樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

野にあるものは、野にあるように

2007年09月10日 | 野鳥
先週の日曜日、京都市の女性から「拾ったツバメのヒナをどうすればいいですか?」という電話がありました。6月に巣から落ちたヒナを拾って家で育てていたが、最近はエサを食べない。6畳くらいの部屋で放し飼いにしているが、このままでは心配、というお話でした。
野鳥の会の事務所にはこういう話がしょっちゅう舞い込んでくるのですが、私の家にはこれが2回目。8月に担当した「宇治川ツバメ探鳥会」の案内に名前と電話番号が載ったので、回りまわって私の家に連絡されたのでしょう。
野鳥の会では毎年春に「ヒナを拾わないで」というキャンペーンを展開しています。ヒナが落ちていると、多くの人が「かわいそう」と思い、拾って自分で育てようとするのですが、結局人間には育てられないからです。
電話のケースのように、ヒナの間はミルワームやすり餌を食べても、若鳥になると野性が目覚めて自分で餌を獲ろうとします。その時期に、親鳥がいれば獲り方を教えますが、人間には教えられません。結局、餌が食べられなくなって、死んでしまうのです。

         
    (もうみんな無事に南へ渡ったかな?)(写真は2枚とも友人から借用)

ヒナが落ちていてもそのまま放置して、親鳥に任せる。それが野鳥の会の指導です。あまり長く手で触ると、ヒナに人間の匂いが移って親鳥が子育てを放棄する、とも言われます。
電話の女性にもそういう話をしつつ、宇治川のねぐらの状況を伝えて、その集団の中に放鳥するよう勧め、現地の地図をファックスしました。観察会が8月4日、その後25日に知人を案内した際にもまだ7割くらいの数がいましたが、9月にまだ集団が残っているかどうか不安でした。数日後に電話で確認したら、「ツバメの集団を見ながら放鳥しました」とのこと。

      
     (黄色いクチバシを思い切り開けておねだり。かわいいでしょ?)

そのツバメが無事に南へ渡って、来年日本に帰ってくるかどうかは分かりません。ツバメは1つがいで平均10羽くらいのヒナを育てます。全員無事に成長すればいいのですが、ツバメの総数は増えずにむしろ減っていますから、計算上は10羽のうち8羽は何らかの理由で死んでいるわけです。タカやハヤブサに捕食される個体もいれば、渡りの途中に力尽きて海に落ちる個体もいるでしょう。そんな話を女性にしたら、「そうですね~」とせつない声。
ヒナを拾う気持ちはよく分かりますし、そういう愛鳥精神を普及させるのが野鳥の会の使命ですが、大きな目で見れば自然のしくみに任せる方が鳥のためなんですね。野にあるものは、野にあるように。日本野鳥の会の創設者・中西悟堂の言葉です。

(後日談)
ツバメが無事放鳥されて「よかったな~」と安心した翌日、新聞の地方版に不愉快なニュースが載りました。
滋賀県の大津市で、頭に糞を落とされたことを恨んだ男が、ツバメの巣をつついて落としていたそうです。しかも5年前から毎年約10個ずつ。この男は鳥獣保護法違反で書類送検されました。
落ちたヒナを拾う優しい気持ちの人もいれば、その一方でこんな心無い人もいるんですね。
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