アナログ回路のような事件?

2009-01-18 00:00:22 | 市民A
殺害された高窪中大教授の事件だが、目撃者である留学生のA氏、黒コートで現場を立ち去ったB氏、地下鉄駅に血痕を残したC氏、教授宅周辺に不吉な文字群を残したD(?)氏。

そして、被害者の高窪教授の専門は、「アナログ回路」ということ。かなり実用性に近い分野である。

これらの断片について、どこか引っかかるものがあったのだが、ある雑誌に一か月ほど前に書かれていた記事との関連である。


フォーサイト(新潮社の会員制情報誌)1月号。12月中旬に配送されていた。

雑誌の86ページ、87ページにジャーナリストの西村竜郎氏が「理系大学の技術情報がますます狙われている」の中で「外国がほしがっていることがわかっていても、遅々として進まない大学他研究機関の情報流出防止策」というサブタイトルがつけられている。

この中で、日本の企業の研究情報が、旧ソ連や中国に漏れた事例が書かれていて、さらに、『理系の大学や官民の研究機関の場合、情報流出対策は大企業に比べて大幅に出遅れており、日本全体でみると巨大な「抜け穴」になっている』と書かれている。

さらに、経済産業省が文部科学省に働きかけ、大学の情報流出管理に乗り出したのは2005年4月のことで、外国からの留学生を受け入れた場合、どのようなことに気をつけるべきかを専門家が全国の大学に周知する活動が始まった。

『その後、三年半が経過したが、国内の大学で情報管理を担う常設組織を設けているのは、たまたま強い問題意識を持つ担当者がいた中央大学と九州工業大学の二校だけ。』

西村氏の稿は、主に日本の安全保障に関する技術情報の漏洩を危惧したものであるが、情報の質が、「安全保障」に関するものであっても、「電機製品の基礎技術」であっても、漏洩パターンはほぼ同じだろうと想像できる。



ここで、実際の事件と、フォーサイトの記事をいきなり関連付けてしまうと、事件が解決した時に、大きなクレームを受ける可能性があるので、『事件の推理ではなく』、『将来、ミステリーを書くときのための』ストーリー展開を作ってみる。


登場人物:

荻窪教授:文京大学理工学部教授/アナログ回路研究者。最新の研究データが消滅しないように、常にUSBメモリーにバックアップを作り、持ち歩いている。元学長の息子。

留学生A:某国の企業X社の代理人からアナログ回路情報の入手を求められている。

X社代理人:X社から産業スパイを依頼され、すでに前金を受け取っている。

B:協力者1

C:協力者2


ストーリー

1.X社代理人の指令により来日し、荻窪教授に接近したAは、わずかな隙をつき、何度か教授のPCにアクセスを図るが、なかなか核心に迫ることができない。

2.しかし、そのうちに、教授の全データがズボンのポケットの中のメモリーに書き込まれていることを知る。

3.一方、荻窪教授は、何者かがPCを操作したのではないかと、疑念を持つことになり、学内の「情報流出防止センター」に相談。

4.身辺に疑いをもたれている気配を感じたAは、X社の代理人と相談する。

5.X社代理人は、すでに諜報手数料数百万ドルを前金で受け取っている関係上、ついに、強行手段を決意する。

6.代理人は、荻窪教授が文京大元学長の子息で、授業料免除の上、やや若く教授に昇格し、妬みの対象になりやすいことを考慮。自宅周辺に脅迫めいた文字を残しておく。(脅迫文字が漢字だからと言って、特定の国とは限らない)

7.メモリーはコピーを取るだけで再びポケットに戻す予定で、5万円パソコンを用意していた。

8.実行はCが行うことにし、Bは黒コートを着て、見張り役であった。

9.当日は、いつも9時頃に出勤する荻窪教授が10時に出勤したため、学内の人の出入りが多く、Cが包丁で切りつけた後、コピーをすることはできず、メモリーは持ち去られた。Cは地下鉄駅構内のトイレで着替えをし、逃走。

10.Bは捜査かく乱のため、超長い黒コートに黒ニット帽にメガネという目立つ服装で、Cとは逆方向のコンビニ方面に歩いてゆく。囮である。

11.Aは第一発見者として、Bの服装を証言する。

12.すでにBとCは逃亡してしまい。残っているのはAだけである。Aが知っているのはX社の代理人だけであるが、代理人も逃亡してしまい、残されたAは、BのこともCのことも知らないし、代理人のことは知っていても、その背後にいたのがX社であるのかどうかも知らないのである。

13.その後、私立探偵が登場し、事件について書かれたブログを検索しているうちに、あるエッセイに、事件のストーリーの推理が書かれていることに気付き、その線で調査を進める。メモリーが紛失したことは突き止めるものの、決定的証拠を得ることなく捜査は長期化する。

14.数年後、X社から発売された新製品に、教授が開発途中だった技術が使われていたことにより、私立探偵氏はX社の本社に潜入することを決意する。

15.以下省略。


注:このストーリーは、あくまでも将来書くつもりのミステリー用である。

しかし、このストーリーと、まったく同じ筋書きで、現実の犯罪が行われていた場合、ミステリーとしては成立せず、単にドキュメンタリーになってしまうため、そういうことが実際に起こったのではないことを祈りたいのである。