遮光(中村文則著)

2021-12-20 00:00:07 | 書評
作家の初期の代表作。気分が明る過ぎる時に、人生には落とし穴が待ち受けていることを教訓的に認識しておくためには良い小説かもしれない。気分が暗い時に読むと、さらにひどい気持ちになるだろう。



恋人の女性が不意にトラックに轢かれて、亡くなる。ばらばらになったご遺体から、主人公の男は、小指を一本持ち出してホルマリンに漬けてしまう。さらに、時々、主人公にとって重要なことがありそうな時には、瓶を鞄に入れて持ち歩いている。

知人には、彼女は海外に留学したかのように装っているが、もともと深層心理に暴力的な部分があり、時々、大暴れしていた主人公は、ついに人間二名を動かなくなるまで殴り続けてしまう。

人間の荒々しい内面を書くのが、作家の流儀で、本来は映画化は困難をきわめる(作るのも難しいし、誰も見に来ない可能性もある)と思えるが、最近になって、映画化が進んできている。

そういえばフランス映画には、そういう暴力性のあるシーンが多いような気がする。