保存活動から学んだこと(3)
お茶の水大学博士課程・渡辺千尋
お茶とお菓子
作業中の楽しみの一つが休憩時間です。
体を動かした後のケーキやチョコレート、コーヒーがとても美味しく、手際よくお茶の準備や片付けをしてくださる方人を見て「これが今話題の女子力」と思っています。特に上月先生の奥様が点ててくださったお抹茶の美味しさに感激しました。
市民の、市民による、市民のための
全体としてこれまでに強く感じたことは、史料の未来を預かるのは大学や研究機関だけではないのだということです。私はまだ研究者として半人前ですが、大学でアーカイブズを学ぶ中でなんとなく、研究者が史料の価値を決め、それを地域の方々に分かってもらう「啓蒙活動」をして、研究者が中心になって公的資金を得、文書館を設立して人々を「招く」ものだ、という感覚を持っていました。今考えるとなんと思い上がっていたのだろうと思います。史料の未来に責任を感じたのは私だけではなかったのです。
稲岡工業や関連企業で青春時代を送った方やその子供や孫、わたの里としての加古川の歴史を大切に思う地元の方々の方が、私よりももっと稲岡工業文書を身近に感じ、文書から多くの情報を読み取ることができ、価値を認めているのです。これは私にとってとても大切な気づきでした。「市民の、市民による、市民のためのアーカイブズ」という学校で習った標語の意味が体に染み込んでいくようでした。
保存会の方々のアイディアにご経験と専門知識を提供し、作業に来られた時は誰よりも体を動かす西向先生の姿勢からも多くを学びました。この「稲岡工業株式会社文書」を中心として文書館がいつかできていくような、そんな流れを一緒に作っていく一員になれたことをとても幸運に思っています。(no3201)
*写真:西神吉町大国にある医療生協のレインボー会館で、「稲岡工業株式会社文書」について講演中の渡辺氏