てんげんつう(畠中恵著)

2021-12-05 00:00:02 | 書評
「しゃばけシリーズ」の現状20巻の18巻目。江戸の薬種問屋の跡継ぎである一太郎は祖母(おぎん)が妖(あやかし)の中でも大妖で年齢は今のところ三千歳。しかし人間と交わって生まれた娘の子となると、妖力足りず、病弱ときている。それを補うために祖母は孫の周りに強力なボディガードを配置するが、類は友を呼ぶというように様々な人間以外のものたちが大店を取り巻き、江戸市中で起こる怪事件と対峙するわけだ。



今回の主テーマは『てんげんつう』。千里眼の眼球の話だ。ある時、妖から千里眼をもらった人間がいる。左眼を千里眼と交換した。ところが未来の予測や他人の考えていることがわかってしまうという千里眼の2大メリットのため、友達が一人もいなくなってしまった。

自分の考えをすべて見抜かれるような相手を友達にする人間は嫌われるに決まっている。そのために元の人間に戻りたいと思う気持ちと、未来が分ることのありがたさと、どちらを取るか決めかねてしまうわけだ。

文庫本の表紙は、左眼が青い人間が描かれているのだが、単行本の方は、目玉がゴロリの絵になっていて、グロい。

その他、全5作の短編の中には、祖母のおぎんがあっちの世界で不機嫌になって大暴れし、岩窟に百年間の禁固という処分を受けてしまう話になっている。山をひとつつぶしたり川をせき止めてしまったりしてしまったそうで、仮釈放されるには、こわしたものを元に戻さなければならないそうで、そうなると急に自然界を変えなければならない。(結局、刑期は短縮になる)

ところで、千里眼の二大特典のうち、「未来が見える」というのは実益が高いが、「相手の心理が読める」というのはどうなのだろう。現に、簡易ウソ発見器は存在するようだが、アプリが普及しているようには思えない。そこには触れないというのが、人類の英知なのだろう。