リア王(1953年 映画)

2022-02-16 00:00:53 | 映画・演劇・Video
村上春樹原作の映画(ドライブ・マイ・カー)を観た後にシェークスピア映画を観るというのも、ある意味悪趣味かもしれないが、今年はシェークスピア映画大全集(DVD)を見ることにしている。「じゃじゃ馬ならし」の次が「リア王」。この大全集だが、悲劇が5、喜劇が3、史劇が2である。悲劇5のうち一つが「オー!ロメオ」であり残りが四大悲劇。悲劇論を語りたいのだが、先が長いのでそのうち。

リア王にはいくつかの映画がある。1953年版は米国のテレビ向けで主演がオーソン・ウェルズ。大全集にはこれが収録されている。老醜をさらす英国王のリア王の暴君ぶりや荒野をさまよう狂気の表現がいかにもはまり役だ。2018年にはアンソニー・ホプキンスが演じているが迫力はたりない。1971年にはソ連映画があり、惑星ソラレスの主演がリア王を演じているが、現在ソ連映画を見るのはきびしいし、著作権から生じる利益にかけられる法人税がウクライナ攻撃に使われるかもしれないので見ることはないだろう。

日本で言えばリア王を演じられるのは三船敏郎だろうが、リア王派生映画の『乱』に出演している。『海辺のリア』の主演は仲代達矢だが、悲劇性が小さい。何しろ長女夫妻に老人ホームに入れられて、狂気の末に脱走して近くの海岸を歩く程度だ。三国連太郎も適任だろうが何となく「釣りバカ」の鈴木社長のイメージが重なってしまう。

本物のリア王は老体により隠居することにして、3姉妹に自分の面倒をみてもらうために国土を分割して与えようとするが、三女のコーデリアは仲間外れにされ、城から追い払われる。ところが、長女次女は結託して父親(リア)を邪魔者扱いする。その後、あれこれあってリアは荒野をさまよい、結果としてコーデリアと再会したものの、彼女は殺され、まもなくリアも他界する。現代日本ではよくある悲劇で、例えば大塚家具とか。長女が追い出されて米国へ行ってしまったある一家も類例かもしれない。結末がリア王風だと大変だが。