樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

木と飛行機

2007年09月19日 | 木と乗物
那覇空港で中華航空機が炎上した事故がまだ記憶に新しいですが、あの737を製造したボーイング社はもともと材木会社です。社長のウィリアム・ボーイングがシアトルで飛行機を見て魅了され、航空機事業に乗り出したのが始まり。当時の飛行機は木製だったからです。
1916年、初めて完成したのは複葉の水上機でした。その後、第一次大戦の軍需によって大きく成長したものの、戦後は需要が激減して大リストラ。その間は家具やモーターボートの製造で何とか乗り切ったそうです。
第二次大戦当時の飛行機は金属製が主流ですが、イギリスでは木製の爆撃機(モスキート)が生産されました。そのメーカー、デハビランド社もボーイング社と同じく材木会社。木の性質を熟知していたため、完成した飛行機は優秀で、最高速度は630km。日本のゼロ戦が518km、アメリカのB29が576kmですから、はるかに上回ります。

       
       (木製飛行機に使われたバルサ。京大木材研究室で撮影)

機体は、スプルース(マツの仲間)の細い材の上にカバの合板やバルサ(世界一軽い木材)の合板を貼り合わせて作られました。速いだけでなく、製造が簡単で生産効率がいい、飛行中に機体に穴が空いてもそのまま接着剤で補修できるという長所がありました。
逆に、初期の機体はエンジンの過熱で燃えたとか、東南アジアに配備したら高温多湿のために腐ったという欠点もあったようです。カナダやオーストラリアでのライセンス生産も含めて8,000機近く生産されたとか。
日本でも木製の軍用機が製造されました。金属不足という理由よりも、敵のレーダーに捕捉されず奇襲できるから。こちらは実戦に配備される前に終戦を迎えました。

       
     (ラジコンの模型飛行機もバルサの骨組みにフィルムを貼っています)

ところで、世界最大の飛行機も実は木製です。大富豪ハワード・ヒューズが第二次大戦中に米軍用輸送機として製作した飛行艇で、愛称は「スプルース・グース(スプルース製の雁)」。正確に言うと、世界最大の翼を持つ飛行機。
世界最大の旅客機・エアバスA380は、全長73m、翼長79.8m。スプルース・グースは全長67m でエアバスに及びませんが、97.5mの翼長ははるかに凌ぎます。しかし、1機製造されただけで終戦となり、1回飛んだだけ。現在は、エバーグリーン航空博物館に保存展示されています。
木と飛行機の関係、意外でしょう?
コメント (4)
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