『二の岡ハム』はアメリカ村の名残の味

2021-12-02 00:00:26 | あじ
東名高速御殿場インターから箱根方面に南下してすぐのところに、『二の岡フーズ』の黄色の看板が立つ。工場の直売所があるわけだ。知る人ぞ知るアメリカン・ハムの販売所だ。



元々、戦争よりもっと前、大正時代のことだが御殿場は富士山があり夏場も30度を超えることがなかったため、軽井沢・箱根と並ぶ避暑地だった。訪れる外国人観光客も多かったそうだが、ある時、箱根路で道に迷った米国人が二岡神社で助けられたことがあり、その縁で多くの米国人が二の岡地区に別荘を建てるようになり、アメリカ村と呼ばれるようになったようだ。

そこで、食物もアメリカ人用に生産しようということになり、地域で共同で豚を飼うことになったそうだ。養豚組合ということだろう。そして米国人のいるところには必ずいる宣教師にボールデンさんという方がいたそうで、この方がハム・ソーセージなどの食品加工を地域に伝授したそうだ。

そして昭和初頭からハムの生産が始まったのだが、時は悪く日本は戦争にまっしぐらに進んでいった(当時の色々な情報をみていると、海外から見た日本の状況は何らかの通信方法で在日外国人に正確に伝わっていたようだ。終戦の日についても一部の外国人は8月14日中に知っていたようだ)

その結果、ボールデン宣教師は夫妻で日本を離れることになった。昭和11年のことだ。その時に、ハムの味や製法を守ろうと伝授してもらったのが、地元の芹沢家の人たちだったそうだ。(直売所の向かいの民家には芹沢という表札があった)

その後、20世紀初めのハムの味はずっと続いていて、東京方面からも御殿場のアウトレットの帰りに、「ちょっと1本」という感じで好評発売中となっているわけだ。



売店には先客の夫妻がいて、贈答品に使うハムやソーセージの詰め合わせを3000円で作ろうと、交渉中だった。ハムもソーセージもグラムいくらなので、一本ずつ違う額なのだが、いくら組み合わせても3000円には収まらないわけだ。ハムの最低価格が2500円程度だからだ。追加がソーセージ2本だけとはいかないだろう。要するに先客の夫婦は値引きをしてもらいたいわけだが、店の方は、値引きしなくても売り切れる量しか並べないので交渉が始まる気配はない。ついにあきらめて、3000円ぐらいのスモークハムを一本だけ購入したわけだ。

その結果、売れなかった2500円のハムを購入することができたわけだ。



なるべく薄く切って食べることと、注意を受けたが、そういう技術はないわけで、できるだけ薄く切ったつもりが、できるだけ厚く切ったようになってしまった。

味はスモークなので濃厚。まったくウイスキー用だ。欧州のハムとは別の物。厚く切った方がうまいように感じるが、早くもなくなってしまったわけだ。