二つの株主総会(下)

2005-07-07 20:30:25 | MBAの意見
d647efa6.jpg「集中日6月29日」に株主総会を開くだけで企業価値が疑われる中、ある小ぶりの海運会社の総会に行く。この会社、都心の一等地に相当面積の土地を保有している。さらに少し古くなった自社ビルの中には、ホールを保有している。ホールを持っているということは、「いつ総会を開いても対応可能」のはずなのに・・。

私がこの会社に注目していたのは、別に業績に期待していたからではない。土地の含み益に目をつけM&A(される)の噂が流れたからであり、事実、株主上位には、外国系投資会社も多数並んでいる。買収して、海運部門と不動産部門を分離し、土地の上に大きなビルを建てて儲けようということだ。海運部門は、大手海運会社に分離売却すればいい。

ところが、昨年秋から冬にかけて、この会社は、約10%の第三者増資を行い、その結果株価は1割下がり、なぜか一旦株価は回復し、その後また下落した。まあ、ちょうちん持ちの一人なので、損しても文句は言えないが、怖いもの見たさもあり、その自社ホールでの総会に行く。


すると、会場の前3列には、テープがはられ、座れない。そして、最前列となる4列目の中央の席には、いるではないか。ギョロ眼の白ネクタイ男が。とほほだ。そして、日本郵船とは異なり、ノータイ人間は会場には一人しかいないように見えた。若手ビジネスマン風の男たちが集まった席の後ろに座る。どうも投資会社の人間のようだ。そして、お互いに決算書を見ながら情報交換している。決算書のある部分について話をしているのが耳に入る。「これだけではわからない」というようなことをヒソヒソと話しているのだ。

そして、議事は、淡々と進み、質問者の発言タイムとなると、この総会の本質があらわれてきた。昨年末の増資についての質問で、増資が決定された経緯、第三者割り当てとなった理由、そして公募価格決定のプロセスについての質問が飛ぶ。そう、さきほどの一人だけのクールビズ男性からだ。

それについて、経理担当役員から、「妥当な決定」だった。と内容を明かさないで回答があると、会場中央にすわっている中年男がいきなり拍手をはじめ、パラパラと追従拍手。しかし、あまりにも内容のない答弁なので、社長から調査の指示が出て、もう少し細かな説明がある。しかし、質問者から「株価の動きが妙であり、利益供与ではないか」と指摘がある。そして、なんだかよくわからない内に、議決に入ってしまった。拍手の音と、投資会社から来た男たちが張り上げる「ハンタイ!」の声の中で、総会は終結してしまい、数分後にはホールには誰もいなくなったのである。

そして、総会後の記念品はもちろんなし。しいていえば「不快な気持ち」だけがおみやげということだろう。