湘南オンラインフレネ日誌

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12/9 よこはまコミュニティビジネス体験セミナー(見学会)に参加して(2)

2010-12-13 08:30:18 | 引きこもり
(つづき)

今回の見学会は、ワーカーズ・コープの活動が中心になった。巡回したのは下記の通り。

●港北区地域子育て支援拠点
どろっぷ
(港北区大倉山)

●オーガニックスペース
かれん
(港北区大豆戸町)

●NPO法人
サイドワークネキスト
(緑区東本郷町)

●NPO法人
ワーカーズ・コレクティブ
くまさん
(緑区竹山)

私は今回、仕事つくりのヒント、障がい者・引きこもり・社会的挫折者のための仕事の仕分けという観点で参加している関係で、焦点が労働そのものに向いている。これは主催者の意図するところではないので、お邪魔だったかなと思いつつ、社会貢献という労働が、就労困難者の仕事のやりがいやプライドを育てる有効な活動となるという思いから見ていくという視点が重なると思うので、お許しを。

まず「どろっぷ」の見学から始まった。

緩やかな時間、穏やかな居場所空間を運営している保育園の空気を吸ったのは何年ぶりだろう。空間を有効に使ったエリアの穏やかな仕切りに乳児と幼児の住み分けが行われており、機能が交差しないように綿密な設計が背後にあるのがわかる。仕切り中間層に母親の茶話会的テーブルスペースが配置されており、そこから全体が見えるようになっている。図書貸し出しや企画運営、情報交換などもここで行われる。玄関側手前にはプレイルームと作業台が設置され、いわゆる職員スペースは玄関受付と2階に厳格に分けられており、利用者の自主運営の空間が守られていた。中庭には泥遊びを行う閉鎖空間があり、中庭の様子は広く採光されたガラスサッシ越しによく見えるのだった。ここには港北区の枠を超え、横浜・川崎から子どもが来ていたが、利用者増大によって、今は港北区在住の方の利用制限をしているという。大蔵山は世代循環がうまく行っている地域で、若い家族人口も多いという。

ここは、正直言って私の範疇外の場所。保母や養護資格のある職員に守られた母親のスペース。雇用と社会参加という面からすれば、通園の部分と企画参加の場面以外に見えてこない。通園はマイクロバス運転手・送迎員、企画参加は外出ならポーターや誘導員、屋内企画なら父親パートのような大道具屋などとなり、日常的な接点は見えてこない。

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次が「かれん」。途中「アートかれん」、「モアかれん」を回る。障がい者のアートを使った販売スペースが「アートかれん」、自然食材販売店が「モアかれん」、最後の自然食レストランが「オーガニックスペースかれん」だ。障がい者のいわゆる福祉的就労の場、店舗販売活動の場である。

いわゆる箱物である。その店自身が特定障がい者の日中活動の場、居場所として位置づけられており、店舗活動の社会参加や収益は副次的なものになってしまう。実際、市場変動や同業者の売り上げ競争のようなリスクを負わない分、店舗展開の社会性は乏しく、収益事業で食べていくような展開は希である。「モアかれん」を見て、食材が日本各地のものが揃えられている割に、店舗の戦略商品のような配置が目立たなかった。共作連や日本財団CANPAN PJのような関連仕入先を通せば近い多品種仕入れは可能。類似店舗があるのだ。しっかり隅々まで店と商品が磨かれているのに、一般の類似店舗のような癖や偏りを感じなかった。力の入った福祉的就労の場であるが、商売の場ということでは疑問符がつく。販売活動が地元住民との接点となり、社会参加となると他の店舗展開でも意義が説明されるが、個性が見えないのはどうしてなのだろうか。

「アートかれん」は、作れるものを作り、ギャラリーに並べている。その商品は精密な木工を行ったものもあるが、買う人のニーズに応じているとは思えなかった。他店と違う個性を持たせている素晴らしい同業展開を身近に知っている関係で、売り上げ向上を目指す試みを感じられなかった。むしろ、自由に作品作りを行っている「利用者(障がい当事者)」さんのゆとりある作業の様子が印象に残っている。

「オーガニックスペースかれん」は14席規模のレストランスペースを展開している。見学会参加者は、こちらの弁当をご馳走になったが、有機食材の膨らみを十分に堪能できたから、地元の方が昼食を取りにレストランにやってくるのは納得できた。

弁当のポテトサラダは適度にハーブが効いて驚かされたが、鶏の肉団子もすり身の大きさや、加熱時間等に工夫があり、口当たりが一般の弁当屋の肉団子とは比べ物にならないほどおいしかった。米の弾力のよさなど単に有機食材を集めたというだけではなく、食感の差を際立たせるように調理師さんの工夫が感じられ、おいしさを引き出している。レストランにお客さんが付くのもわかる気がする。

つまり「かれん」さんの活動は、福祉的活動の範疇で捉えるならば磨かれた活動であるが、これは企画者の視点の問題かもしれないが、社会的企業というところからすれば、やはり違う。お客さんへの真摯な対応が収益を引き出すという点では地域貢献を語れるが、主人公は誰なのかということ。ここで障がい者の社会との絆を保つ受け皿という目的が浮かんでしまう。時代を超えていくための手法としての企業経営のプラスαの効果を認めるという活動ではないと思うのだ。

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私たちは、ここで用意された貸し切りバスに乗って、緑区の東本郷町に移動した。食事を終えた程よい満足感も手伝って、隣の中小企業診断士の方には失礼したが、うとうとと居眠りをしていた。だから距離感が全然わからないまま、私は次の「サイドワークスネキスト」という介護タクシー会社に到着していた。鴨居と小机の中間あたりと聞いた。鴨居<>緑車庫の路線バス東本郷町バス停周辺である。ここが実は私が見学に参加した狙いの活動だった。

「サイドワークスネキスト」の活動は数年前に聞いていたが、タクシー会社の運転手さんが発起人となって、タクシー経営を資本に介護タクシーを運営するという活動が進んでいると聞いていた。

現時点でタクシー台数28台、そのうち介護仕様のタクシーが8台という規模に成長している。既に介護タクシーの内部がよく見えるように、ストレッチャーの入る後部扉を開いて待っていてくださったので、見学は短時間で済んだが、車の中には100Vインバータや(普段はずしているが)酸素ボンベが設置されており、仕様は本格的なものだった。タクシー免許の2級免許だけでなくヘルパー2級を習得した方がこの車を担当していた。活動エリアは横浜・川崎。営業許可は三浦半島・横須賀も取っているとのことで、今後その方向に拡張していくのだろうと思われた。全従業員数50名、乗務は一日おきの2交代制で、フルは21時間労働というからきつい。定年退職後再就職した方の中には午前中だけの方もおり、就労形態は様々だという。

ここで面白いのは、割り切り方。収益は一般のタクシー業務に求め、介護タクシーは、制約の多い助成金受け入れをやめてしまったということ。8台の介護タクシーは完全自前で走っている。

活動の履歴を感じさせる話の中で、車客席の出入り口側の座席の一部がドア側に90度回転して出入りしやすくなる回転椅子が設置されている車両を見学したが、実はこの椅子、車の購入時、初めから設置の仕様として組み込んでおかないと、改造の形で後から設置すると、うまく機能しないのだという。つまり経験がそこにあるわけで、ストレッチャーの入る車両も後部座席を折りたたむ形になっていて、その使用頻度と経済性を意識していた。そういう蓄積の上に活動が拡がっていた。

私が見たかったのは、引きこもり青年や、精神障碍の方の調子の波があるための短時間労働ということと、社会貢献性の強さということ、自分が必要とされているという体験が伴う仕事が自己肯定感を養成するだろうという予測、そして移植性、そこで得た体験を持ち帰ることが出来るかという点が関心の中心であった。

私の想定していた仕事は、運転手ではなく「助手」。生業としては無理があっても、運転手さんひとりでは道路交通法上問題があったり、移動に困難があったりしたときの補助の仕事に当たること。予約制のニーズの中に、助手が必要な場合が出てくる。そのときに出動し、平常時は事務や、この会社が運営している整備工場の洗車などの補間業務に当たるということが可能かという観点を持っていた。

実際営業所に行ってみると、やはりいくつもの問題が出てきた。ひとつは立地の問題。オーダーが入って駆けつけるには、やはり不便。例えば駅前に助手要員が到着しそれを車で拾って、お客さんのところに行くということも考えてみた。しかし、私は引きこもり青年と時間待ち合わせをしたとき、頻繁に時間にルーズな方に出会っている。生活が弛緩しているためだが、これでは待ち合わせも出来ないだろう。生活を規則正しく整備してから就労という立て方自身が実践的ではなく、これもだめ。仕事体験のなかで生活を切り替えるというのが実際のところとなる。初めは生活に踏み込むジョブコーチ的な寄り添う活動がいる。となると、給与の採算からすると、補間業務をつけることになるだろう。その補間業務があるか、助手が必要となるケース、つまりニーズがあるかということも知りたいところだった。

体調の不安定さというところからも、会社の個人採用という形ではなく、チーム就労契約をする自主派遣型の組織を別に準備する必要も出てくる。この派遣会社を社会的企業で作ることになると、介護タクシー会社助手という形だけでなく、福祉・医療部門にアクセントをおいた組織の図面が必要となる。どこまで介護タクシー会社の展開力の協力を得るかという点が、連携構想の実現の鍵となってくる。家族会や支援者団体そのままでは就労支援は無理がある。そこに特化したネットワーキング(ワーカーズ・コレクティブ)が必要なのだ。

見学した「サイドワークスネキスト」の活動は、申込側の体制があれば連携申込の話が可能なキャパを感じたが、安定して人材を提供することが鍵だろうと思う。ここが成り立てば、雇用創出として「助手」の仕事が生み出せると思った。この仕事は高齢者介護等の送迎の仕事の広がりを持つもので、介護事業所との間でも同様の連携を考えうる。「サイドワークスネキスト」見学は、その送迎に特化した職場として、是非見ておきたかったのだ。

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最後にまわったところが、「ワーカーズ・コレクティブ くまさん」だった。お邪魔したのは、利用者10名規模のデイの高齢者ホームだった。見学者の中には幼児のお子さん連れの方がおり、その娘さんがいつの間にか、利用者さんのテーブルを囲んで、お手玉の山に棒をたてただけのゲームに夢中になっていた。順にお手玉をとっていくのだが、棒を倒したら負け。単純だが夢中になるゲームだった。

このゲーム、大きなテーブルの真ん中にお手玉の山があり、お手玉を取るには「立ち上がり」「手を伸ばし」「座る」という動作を反復する生活動作の維持回復訓練を同時にやっているのだという。しかしそれ以上に、初対面の利用者さんたち高齢の方の輪が、幼い娘さんを受け入れている様子がほほえましかった。そういう温かみがある場なのだった。

入浴の場面も、私が父の介護の関係で回った特養ホームの設備より簡素なのだった。これも安全を考慮した上で、自分のことは極力自分で行うという生活自助訓練が行われていたのだ。厨房は前述のテーブルと同室の一部分に作られており、料理の香りや湯気もテーブルに流れていった。アットホームな場を形作っていたのだ。

「くまさん」は、高齢者の介護事業として訪問介護、居宅介護や外出介護等を行っており、もうひとつの柱は障がい者ホームヘルプがある。今回は高齢者の方を見学させてもらったのだが、こちらは見学終了時間が迫っており、詳細な見学とはならなかった。どこかに、仕事の切り出しが出来ないかなと思いつつ、空気を読むということが大切な仕事ゆえに、就労の場としては難しい印象を受けてしまった。

この場所は、ワーコレの牛乳加工配達の拠点の施設(竹山)もあり、こうした製造部門も見学したかった。これは追々機会があったならというところだ。小机解散したときには、日が落ちていた。見学者を中心にコミュニティビジネスのメーリングリストが生まれることになっている。

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「見学を終えて」

横須賀の「アンガージュマン横須賀」では、上町商店街の行事企画や雑務サポートを引きこもり青年たちが担っている。事業所就労の形ではそういう補間業務の仕事を作ることは困難が伴う。拠点を構えそこから同心円状に活動を拡大していくというセオリーに乗った活動は、原資がいる。無店舗型のような活動をデザインできないか、それが成り立てば、圧倒的な地域潜在数の引きこもり・精神・社会的挫折・職場復帰待機者等の現状に切り込むことができる。領域と関係者横断的な地域就労支援ネットの政策的実現への道も切り開かれると思うのだ。自分のできる範囲を抱え込む形の活動は限界に来ている。そこに社会的企業の就労支援活動が次の扉を開くことになると考えるのだ。

来年2月からは障がい者採用をしている企業見学が立て続いている。こちらは企業就労の関係だが、引きこもり青年との協業、チーム就労の形などとは違う、いわば身体・知的の就労の本道のような見学となる。働くことのメンタルな充足感連携感が生み出すものの大きさを私は就労支援の根幹に据えたいと思っている。あの日本理化学工業の大山会長の言葉ではないが、自己有要感(有用より強い)の大切さを育てたい。挫折を含んだ若者の復活はそこに鍵があると思うのだ。
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1 コメント

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見学会ではお世話になりました (「自閉症の中小企業診断士」yamada)
2010-12-25 10:22:34
先日頂いた名刺にはURL記載が見当たらなかったのですが、Tさん、立派なブログを立ち上げていたのですね。
また、お会いしましょう。
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