樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

ブナとトラフズク

2007年09月05日 | 木と鳥・動物
先日の日曜日、妻が知人からいただいた「無料招待券」の最終日だったので、佐川美術館に行ってきました。
佐川急便の創業40周年記念事業として開設された美術館で、滋賀県守山市の琵琶湖畔にあります。うちからは40kmくらい。琵琶湖のカモの調査で何回か近くまで行ったことがあって、その存在は知っていましたが、訪れたのは初めて。こんなに立派な美術館とは思っていませんでした。正直、ナメてました、すんません。

          
      (写真撮影を禁止していなかったので何枚か撮りました)

メインは、日本の田園風景を描き続けている画家・ブライアン・ウィリアムスの作品展。私は写実的な美しい風景画、いわゆる絵葉書的な絵はあまり評価しませんが、最後のコーナーにあった湾曲したキャンバス(合板)に描かれた作品には驚きました。
上の写真は私がよく行く栃の森の近くの村で描かれたブナの樹。上下が湾曲しています。風景画は左右が湾曲していました。人間の視覚に合わせてこういう画材を考案したようです。
佐藤忠良という彫刻家の作品も展示していました。美術展ではついつい樹や鳥のモチーフに目が行きます。下の写真はトラフズクという名前のフクロウ。10年ほど前、北陸に鳥見ツアーに行った際、防鳥網に引っ掛かって死んだ個体を見たことはありますが、生きた実物はまだ見たことないです。

          

この美術館には人間国宝の木工作家・黒田辰秋のコレクションがあります。私の本当の目的は風景画でもなく彫刻でもなく、この人の作品を見ることだったのですが、残念ながら常設展示はありませんでした。しょうがないので、3年前に行われた「生誕100年・黒田辰秋展」のカタログを買ってきました。
「無料招待券で夫婦2人がゆっくり美術鑑賞できればいいや」と思って出かけましたが、カタログ(1,500円)は買うわ、妻が館内のカフェでコーヒー(1杯500円)を飲みたいと言い出すわ、券をくれた知人にお土産を買うわ、帰りに道の駅で買い物をするわで、結局散財してしまいました。
でも、また行きたくなるような美術館だったし、湖畔のドライブも楽しめたし、いい休日でした。今日はいつもの木のウンチク話はありませんが、そのうち黒田辰秋の木工作品について書くつもりです。
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十三

2007年09月03日 | 木と美容
前回から記念日がらみになっていますが、明日9月4日の「櫛の日」にちなんで櫛のお話を。
京都には「十三屋」という屋号の櫛屋さんが2軒あります。「とみや」ではなく「じゅうさんや」と読みます。1軒は四条通り、もう1軒は清水寺の近くにあります。東京にも同じ名前の櫛屋さんがあるそうです。3軒とも全く別の経営ですが、昔から櫛のことを「十三」と読んだので、同じ屋号になったのでしょう。
櫛がなぜ「十三」かと言うと、「くし=九・四」ですが「苦・死」を連想するので、わざわざ九と四を足して「十三」に読み変えるからです。九と四を避けておきながら、9月4日を「櫛の日」にするのは矛盾すると思いますが、いずれにしても「語呂合わせは日本の文化」です。

      
        (四条通りの櫛屋「十三や」。創業は明治8年)

万葉集に次の歌があります。
   君なくば  なぞ身装はむ  櫛笥(くしげ=櫛箱)なる 
     つげの小櫛を  取らむとも思わず
「あなたがいなければお洒落をしてもしょうがないので、櫛箱にあるツゲの櫛を持とうとも思わない」。播磨の乙女という女性が、都に帰る男性に贈った別れの歌です。
この歌にもあるように、櫛と言えばツゲ。しかも、三宅島の南にある御蔵島(みくらじま)で産出するツゲが最高とされています。御蔵島のツゲは将棋の駒の最高級材としても知られています。
材質が緻密で固く歯が折れにくい、静電気が発生しないので髪を傷めない、使うほどに艶が出るなどの理由でツゲが重用されるようです。

      
        (ツゲの葉は小さく、対生。別種のイヌツゲは互生)

しかし、もっと昔の櫛はツゲではなかったようで、縄文前期の遺跡から出土した日本最古の櫛はツバキ製で、漆が塗ってあるそうです。
実は、京都の同じ四条通りには「二十三や」という櫛屋さんもあります。店の説明によると、梳櫛(すきぐし)のことを昔は唐櫛(とうぐし)と呼んだので、10+9+4=23 で「二十三や」。昔の日本人は言葉遊びが大好きだったようです。
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