--- 以下は次の「自習のヒント集(独学教材ヒント集)」の解説です。
●自習のヒント集(独学教材ヒント集)《粘土で起業・フリマの価値》
ものを製作するとき、基本技術は本来「分割訓練」するのが効果的といわれてきた。しかし、技能伝承は親から子へ親方から弟子へと、本物作りの仕事の役割分担の重要度の高い作業への移行として常に明示的なプランの一部に関わる形で行われてきた。こうした徒弟制は生産効率の高度化(機械化)の中で、近代の工場生産の分業の産物として、姿を変え、分業を担う「分割訓練」の機能主義訓練が生まれたのだが、全体像の不透明な輪切りの発想が教育現場を空中の楼閣づくりにした元凶となった。
しかしこれが個人の創作活動の話となると様相が変わってくる。構想から仕上げまでを個人がすべて担うからだ。現代では趣味の世界にその工程が残っている。
個人の制作の場面では「ある特定の製品を作る」という要請がむしろ、イメージを固定してしまうことがある。特定の製品を生産する工程の工夫という工学的な方向もあるが、抱いたイメージを素材に吹き込むという芸術的な方向では、このイメージを素材と語り合いながら培養していく予備作業として、単純な作業練成の工程をたっぷり入れた方がいい。
陶芸では菊練りや寝かせなどの準備工程がイメージの温度を高めていく場なのであって、この工程では「手が覚える」作業の中で「心はニュートラルになっていく。」イメージはその指先に降りてくる。
こういう過程を踏まえ、球>方形>棒>板>型抜き>整形という基礎工程を提案した。椀・鉢・壷などの立体を作る工程は多少の熟練がいるし、準備が大なので省略し、粗の出にくい平板造形・小物に話を限定した。
これらは、数(個数)をまとめたり、色や大きさを変えてシリーズ化したりすることで、未熟さもまた味わいに変質させることが出来る。これに甘えると技能が伸びないが、とりあえず素人作りの商品のレベルまで持って行きやすくなる。
そしてこれを他者の目に晒す。それが「フリーマーケット」(フリマ)だ。販売しながら自作製品の価値を確認することが出来るし、売れれば励みにもなる。そして同好の士との出会いの場にもなる。
僕が実践してきた授業では、葉っぱ作りとか、コイン作りという具体的な形象のバリエーションを行ってきた。これはLDやADHDのハンデを持った子たちの授業で、想像への手がかりが必要な子が多かったからだ。
研究授業の場などでも、皿・椀・鉢・壷系の授業と、魚・具象アクセサリー系の授業が多かったように思う。紙粘土で家やテレビなどを作って彩色する授業だ。いずれも小学生の授業。やや年齢が高い子でも部活作品などを文化祭などでみていると、やはり具象が基本の飾りと、皿・壷が多い。
しかし僕は、実用性と美の接点にある工業デザインの世界と、その機能性を破壊されたものへの好みがあるので、具象を基にした民俗工芸的な系統とは異なる線を引き入れている。数学や物理の世界への親和性の高い見方と言ったらいいだろうか。ビー玉の上に粘土円板を置いて鞍を作れば、それは数学の世界へと形象は飛んでいく。そういう形象は具象の変形の中から生まれるというより、心象より飛び出してくるものだ。だから具象造形をはずしてみた。
塗りが早いと乾くと縮むものもあるので、失敗も出る。失敗の受け止め方に言及できなかったが、素朴にくり返せばなんとかなる。最後に焼く陶芸の書だがアイデアが参考になる書籍を紹介しておく。
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●「どこでもアトリエ、何でも道具 陶磁郎BOOKS」
白石 斉・白石 孝子 共著 ¥1,785-
双葉社・刊 ISBN: 4575288829 (98/09)
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