2016/12/18 記
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午前中、法事を済ませて、13時20分、吉祥寺の東京女子大の心理杉並区主催の「杉並区発達障害児地域支援講座/発達障害と防災(2)ハワイでの障害児と災害準備プロジェクト」に途中から飛び込んだ。講師の北海陽子氏のワークショップだ。私は、この企画をバックアップしている同大心理臨床センターの前川あさ美教授とコンタクトを取るためだった。
懇話会ゲスト依頼を確定するために、企画終了後、お時間をいただいて、懇話会の場の雰囲気を伝え、臨場的な経験紹介による意見交換が生まれる素地を作ってきた。
お節介なのだが、一般的な発災時避難の話としては、日本とハワイの国際比較が面白く、私は冷蔵庫にメモ保存というのは、「地域火災発生時、燃え残るため」という、昔の火災中心の防災のなごり。大災害には、厨房の多い一階は建物が上下がつぶれたり、津波が突き抜けたりという時代にそぐわないものと思っていたが、ハワイ大学ではA4寸の「個人安全シート」をマグネット付透明ケースに入れて、冷蔵庫に貼り付け掲示するという方式が使われていた。つまり冷蔵庫案は、国際的なものであったということだ。
しかし、これはあまりいい方法とは思えない。以前、YouTubeでも出していたが、冷蔵庫は激震時、蓋を下にして倒れる機種があることと、「個人安全シート」は家族が持ち出す内容のものであり、避難初動に持ち出す以外、被災後の持ち出しは危険が伴う。冷蔵庫内の空ビンに、ドアが開かない危険があるが、封入保存という日本の消防庁提案のものは個人の医療情報を含んでいる。しかしそれは家族全体分を書き込む必要がある。「個人安全シート」が利用される内容は、避難時持ち出し控えのようなもので、緊急性は低い。必要な情報は個々人の救急医療用心身情報であり、その部分の準備の発想はなかった。むしろその生活再建情報はむしろ冷蔵庫の方がいい。後日冷蔵庫を探せばいい。考えるべきは被災時個人医療情報でありそれは、「小型化して各人が常時携帯する」ということが要ではないか。(cf.『お薬手帳QRコード版』)ここで注目しておきたいのは、データを誰が使うのかという発想の根本が違うことだ。ハワイ大のシートは、自分らが適切な避難をするためのメモ、発災現場で必要なのは個人医療情報で、利用者は救急医療関係者で、他者だちうことだ。
また発災避難時、ここに、まず一般論ではない「発達障がい児者」の困難が隠れている。それが被災者一般の避難でワークショップが終っていれば、障がい児者を抱える家族には、あまり役に立たない。それを参加者を小グループ化して、障がい者避難の場を設定し、シュミレーションしてみるというところで、面白くなってきた。しかし、その総括場面で発達障がいの困難事例をあげるのだが、安全避難後の課題が混入しており、急性期の事例学習は、時系列にそって整理しないと的が混濁すると思うのだ。身体障がいではなく、発達障がいを取り上げた点で、面白かったのだが、提言が出てこなかったことが、心残りだった。印象メモを系統樹に貼り付ける方式も、行われたが問題はその意見群の評価にこそ宝があるのに、回収しておしまいとか、一部読み上げて終わりというのは、あちこちの会で見受けるが、勿体無いことだと思う。会の時間配分の難。
ハワイの異常気象と水害の紹介ののち、視覚障がい体験シュミレーションが行われた。激甚災害時、視覚障がい者の外出誘導は道の状態が悪く、静穏時の誘導法は避難所室内のような場面で役に立つ程度であって、移動の必要がある時は、晴眼者誘導による車椅子移動をしてもらうのが実践的だ。
ここでは、私とペアを組んだ女性が学生さんだったので、アイマスクは先につけてもらった。おっさんの肌に触れたマスクをつけるのは、嫌だろうなと思ったからだ。案の定立ったが…若干悲しい。身長差があるが、肩に手をあてる方法をやってもらったが,これも手と手を触れるのは、いやなのだろうなとの深読みからだった。予測が当ってしまうと、それはそれでまた悲しいのだが。片目と網膜異常がある私(網膜色素変性症)にとっては、アイ・マスクは取っても大差ないので、
企画が詰めすぎだったのだ。
最後が、13才の守くんと、10才の弟、若夫婦の4人が津波避難で、家庭から避難所まで移動出発するという設定。勿論私が守くん役。エコラリアや、常同行動、突発行動、視覚優先、接触忌避などの行動で、学生さんを散々困らせたが、皆さん、当事者さんとのお付き合い体験がなかったようだった。
私が思うのは、発達障がいの方の居場所作り、避難所外避難者を孤立させない取り組み、食品・水・寝具の避難所外受け渡しというところが当座の要点であり、場の激変からくる自傷などの恐怖の沈静化法などが必要だ。
しかし、それを超えて意義深かったのは、外見から判断し易い身体障がいに偏った障がい者避難の取り上げのなかで、発達障がいを取り上げた企画の価値だ。が、ハワイの発達障がい者避難PJを聞きたかった。
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前川先生、懇話会ゲスト受諾、ありがとうございます。感謝。
●「前川 あさ美」氏 プロフィール
●「東日本大震災における発達障害(児)者のニーズと有効な支援のあり方に関する研究―岩手・宮城の発達障害の子どもたちと家族、支援者への調査から―」
★個人安全シートの項目★(Center on Disability Studies,Univesity of Hawaii)
名前・緊急キットの置き場所・防災情報(ラジオ局番・テレビ)・必需品・個人連絡先・友人連絡先 *薬の詳細は緊急キットに入っています。
p.s.母は飽きて、ひとりで早々に帰宅。風呂に入っていた。無念。
夜間傾聴:開店休業
(校正2回目済み)