ライターの脳みそ

最近のマイブームはダム巡りと橋のユニークな親柱探し。ダムは目的地に過ぎず、ドライヴしたいだけ…。

たまにはラモーでも…

2005-11-15 11:42:30 | CD/DVD
ジャン=フィリップ・ラモー(1683-1764)はフランス・バロックを代表する作曲家のひとり。音楽史においてラモーといえばまずブフォン論争の渦中にいた人物として思い出される。この論争はごく簡単にいえばフランスの古典音楽、とりわけトラジェディ・リリックを支持する国王派と、新たに台頭してきたイタリア音楽、特にオペラ・ブッファを信奉する王妃派との間に闘わされたものである。

論争が勃発したそもそもの発端は1752年にペルゴレーシ(1710-36)の《奥様となった召使い》がパリで上演されたことに起因する。それまでのフランス・オペラはどちらかといえばシリアスな内容か、もしくは悲劇的なものであった。ところが《奥様となった召使い》は喜劇。そりゃーパリの保守派は怒りますわな。「なめとんのか!」と。たぶんラモー先生も鼻の穴を膨らませながら激怒したとか、しないとか…。

そうなるとイタリア・オペラ擁護派は俄然形勢不利となる。「やべーよ、これ…」と思ったのかも。しかしそこへ協力な助っ人が現われた。その人の名はジャン=ジャック・ルソー(1712-78)。そう『エミール』『社会契約論』を著した啓蒙思想家である。侃々諤々の議論が行なわれるなか、翌年にルソーは『フランス音楽に関する書簡』を発表。これによりそれまでビビッていたイタリア・オペラ擁護派は元気百倍となり、さらに論争を続けることになる。

政治的には1754年にパリに来ていたイタリア喜劇一座を退去させることで国王派の勝利に終わった。しかしそれが結果的にはフランスにおける喜劇、つまりオペラ・コミックの発達につながってゆく。うーん、歴史は皮肉なものだ。

いやいや、ブフォン論争なんてここではどうでもよいこと。ラモーの音楽を紹介しなくちゃ。右に挙げたCDはいずれもブフォン論争以前に作曲された作品である。右上のは「クラヴサン曲集」で、ギルバート・ローランドがなかなか爽快な演奏をしている。レーベルは低価格でお馴染みのナクソスだからといってあなどってはいけない。むしろお買い得というべきだろう。

右下のはケネス・ワイスがラモーのオペラとバレエをクラヴサン用に編曲したもの。《ダルダニュス》《カストルとポリュクス》《ピグマリオン》《恋するインド》からそれぞれ数曲ずつセレクトして収録されている。これがまたドラマチックで聴き応え十分。

我が国におけるラモーの位置づけは、いうなればヘンデルのようなものだ。バロック音楽といえばすぐにJ.S.バッハかヴィヴァルディにばかり焦点が当てられがち。しかしラモーやヘンデルの豊かでドラマ性のある音楽はもっと評価され、演奏されるべきだと思う。
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