ライターの脳みそ

最近のマイブームはダム巡りと橋のユニークな親柱探し。ダムは目的地に過ぎず、ドライヴしたいだけ…。

液体窒素の思い出(後編)

2006-04-13 04:17:37 | 回想する脳みそ
ある夏の日のこと。新しいコースを覚えるため社員同乗で4トントラックで出発。そのトラックにはもちろん液体窒素の冷凍装置が完備されていた。といっても、この段階でワシはまだその冷凍装置のことすらロクに知らなかった。

社員に教えられるまま、荷下ろしする最初の場所に到着。「仕事は迅速に」がモットーのワシはすぐさま運転席から飛び降り、風のような速さでトラック後方に向かう。そして勇者のごとく扉を開けて中に突撃しようとした。まさにその瞬間、社員から怒号が!

「バカ! お前、死ぬぞ!」

いきなりバカ呼ばわりですよ。それに「死ぬぞ!」とは何ぞや? もう頭の中で「?」が14個ぐらい点滅し始める。あ、個数についてのツッコミはしないように。要するに何が何だかさっぱりわからなかったというだけのこと。

ま、勇者にも理性というものがある。ここはひとつ社員から理由を聞こうじゃないか。

説明によると、庫内には窒素が充満している。だから扉を開けて庫内の窒素を排出してからでないと、中に入るのは危険なのだ、と。

「ち、窒素が充満している?」

そこで初めてこのトラックの冷凍装置のことを知る。なるほど、ドライアイスのように流れ出てくる煙は窒素なのか。もちろんドライアイスは固形の二酸化炭素なのだけれど。ちなみに素手で液体窒素に触れると低温火傷を起こして大変な目に遭う。ご注意を。

ここで知ってるようで知らない豆知識。なぜこの気体は窒素というのか。これを命名したのはイギリスの化学者・物理学者ダニエル・ラザフォード(1749-1819)だという。1772年、この気体に生物を入れると窒息して死ぬことを発見し、「有毒な空気(noxious air)」と呼んだらしい。元素記号が「N」なのはもちろんこれに由来する。ただし窒素が元素であることを発見したのはパリの化学者アントワーヌ・ラヴォアジェ(1743-94)なのだが。

ま、そんなネタはさておき、あの頃大いに不満だったのは次のような事実。つまり商品は完璧な冷凍システムで管理されていたにもかかわらず、それを輸送するトラックにはエアコンはおろかパワステすら装備されていなかったこと。あれは地獄だったねえ。だって交差点を曲がるたび渾身の力でステアリングを回さなければならんのよ。そうすると交差点ごとに滝のような汗が流れてくる。もうパワープレイ以外の何者でもない。

パワステに慣れてしまった今では信じられない話。昔のトラック乗りがみなマッチョな奴ばかりだったのはそういうわけなのだ。
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