西本智美指揮の幻想交響曲

2009-01-04 00:00:41 | 音楽(クラシック音楽他)
昨年末に渋谷のタワーレコードで、何枚か購入した中の一枚が、世界でも稀な女性指揮者、西本智美さんの「幻想交響曲/ベルリオーズ」。



タワーレコードの年末のポイント2倍セール(どうもポイントに弱い)。特に、真央ちゃんの「仮面舞踏会(ハチャトリアン)」を買いに行ったわけじゃない。もちろん、あれば買うのだが、どこでも売り切れ。タワレコ渋谷のクラシック年間ベスト10が公表されていたが、第4位のところに空間があったので、たぶんそれが「仮面舞踏会」だろう。同じ題名でヴェルディにも「仮面舞踏会」があり、間違えて買う人がいるらしい。ハチャトリアンの棚を探そうと思ったが、タワレコでは作曲家がABC順に並んでいて、ハチャトリアンのスペルが全く想像できなかったこともある(Hのコーナーを探しているうちに、ヘンデルはヘインデルと読むらしいことに気がつく)。ジャンルは違うが、カーペンターズのマスカレードも仮面舞踏会の楽曲だが、西洋人はまったく奇妙な遊びに興じるものだ。

さて、最近は、クラシックもCDからDVDへと移行している。さらにブルーレイの新盤も発売されていたが、やや方向違いではないかとも思えるところだ。つまり、録音音楽の本質は、いかに聴く側の想像力を喚起させるかであって、ヴィジュアル芸術ではないはずだ。



ところが、西本さんは、まさに「ヴィジュアル系」(何か批判しているような論調になってしまったが、そういうことではない)。どうもフランスやドイツといった正統派欧州地域では保守の壁があるようで、ロシアやチェコで活躍中。日本で公演をすればたちまちチケットは入手困難になる。それならDVDで、ということになる。

最近は、チャイコフスキーを得意にしているようで、「悲愴」とか「眠りの森の美女」とかも発売している。

しかし、西本さんがチャイコフスキーを振ると、まさにショービジネス的になり過ぎてしまう。

感じたのは、「女カラヤン」。

カラヤンは、大御所ではあるが、後世にヴィデオを大量に残している。ベートーベンのような超正統派を得意にして、髪のセットの乱れまで計算して決して感情を表に出すことなく美しい旋律を引き出す。諸説はあるが、「コンサートショーの主役」を演じている。

さて、チェコ・ナショナル交響楽団との組み合わせだが、オーケストラは全員白人。よりによって、アジア人の女の指揮なんて、嫌だなあとか思っていたのだろうか。欧州人から見れば、日本人も黒人と一緒だろう。



個人的趣味だが、日本で、このショーマン(ウーマン)型指揮者といえば、「小林研一郎(通称コバケン)」がいる。彼の幻想交響曲も華やかであるが、少し下品だ。西本智美の方が上品である。


で、交響曲の方だが、ぐっと抑えた感じ。問題の第五楽章で、悪魔の鐘が鳴り響くところが、力強さに欠けるような気配である。もともと、麻薬を使って頭が朦朧としている状態でベルリオーズは幻覚をみることになり、最後の第五楽章で、人間(自分)と悪魔が鐘の音の中で戦うわけで、そのあたりでいずれの指揮者も柔軟体操競技を始めるのだが、彼女は、あくまでもクールにさばいている。逆に、そこが楽しくないところかな。そういうクールさがカラヤンみたいだが、カラヤンがベートーベンという堅固な骨格の中でクール・コンダクターを演じるならば、ベートーベンが叩いたロマン派の柔軟構造の中で模索中とみた。

そして、西本さんは、今後、メジャーオーケストラを振ることはできるだろうか。たぶん、色々と邪魔が入るのだろう。

ところで西本さんは、「大阪で~え、生まれた~、女やさかい」なのだが、『大阪発世界レベル』というべきなのか、『大阪を捨てて世界』ということなのだろうか。?????