いつつ、聴き比べてみる。

「その差歴然」

まず、ピアノがクリヤに響くのが驚き。今までは、ピアノの音をCDで聞いても「オルガン」みたいに聞こえたのが、本物のピアノに肉薄しているように感じる。ベートーベンの悲愴(第2楽章)が、快活に聞こえる。ラフマニノフのピアノ協奏曲2番も今までとイメージの異なる鮮明な音に聞こえる。ブルッフのバイオリン協奏曲も、よく聞いている同じチョン・キョンファでも、今までは、全体の音が束になって、「ボッ、ボッ、ボーーー」というように聞こえていたのにSHM版では、まったく異なった音の機関銃のように聞こえる。

そして、収録された10曲の最後はベートーベンの第九。正月なのに歓喜の大合唱を聴くことになるのだが、なんだか、マスターテープから次々とCDが焼き直され始めると、今までのCDは、どうしてくれるのだろう。差額だけを払えば交換してくれてもいいじゃないか、などと思ってしまうのだ。


ところで、冒頭で書いたように、クラシックは約200年前にモーツァルトとベートーベンが不朽の名作を大量生産。その後、さまざまな派生を経て、今から100年前に再び新機軸が起こりストラヴィンスキーの「火の鳥」が現代音楽の扉を開く。思えば、ヨーロッパの時代が終わったのが20世紀初頭であった。

となれば、米国の時代に陰りが生じている今、新たな扉が開きかけているのかもしれない。違う音階?
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