今昔百鬼拾遺 鬼(京極夏彦著)

2021-12-01 00:00:40 | 書評
今度は京極夏彦を読もうかと、とりあえず今昔百鬼拾遺シリーズの「鬼」を読む。後で知ったのだが、本著はシリーズの中から飛び出したいわゆるスピンオフ作だった。

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有名シリーズのスピンオフ作を読んだことがあったが、シリーズの中の有名登場人物が次々に特別出演するとともに、シリーズの流れに影響するような奇抜な展開にはなりえないわけで、やはり、本著もそういう展開だったのだろうと思う。何かに遠慮して筆を伸ばしていないような感じ。

題材は。いわゆる「血に飢えた妖刀物」。刀の出所や素性は無名だが新選組副長から戊辰戦争に参加し、最後は函館で、「精神的には『最後の武士』として戦死した土方歳三」の日本刀が密かに首都に戻ってきて、血に飢えたようにその所有者が殺人を犯していき、昭和29年に世田谷の駒沢球場近くで起こった「連続辻斬り事件」をひき起こすというようなストーリーなので、テーマとしては申し分ないが。

こういうのを現実の描写の中に埋め込むのは、かなり難しいはず。そううまくいっているようにも思えなかった。

ところで「妖刀」といえば、徳川一門に祟ったという妖刀「村正」。今は思わないが、そのうち欲しくなるかもしれない。正式な手続きを踏めば、巨額を投資すれば手に入るのだろうが、手にしたときに何を考えるのだろうか。そういえば、最近、散歩に行くときに他家の表札を眺めるクセがついてしまったのだが、「德川」という苗字を無意識で探しているのかもしれない。
(注:「徳」ではなく、間に「一」の入った「德」である。德川宗家だけが「德」と言う文字を使うことを許されていた。一徳という芸名を自ら付けた俳優(元歌手)もいたが)