二つの株主総会(上)

2005-07-06 20:31:31 | MBAの意見
a1e25b4a.jpg先週は株主総会の集中する週だった。特に6月29日は「集中日」であり、口うるさい投資家が一度に1個所しか出席できないことを利用し、投資家の意見を聞かない主義の企業にとって、もっとも長い一日を最も短く終わりにするため苦労する日になっている。

そういうことは、個人投資家の多くは知っていて、集中日に総会を開くか、集中日をはずすかというのも、企業判断の一つになっている。今年は、集中日前日に、三菱系巨大海運会社の「日本郵船(通称、郵船)」。集中日の29日には、郵船と同業だがずっと小さな「A」社の総会に出席。比較して考えてみる。

まず、28日は郵船。東京駅前三菱村の中でもっとも皇居に近い。和田倉門前のビルの最上階の大会議室。郵船は商船三井、川崎汽船と合わせ、三大海運会社である。現在、空前の海運市況になり貨物積載率は向上、新造船の大幅な投入、造船所への発注は5年先までいっぱいの状況。原因は、中国経済の膨張によって鉄鉱石、石炭、原油、天然ガスなどの資源輸送や製品の米中間航路が拡大、異常気象による穀物の移送などによる。一時の構造不況業種が、逆に構造好況業種に変わり、大手三社とも絶好調である。さらに、この三社に中韓台の大手海運、M&Aを繰り返し集約化された欧州系の海運会社により3グループ化が進み、グローバルに運賃が高止まりする構造になっている。不安要因は原油価格高騰による燃料費上昇要因だが、寡占化が進んだ現状では、価格転嫁がスムーズに行われそうであり、収益への不安は限定的だろう。


さて、大手町ということで、スーツにネクタイという定番で出席したのだが、ほとんどの株主は、ドレスコード無しだ。一般投資家ばかりで、会場となった大会議室の椅子がなくなり、補助椅子が投入されていく。見込み違いだ。エンドユーザーのことがわからない三菱系らしい。

これは、最近行ったドクターシーラボとかHISという人気企業の株主総会と同じノリだ。熱気がフロアに漂う。会長の草刈氏が議事を進めるが、業績報告は景気のいい話が並ぶ。そして、株主の質問時間は、次々と良質な質問が飛ぶ。客船部門については、かなり質疑の時間がとられる。要するに、現在北米に投入されている”クリスタルハーモニー”を引きあげ、日本市場に”飛鳥?”として投入し、飛鳥の方は廃船(転売)するという方針についての可否についてだ。こういうことが株主間の討論会風になるということは、見る眼の高い株主が多いということだろう。そして、燃料費高騰による収益への影響や中国ビジネスへのリスク・マネジメントへも質問があり、正しい回答があったのだが、国際問題になるといけないので、ここには書かない(株主利益優先)。三菱ふそうとの関係での質問があったが、「経営援助は行わない」と明言していた。

一言でいうと、経営者に力を注入する総会ということで、「いい株主が多い」ということなのだろう。

こういう主旨の発言が、ある女性からあった。「今は、絶好調で記念配当まで行っているが、少し前は無配を続けていたことを忘れないでほしい。配当継続と大手三社の中で株価がトップになるように決意を表明してほしい」。

社長の回答には、若干、ものたりないものがあったのだが、三菱的なのかな・・
「他の二社(商船三井、川崎汽船)との差は、非海運事業の収益性の差と考えていて、3年後には収益の柱にして逆にこの部分の利益で株価を逆転したい。」

資本の効率性の観点でいうと、必ずしも正しい質問でもないのだが(株価ではなく時価総額という考え方もある)、3年後の目標というのは、あまりに遠い。なにしろ、そんなに株価が違うわけではない。郵船は630円位。商船三井は680円位。川汽は650円位だからだ。私が見るところ、他の二社は相当過激なリストラ後で、ネガティブ部分が少ないが、郵船はまだまだ改善の余地はある。(しかし、徐々に合理化はやっている。効率化の余地があるのに、漫然としているJALとは大違いではある)

大手三社ともに、若手社員が足りずに大量の中途採用者を募集している。腕自慢はどんどんチャレンジしてもいいかもしれない(ただし、仕事は外資系でも給料は日本的なのはしょうがない)。

そして、総会後、大ホールで株主懇談会が行われたのだが、総会の椅子が足りなくなった時点で予感していた不安が的中した。”料理が足りない”。またも三菱的だ。結局、赤ワインをグラス1杯と、キウリと薄切りチーズとハムのはさまったサンドイッチの小片を6個口に運んだだけで、当日の昼食は終わり。予想数量より少なめにオーダーして余剰在庫を残さないというのは、「石橋たたき経営」といって三菱系企業の家訓なのだが、麒麟麦酒の失敗(とは認めてないだろうが)を思い出すべきだ。

このままだと株主プレゼントの数も不足するはずと先読みして、早々にプレゼントを手にして失礼する。設立120周年記念のドライカレーだった。フライドオニオン付き。