忍ぶ川 (新潮文庫) 価格:¥ 540(税込) 発売日:1965-04 |
『忍ぶ川』は、名作である。偶然にも今日、宮本輝の『螢川』と共に書庫から持つて來た。先日新聞に、體調を崩してゐたがやうやく小説を書く氣になつてきたと書かれてゐたのを讀んだので、いつさう淋しさが募る。
井伏鱒二の御弟子であつて、短篇を書かせたら當代隨一の作家であつたと思ふ。「とんかつ」は忘れられない作品である。兄を精神的な病で失ひ、姉は確か青函聯絡船から海に飛込んだのだつたと思ふ、さういふ呪ひにも似た精神の脅迫を受けながら、書いた小説だけにどこか哀愁が漂つてゐる。芥川賞の銓衡委員を永らく務めてゐらしたが、「辭書を引かなければ讀めない小説を讀むのは嫌になつた」といふ言葉を殘して辭められた。昭和の文人には、J文學は理解できないだらう。當然のことである。私にも今の芥川賞はつまらなく思へる。
御冥福を祈る。合掌
古典も…
②自宅の本箱を見る。
③本屋に行く。