席に戻って4五桂を指した小説

2017-02-11 00:00:00 | しょうぎ
今更、むしかえすつもりはまったくないのだが、冤罪が決定的に確定した三浦九段が疑われた原因の一つが、順位戦で指した▲4五桂に始まる一連の手順だったのだが、奇妙なことに62年前に初出(小説新潮)のある小説に、類似した場面が登場する。小説なので、今回の件とは現実的には関係ないことを重ねて表しておきたい。

短編小説の題名は「4五桂の幻想」。作者は将棋観戦記まで書いたことのある坂口安吾。実は彼の伝記を読んでいたら作品名リストにこれがあった。将棋本としてもこの題名では売れないのではないかと思う。

現在、青空文庫で無料で読める。ただし、坂口安吾は1955年に亡くなっていて、日本の現在の法律では著作権は没後50年までとされているが、TPPが有効になると米国の意向で75年になり、再び無料では読めなくなるところだったが、誰かのおかげで青空文庫の危機は回避されたように見える。読めなくなった場合は筑摩の坂口安吾全集の15巻にある。

青空文庫:4五桂の幻想

超あらすじ

新進気鋭の木戸六段とベテランの津雲八段の対局は新聞社の肝いりで地方都市の旅館で行われる。二日制の終盤で津雲八段が指したあと、奇妙なことに木戸六段は自分の手番で席をはずす。

しかも、指し手がなかなか決まらないため、息抜きのため外出してしまうわけだ。そして山の方に散歩をすると、驚くことに観戦記者も谷川に降りて釣りをしていた。彼も、次の手は長考だろうと外出したわけだ。

木戸六段はさらに山間に足を伸ばすのだが、ある女性に出会い、羽織袴のまま散歩していることを笑われるのだが、観戦記者に対して、彼女の顔に4五桂の幻想を見たと話し、再び対局場に戻り4五桂を指すわけだ。実に外出時間は1時間45分だった。実は、この手はあまりいい手ではなかったのだが、年配棋士にしてみれば、若輩棋士が自分の手番で外出するという非礼により冷静になれずに木戸六段に負けてしまう。

その次の対局では、木戸六段は体調をくずし、別室の布団で休みながら指すことになりいいところなく敗れ、その後、行方不明となる。

新聞記者は、山奥でのできごとに関係があるのではないかと確信し、ふたたび先の谷川へ向かうのだが、そこでわかったのは先の女性は占い師の教祖であり、予想通り木戸六段も彼女と共同生活中で、すっかり洗脳されていたのである。



さて、1月28日出題作の解答

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変化手筋では1一の雪隠詰め、本手筋で1九玉の雪隠詰めとなる。まあ、できることなら9手詰めにしたかった。

動く将棋盤は、こちら


今週の問題。

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並べ詰の変形。

わかったと思われた方は最終手と総手数とご意見をコメント欄に書いていただければ、正誤判定します。