ひろかずのブログ

加古川市・高砂市・播磨町・稲美町地域の歴史探訪。
かつて、「加印地域」と呼ばれ、一つの文化圏・経済圏であった。

わたの里通信誌(50) 古文書の保存と整理(2)

2016-04-27 08:12:11 | わたの里通信誌

   古文書の保存と整理(2)

            広島県立文書館主任研究員・西向宏介

  2、古文書の整理

 次に、古文書の保存と整理に関する基本的な原則と手順について、述べていきたいと思います。

  (1)整理の原則

 古文書を整理する際、大切な原則が5つあります。まず1つめは「出所の原則」です。古文書は、その文書群を生み出した母体(家・団体・企業等)つまり「出所」ごとに整理するというもので、稲岡工業文書を他の文書群と混ぜてはいけないということです。

 2つめは、「原秩序尊重の原則」です。表現がやや難解ですが、文書群が元々持っていた秩序を尊重して整理するという原則です。通常、会社の中にはいくつかの部署があり、その部署ごとにいくつもの仕事があります。文書はそうした組織・仕事の体系の中で生み出されてくるものであり、稲岡工業文書には、会社が持っていた組織・仕事の体系に沿って生み出された秩序(つまり「原秩序」)が本来存在したはずです。文書整理とは、この原秩序を復元・再発見する作業であるとも言えます。

 3つめは、「現状記録の原則」です。文書整理が本来、原秩序を復元するものであるとしても、整理する直前の状態(つまり「現状」)はきちんと記録しておく必要があり、スケッチや写真・ビデオ等で現状を記録します。

 4つめは「平等取扱の原則」です。文書に優劣をつけ、整理したい(しやすい)ものだけを抜き出して整理してはいけないという原則です。

 5つめは、「原形保存の原則」です。文書の原形をなるべく崩さずに整理するという原則で、袋や包紙・紐・こよりなどで一括されていた文書は、その状態をなるべく保持して整理します。もし、一括状態を崩す場合は、もともと一括文書であったことを目録の「備考」欄に記入するなど、きちんと記録することが重要です。

以上の5つの原則は、どんな古文書を整理する場合でも、留意すべき基本原則です。

  (2)整理の手順

 次に、実際の整理の手順について述べます。

 まず、写真撮影を行いながら、文書の現状記録と点数確認を行っていきます。はじめに、①撮影ターゲット(文書群名を書いた紙と番号札)と付箋を作成しておき、②文書が入っている箱の外観を撮影します(箱ごとの番号札〈「箱1」など〉を添えたターゲットを写し込む)。③次に、箱の蓋を開けて、中に文書が入っている状態を撮影します。そして、④箱の中の文書を上から順番に数点ずつ取り出し、入っていた順番通りに番号札と一緒に並べて写真撮影します。⑤撮影が済んだものは、番号を書いた付箋を挟んだ上で、順次ほこり払いをしていきます。

 ほこり払いは、作業場所の確保と十分な換気が必要です。作業時には必ずマスクを着用します。また、空気清浄機や集塵機などがあれば衛生的に作業できます。HEPAフィルター(またはULPAフィルター)付の掃除機を購入すれば、清掃に使うだけでなく、段ボール箱に穴をあけたものと接続して、集塵機としても使えます。

 ほこり払いが済んだら、目録作成に移ります。目録は、パソコン入力(もしくは手書きしたものを集約してパソコン入力)しますが、どのような記載項目を設けるかが一つ重要です。必要な記載項目としては、「文書番号」「枝番号」「表題」「年代」「作成者」「形態」「数量(点数)」「中身数量」「破損状況」「備考」が挙げられます。一括文書の場合、「数量」は1点とし、中身の内訳点数を「中身数量」欄に記入します。また、特記事項があれば適宜「備考」欄に記入します。

  目録への記入が済めば、文書を封筒などに収納します。封筒に入らないものは、文書の形状に合わせて様々な包装方法を用います。封筒には文書番号や表題を記入しますが、筆記具は鉛筆などを用い、インク類は使わないようにします。封筒や保存箱に使う紙は、劣化が進みにくい中性紙が望ましく、とくに文書とじかに接する封筒類には、必ず中性紙を用います。(no3197)

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