GM最後の日

2009-05-29 00:00:00 | 企業抗争
社債を9割カットして、代わりに僅かな株券と交換するという、破綻国家の国債のような条件に、個人債権者が同意するわけないと思っていた通りになり、「Chapter 11」コースとなるようだ。5月28日が、部品メーカーに対する支払日なので、その前か後ろかというところが重要らしいが、どちらにしても、国営自動車会社になって、部品メーカーへの支払いは保証されるようだから、大差ないだろう。

いくつかの教訓。

1.世界最大の企業だからといって、つぶれないわけじゃない。

2.100年の歴史があっても、つぶれないわけじゃない。

3.利回り10%の社債に騙されてはいけない。

考えれば、オバマ政権ではなく、ブッシュ政権であれば、どうなったか、と言えば、あまり変わらなかっただろう。結局、シティバンクとGMが国営企業になって、これから、リーマンショックの後始末が始まる、ということなのだろう。

オバマ政権であったことによる差と言えば、新GM会社の大株主としてUAWが経営参加することだろうか。いずれ再建がなれば、政府は株式を売却するのだろうが、UAWが保有する株式は、将来、どうなるのだろうか。そんな未来の心配をしている人間は誰もいないだろうが、GMの抱えていた構造問題の一つが、職種別定員(組立工と電気工)の硬直化のため、HV車とかEVが開発できなかったことであることが指摘されている。

つまり、GMの再建を考えれば、共和党政権の方が大胆な再生に向かったのではないかと思う。反対に、シティバンクはじめ金融機関に対しては、共和党的ジャングル資本主義では、大恐慌になったかもしれない。いずれにしてもこれだけ大きな問題になると、大統領の取りうる選択肢はきわめて少なくなるということだろう。

CNNの日本版で週末に流れる「The Daily Show」という風刺ニュースショーがある。社会風刺コメンテーターのジョン・スチュワートが担当しているのだが、先日、「アメリカが社会主義国になる」という特集を組んでいた。金融機関と自動車会社が国有化されていくと、大変だ、という趣旨らしい。本当に風刺なのかどうか日本人にはよくわからないのだが、アメリカの対極の国として取り上げたのがスウェーデン。スウェーデンに特集チームを送って、取材していた。

ある有名女性歌手(名前は疎いのだが)の生活に密着取材し、取材班が驚いていたのだが、「マンションに住んでいる。」「風邪を引くと、近所の医者にいって、医療費はタダである。」「台所で、自分で食事を作っている。」「台所の一角には、資源ステーションがあって、家庭内の資源ゴミを10種類以上の紙袋に仕分けしている。」「クルマは小型車が1台である。」

さらに、取材班はスウェーデンの自動車工場に行って、労働者にインタヴューをして、驚く。「工場で働くことに喜びを感じている」。

さらに、番組は、「スウェーデンでは所得の30%も税金に取られている」と、驚嘆している。

結局、米国民というのは、民主党支持者であったとしても、社会主義的な政策に対するアレルギー許容度は、ほとんど僅かしかない、ということだろうか。


世界のほとんどの国の政策は、米国とスウェーデンの間に位置すると思われるのだが、現在の日本はどちらに近いのだろうか。というか、かなりアメリカに近いと思われる日本でさえ、アメリカに近いというよりもスウェーデンに近いというべきなのだろう。