社宅付き派遣社員の問題

2009-01-13 00:00:08 | 市民A
昨年末から大手製造業を中心に、「派遣切り」が行われ、社宅を追い出されて路上生活になったり、日比谷公園の派遣村に駆け込んだりしている人たちがいる。

そして、厚生労働省や野党の一部や与党の一部から、「製造業への派遣の禁止」や「派遣社員の身分保障」というような動きがある。

しかし、もちろん慎重論もある。慎重論を要約すると、

1.派遣社員を優遇することにより、逆に派遣という形態自体がなくなり、国際競争力の低下につながる。

2.派遣社員の労働条件を変えないかわりに、正社員の給与が下がったり、新卒採用数が減って、もっと深刻な失業が発生する。

実は、報道されていないが、バックグラウンドには、一般的な定年である60歳から公的年金受給年齢である64~65歳の空白を埋めるべく、政府が「定年延長」、あるいは「退職後の再雇用制」を主に大企業に強く要請したことも裏目に出ているだろう。コスト的に言えば、「派遣」「新入社員」「高齢者再雇用」というのは、同じようなレベルにあるため、どこかを押せばどこかに飛び出すようなことになる。


ところで、今回の「派遣切り」で大きな問題になったのは、「社宅を追い出されて路頭に迷う人」ということである。少し、違和感を感じている。


実は、勤め先の本業が、やや過去産業なので、本業以外の複数の業種に出資をしている。中には、非常勤取締役に名前を置いている先もある。地方都市にあって、一般に「労働集約」的な会社もある。実際には、屋外の現場に行っても筋肉労働をするわけではないし、ルーティン作業でもないので、屋内作業の自動車組立とは、どっこいではないかと思える。

しかし、そこは中小企業の悲しいところで、「社宅制度」はない。地方都市といっても人口十数万人の都会なので、近隣在住の商業高校、工業高校からの新卒と、中途採用の社員である。逆にいえば、社宅制度がないから成り立っているような勘定である。

その会社がここ数年非常に困っていたのが、社員の退職や引き抜き。辞める人は本当のことを言わないが、大手の工場に再就職している人が多かった。社員が100人弱の会社で、毎月のように退職届が回ってきていた。思えば、裏で、大手企業が、社宅付きで遠隔地から派遣工員を集めていたことになる。確かに、本当の地方の山間部に工場用地を造成して、突如工場を立ち上げても誰も従業員はこない。社宅に入れるなら正社員に採用すべきである。

現在、職と住まい(社宅)を失った人たちだって、その社宅に入る前は、どこかに住んでいたのだろう(もともと無宿の人も少しはいるだろうが)。住居を借りて中小企業の正社員になっているよりも、社宅付きの派遣社員の方がいい、と思ってしまったのではないだろうか。せっかく住んでいた家を出て、社宅に入る。いいわけない。だいたい不安に思っていなかったのだろうか。

むしろ、「派遣社員への社宅供与の禁止」といった制限条項が、労使ともどもに必要ではなかったのだろうか。

そして、あれほど次々に辞めていた私の管轄している中小企業の社員だが、ここ数カ月、退職届は一枚も出ていないのである。大勢やめるだろうと、あてをつけ、この4月には、新卒を少し補充しようと、秋に内定乱発してしまったのだが、困ったなあ・・

歩き回って新規の仕事を集めてくるしかないのだが、不況下でそういうことのできる器用な社員は、あまり多くはいないのである。