人口ピラミッドと「人口の窓・仮説」

2004-11-23 21:35:18 | MBAの意見
400244aa.jpg最近、インドの人口ピラミッドを見たが、まさに富士山型である。しかし、ここ数年は、裾野が横広がりでなく縦長になっているように見えるが、それにしても極端な人口膨張型である。一体、インド社会が今後50年どうなるのかよくわからないが、世界経済に与える影響は大きいということだけはわかる。

一方、日本の人口ピラミッドを見ると、いわゆる狭義の団塊世代といわれる昭和22年から24年の3年間の出生数は、その少し後の世代の1.3倍の人口を持つ。大多数が経済の第一線である50代を終えるには、あと5年ほど必要である。また広義の団塊世代の範囲は諸説あるが、私は昭和21年から昭和26年生まれまでの6年間と考えるべきかと思う。
実際には昭和21年の夏以降出生数が急増している。その結果21年夏に生まれた人たちが一般的な定年である60才になる2006年夏以降、労働人口が減り始めると言われ、一説には「2006年ショック」とも言われる。またもう一つの「2006年ショック」とは、日本の総人口が減少に転じる年といわれることである。私見だが、1番目のショックの方はマクロ的にはショックになりえないと思う。2006年から2011年にかけて、団塊世代が一掃される頃には、フリーターと呼ばれる人たちが正規労働者としてほとんど吸収されるものと考えられるからだ。一方、2番目のショックの方は深刻だろうと思う。
また団塊世代発生の30年後の昭和40年台後半にも第二次ベビーブームの波がある(いわゆるキムタク世代である。工藤静香世代といってもいいはずだが、そうはいわない。たぶん工藤静香→おニャン子→ファン→大勢ぐちゃぐちゃ→第二団塊。というイメージがいやだからかな。まあキムタクだってSMAPは他の世代のグループより二人ぐらい多いような気もする。SMAPの「世界に一つだけの花」は親の世代の競争社会の反歌として存在するような気もするが、案外、親の世代が同窓会の二次会あたりで歌っていたという証言も聞く)。

そして、現在はその第二次ベビーブーマーから30年経ち、第三の波を作るべき時代であるが、数字上はまったくその兆候はない。もしかしたら、これでもブームが起きていて、5年後にはもっと子供が減少するのかも知れない。少子対策は今すぐ必要だということだ。

さて、ベビーブーマーは個々の人間に対してその出生に関してはなんら責任がないのは当然であるが、客観的に見ると、残念ながら多くの問題を残している。あらゆる段階で競争社会を作り、外部に対する競争よりも、内部に対するマキャベリズムを考えるようになり、多くの企業の成長阻害要因となっている。競争を勝抜き40才台に辿り着いた頃、バブル経済が崩壊し、以後あまり活躍の機会があったとは言えない。また、もともと高齢者の多い日本の経営者群の中で、今後10年近くはこれらのベビーブーマーが多く席を占めるものと考えられ、ジャックウェルチ、カルロスゴーンといった40歳台の役員の出現や活躍を妨げるものと考えられる。これについては、国連人口基金(UNFPA)の唱える「人口の窓・仮説」が参考になる。

人口の増大による貧困状態から脱出するプロセスとして、出生率の低下による購買力の増加と若年労働力が充実していく「ある数十年の期間」を「人口の窓が開いた状態」と呼び、経済成長が持続される期間としている。また、人口急増時期には教育設備が整わない状態であり、不十分な教育水準にとどまるのに対し、その後の時期は、タイムラグにより密度の高い教育が行われ、優秀な人材が輩出することになる。そうなると、社会や企業は団塊以降の年代に早めに移行しなければならないことになる。ピラミッドを見ると、第一次団塊世代の後の「人口の窓」は10年後には閉まってしまう。

日産のゴーン社長はルノーに戻るに際し、日本での後継者として、60才と50才の二人の候補者に絞っていると聞こえてくるが、たぶん若い方だろう。日産の団塊世代の方々の最後の仕事は、退職金でFUGAを買うことかもしれない。(余談だがTOYOTAのMARK-Xは、まさに退職金カーだと思う)

また、団塊世代は年金制度の問題の主因でもある。本来は、人口が1.3倍もいるのだから年金受給額も7掛けにしてもらい、選挙権も0.7票とかにしてもらいたいものだ。国家としての教育投資も最大規模の人口にあわせて用意しなければならず、人口減少時には負担増となる。

かといって、すべての問題を一気に解決しようとして、米国やシンガポールのように移民を推進するような政策に、国民的合意が得られるとは、残念ながら、まったく考えられないのが実態である。