人面塔に登れなかったロメオではなく私

2018-09-02 00:00:28 | 美術館・博物館・工芸品
早稲田大学の施設に用があり、ついでではあるが、暑きを耐え、大学名所の演劇博物館に行く。以前は坪内逍遥記念館となっていたかもしれない。坪内逍遥は近代日本文学史の教科書では、最初の数ページに登場する大人物で、特に「シェークスピア全集」を翻訳したことが有名だ。記念館には、シェークスピアの時代の展示品があるはずだったのだが、・・・

どうも、夏季休暇中で職員が少ないらしく、一階の廊下の部分だけ解放していて、2階以上は展示替え準備という名目で入場できなかった。廊下展示品だけ拝見し、事務所の女性職員の方に、「残念です」と言ったところ。「申し訳ありませんでした」と過去完了形で言い渡されて、外に出るしかなかった。

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となると、見どころはこの建物。

坪内逍遥の発案で、英国の「フォーチュン座」を模して造られたそうだ。しかし、シェークスピアといえば「グローブ座」ではないかと思われそうだが、わけがある。シェークスピアが劇を書きまくっていた頃のグローブ座は、彼の晩年に焼失してしまう。そして現在のロンドンや池袋にあるグローブ座のようなミニドームのような建物に建て替えられてしまう。残念ながら元のグローブ座のデザインは不明。一方、ライバルのフォーチュン座は元のグローブ座のデザインを改良して作られたということで、むしろその方がグローブ座に近いということで、東京に再現されたわけだ。

中央の塔は、よく見ると人面に見える。乱歩的だ。建物はロメオとジュリエットで地上のロメオが階上のジュリエットに呼びかけるシーンがあるので、この塔の上の方の目の部分か口の部分にいたのかと思ったのだが、帰宅後、子細に調べると、2階のバルコニーにジュリエットがあらわれることになっていたようだ。縄梯子で地上と行き来するのだが、確かに女優が塔の上から縄梯子で降りるには無理がある。しかし、2階のバルコニーでは縄梯子までは要らないような気がする。

この建物の玄関の前で演劇が行われ、左右の建物は屋根付きの桟敷席。お金持ち専用だろう。そして、ずっと手前の前庭の地面が庶民の席だったようだ。英国らしい。その後、民衆による革命が成功したのだが、なぜか大きな差別が残ったままだ。