斬る(1962年 映画)

2021-12-09 00:00:31 | 映画・演劇・Video
柴田錬三郎原作を脚本新藤兼人、監督三隈研次により映画化。

最近、4K画質にリマスター化されたものがNHKBSで放送されたので、録画していた。といってもビデオもテレビも4Kでも8Kでもないので、少し画像がきれいかなというレベルの話。

主演が市川雷蔵と大映の看板スターで、ある意味、彼のための映画ともいえる。幕末の混乱期にある藩の政争に巻き込まれ命を失った母の子として、数奇な運命をたどる武士の一生がテーマだ。

母を含め三人の女性の不合理な突然の死が彼(市川雷蔵)を邪剣の道に連れてゆく。多くの敵が彼を取り巻き、つど切り捨ててゆく。幕末には江戸幕府要職である大目付の用心棒として藩政が崩壊し荒れ狂う水戸藩に向かうが、だまし討ちにより大目付が暗殺されてしまう。

映画の本筋から離れるが、この映画では、江戸幕府が正義で、尊王攘夷を唱える水戸藩は大悪党とされている。まだ日本が右傾化する前の時代の映画であるわけだ。


一つ、不思議なのはこの映画が上映されたのが1962年。大映の配給だった。ところが、わずか6年後の1968年には同名の「斬る」が東宝から公開されている。原作は山本周五郎、監督は岡本喜八、主演は仲代達也と並べているが、時代劇であるという点を除けば全く違う映画だ。仁義なきは東映のはずだが、東宝も同穴ということだったのだろうか。そもそも山本周五郎の原作は「砦山の十七日」というのだから、同じタイトルにするのは真っ当とは思えない。

1968年といえば絶頂期の市川雷蔵が癌により突然の入院。翌年には37歳で他界してしまい、苦境の大映はとどめを刺され、1971年にはついに倒産してしまう。