ミサワで焦るUFJの足を狙う人

2004-11-30 21:24:12 | 企業抗争
UFJ銀行の宿題がまた一つ世間を騒がせている。「ミサワホーム」であるが、個人的には少し気懸りである。何しろミサワホームに住んでいるからだ。

とは言え、所有権は一応私にあり(いつか問題になりそうな住宅金融公庫の抵当権が一部ついているが)、ミサワホームがなくなっても、ただちに大被害が及ぶわけではない。しかし、住宅メーカーは、それぞれ建材を自社工場で作っているので、アフターフォローとしての今後の修繕計画に大きな問題がおこるのは間違いない。それに地震被害のような場合、メーカーがついていないと個人で対応するのは大変だ。今回の新潟中越地震でもミサワホームは被害地の全住宅の調査を2週間で行っている。メーカーの発表を信じるなら、土地の変形による被害以外に半壊・全壊事例はないとのこと。まあ、壁構造なのだから、当たり前だが。小被害については順次、修繕が行われているはずだ。
以前10月05日付弊blog「大京再建に思うこと」で書いたのだが、このミサワホームの家を買ったのは3軒目である。別に家の数が増えているわけではなくその間に2軒を売っている。3軒以外にも、自宅が売れた場合に限り買換え購入するという(停止条件付という)売買契約を結んだことが数回あるから、この方面では、実証的な知見があると思っている。売買を同時期にするということは、大変な心労があるのだが、まあ、失われた心と体のエネルギーがたまるまでは結構時間がかかる。

3軒買った中で、2軒の購入先が経営危機に陥るということは、私に見る眼がないのか、逆にあるのかということだが、たぶん。「見る眼あり」の方ではないかなと思う。「大京とミサワ」。どちらも品質的には「中の上」を狙っている。だからかけるコストが違う。しかし、売る相手は財布のひもの固い普通の一般ユーザーである。こういう感じは、一日かけて住宅展示場を歩くとわかる。展示場にはあまり定価が書かれていないので、品質の高い住宅が人気だが、いざ坪単価を計算しはじめると、妥協の世界に入っていく。大京もミサワも販売数量では業界トップだが利益率では今一つというのは、品質を上げた分、価格で回収できず、廉価メーカーに足を引っぱられるという構造にあるからだろう。

とはいえ、ミサワは結構、期間利益を出している。経常利益で年間200億円程度である。損益計算書を紙の上の方から7割方見ただけでは優良会社である。

結局、この会社の問題は、過去債務に他ならない。過去に借金をして購入した不動産や、リゾート物件の資産価値下落による、資産評価損と借金の利子が凝り固まってしまったわけである。借金の総額は複雑でよくわからないが決算書だけで考えると、4000億円弱のように見える。借金をまったく持たない会社にする必要もなく、おそらく2000億円程度の棒引きが必要なのだろう。それと現在の利益からもたらされるキャッシュとのバランスである。つまり、箸にも棒にもかからないダイエーや、ミサワをはるかに超える借入金をつくった大京とは比べものにならないほど、おいしい会社である。第三者的にざっくり言えば、ポケットから2500億円払って会社を買う人がいれば、それで終わりのはずである。
さらに言えば、このまま貸付金の返済時期がくるたびに、UFJが再貸付を転がしていても、あまり危機的になるとも思えない。

しかし、ミサワ問題が、そう簡単に進まないのは、このドラマの登場人物の抱える様々な問題(欲望)なのだろう。そして先週末から、突然のように色々な動きが出てきた。

まず、主な登場人物は6社(グループ)だ。
1.UFJ銀行
2.トヨタ
3.産業再生機構
4.元社長三沢氏グループ
5.現ミサワ経営陣
6.一部株主(シティグループ)
といったところだ。

 UFJの事情は、東京三菱との合併比率が発表できない理由は、不良債権が確定しないからであり、「早く確定しなさい」と三菱にいわれているのあろう。もはや死に体になっているため、損切り額が多くなっても目をつぶって早く処理したいというのが本音だろう。東京三菱はNYSEに上場しているため、東京三菱ルールで資産評価を行い、合併比率を算定しなければならない。11月末までに決着をつけろっていわれているのではないか?
 次にトヨタであるが、今年トヨタホームを別会社に仕立てたばかりで、ミサワ+トヨタホームという統合効果を狙っているのだろう。トヨタホームといえば、どこの住宅展示場でも、価格が安い割りにそこそこという線を狙っているため、ミサワとの足し算で顧客層を拡大する狙いだろう。
 産業再生機構は、UFJとトヨタとの密約ができた段階で、自分の成功実績にとりこもうとしているだけであるが、トヨタに断られても何とかなると思っているふしがある。ただ、一方では「大型案件はUFJ崩ればかり(大京、ダイエー、ミサワ)になるのも公平性から問題」との批判を気にしている。

一方、トヨタ主導に反対しているのはオーナーでまだ大株主の三沢氏である。彼は、トヨタホームの本質がミサワの家作りの本質と異なっていることを見抜き(というか、素人でも見抜けるのだが)、トヨタの傘下に入らないように、現役の社員にアピールし、独自に海外資本による再生ファンドの設立を呼びかけている。

一方、シティグループ他の現有株主は、現経営体制を基本とした企業再生をめざしている。

このように、主な登場人物だけでも意見がわかれる。

現在は、UFJが、1年以内に返済期限がくる「短期貸付金の追加貸付はしない」と、現経営陣に圧力をかけ、トヨタと話をつけ産業再生機構に持ち込もうとしたところ、三沢氏が社外から圧力をかけ、それに気付いたトヨタが横を向きそうな状態に陥っているということだろう。

世の中、うまくいかないものだ、というのが感想だ。

個人的には、トヨタとミサワでは「うまくいかないだろう」と思うし、さらに大京やダイエーだって、まだ何も決まっていないのだから、この問題もダラダラと続いていくのではないかって思う。2年ほど前、ミサワも廉価住宅を作ってみたものの、あまり売れない反面、既存客からのクレームがあってやめてしまったはずだ。それほど、ハウスメーカーってポリシーが重要なので三沢氏の言い分もよくわかるが、過去の経営の失敗という責任を考えれば、復活は大いに問題だ。

やはり、問題がどこに向かうかわからず、心配なので、拙宅2階ベランダ床面の石質タイル数枚にできている小さなひびを見ると、建材があるうちに、全タイルを取替えてしまおうかと悩むのである。