八十日間世界一周(1956年 映画)

2022-01-31 00:00:02 | 映画・演劇・Video
フランスのSF作家、ジュール・ヴェルヌの同名小説を映画化。原作は1873年。ヴェルヌの小説は、荒唐無稽とされ、同時代の知識人からは冷ややかに思われていたらしいが、彼の考えた未来は、おおむね間違っていなかった。実際は、彼の死後、巨大な戦争が二回あり、冷戦があり、ヴェルヌの予言通り人類は月に達したのだが、どうも現代が素晴らしい世界とも言えない状態だ。

実は、原作の別の評価だが、このSFを読んで、世界旅行に行こうという人たちが出現したと言われる。ツーリズムの開始だ。さらに、重要な旅行先として日本(横浜、鎌倉)が描かれたため、日本に行きたいという欧米人が多くいたそうで、日本に海外の新聞記者が数多くいたのは、日本の観光先を紹介するという重要な任務があったからだそうだ。

そして、欧州各地と同じような時期に日本の観光地にホテルが立ったりしたそうだ。

この映画は、本筋では英国の上流階級のお遊びとして世界一周チャレンジという貴族趣味とその他の国の文明の野蛮さ(特に米国)を比べながら旅が続くのだが、日本は比較的、平和な国と設定されている。無一文になり主人と離れ離れになった召使が、横浜についてからすぐに鎌倉に移動できるというのも不思議だが、日本人蔑視感はあまり感じない。横浜沖から見える富士山が日本の象徴になっていて、1956年の映画版でも十分に「日本に行きたい感」が増加するだろう。逆に、インド・香港・米国は旅行先としては最低国に感じるだろう。